錦鯉優勝『M-1グランプリ2021』採点結果を徹底分析「最低点の底上げ」に注目

2021.12.20

ランジャタイの幻影を吹き飛ばすオズワルドの話芸

今大会の採点、特に前半は審査員の評価がよく割れた。高く評価する人がいる一方で、最低点をつけている人もいる、という状況がつづく。ランジャタイとハライチに至っては、最高点と最低点が同時についている。

特に審査員を悩ませたのはランジャタイだろう。ネタが終わったとき、松本人志は天を仰ぎ、中川家・礼二は舌を出し、塙・富澤・巨人は3人共に左手で額を抑えるポーズで固まった。昨年起きた「漫才論争」をなぞるような奇天烈な漫才は、志らくだけが最高点の96点。「漫才ってふざけるもの」「途中で100点か0点かどっちかわからなくなって」「私はツボにハマってしまった」と高得点をつける。頭の中に入った猫に体を操縦される漫才は、まさに“イリュージョン”だった。

その後もランジャタイは、上沼恵美子のコメント(ゆにばーすに「正気に戻してくれました」)などで、番組内でちょくちょく言及されている。スタジオに強烈なインパクトを残し、頭の片隅に猫のように残ったままのランジャタイ。

その幻影をようやく吹き飛ばし、審査員たちの点数の波がそろったのが、6番目のオズワルドだった。友達がいない畠中にどんどん翻弄されていく伊藤。その話芸は「直すとこないんちゃう(巨人)」「漫才師の憧れ(塙)」と絶賛され、665点でトップに立つ。

『M-1グランプリ2021』ファイナリスト/まつもとりえこ
『M-1グランプリ2021』ファイナリスト。イラスト/まつもとりえこ

「ありがとう!」「ありがとう!」

最終決戦に残ったのは、インディアンス、錦鯉、オズワルドの3組。初出場5組に注目が集まった大会だったが、ファイナリスト経験者たちが勝ち残った。ただ、全組とも最終決戦は初めて。

1本目で塙から「6000組の中で一番うまい」と評されたインディアンスは、さらにボケを増やしてスピードも加速。「最後に変なこと言うな!」「最後だから変なこと言わせろや!」とラストまで漫才を楽しんだ。錦鯉は「街中に逃げた猿を捕まえたい」と大暴れする長谷川が、何度もバナナを見つけたあげく、最後にそっと床に横たえられる。オズワルドは「知らないオジサンに割り込みされた」という畠中の言動が「許す」「許さない」で揺れ動き、伊藤をパニックに陥れた。スピード、おじさん、話芸、それぞれの持ち味がじゅうぶんに活かされた2本目がそろう。

『M-1グランプリ2021』最終審査(作表/井上マサキ)
『M-1グランプリ2021』最終審査(作表/井上マサキ)

最終審査の結果は、オズワルド1票、錦鯉5票、インディアンス1票。優勝は錦鯉!(松本人志が優勝者に票を投じるのは、2010年の笑い飯以来……! )

優勝が決まった瞬間、錦鯉の2人は抱き合い、お互いの肩に顔を埋めた。渡辺が先に顔を上げ、長谷川の頭をポンポンと叩く。史上最年長、50歳のチャンピオンは「諦めないでやってきてよかったと思います」とポロポロ涙をこぼした。そのあと「僕は、ラストイヤーが56歳だったので……」とつづき、相方に頭をペシリと叩かれながら。

昨年「一文無し参上!」というツカミで登場した錦鯉が、賞金1000万円を手にする。番組終了間際、10秒でコメントを求められた錦鯉は、ひとりずつ「ありがとう!」「ありがとう!」とカメラに向けて叫んだ。テレビの向こうにいる、彼らを支えてきた人たちに届いただろうか。いくつになっても夢は叶えられることを、「ライフ・イズ・ビューティフル!」であることを、錦鯉は教えてくれた。

M-1チャンピオンともなれば、これから多忙な日々がつづくはず。番組終了後の『大反省会』では長谷川の体調を心配する声が相次ぎ、昨年チャンピオンの野田クリスタルも「このあとの忙しさ僕知ってるんで、まさのりさん死ぬんじゃないか」と心配するほど。どうか健康に気をつけて、元気に活躍してもらえたらと思います!

この記事の画像(全4枚)




関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

関連記事

THEW

『THE W』Aマッソ、天才ピアニスト、オダウエダ激戦の採点結果を振り返る。お願いです、審査員のコメントも聞かせてください

IPPONグランプリ決勝

『IPPONグランプリ』徹底解説。朝の大喜利支配人・麒麟川島が神を降ろした「ピン子とえなり」TBS朝の顔がTBS看板ドラマで優勝

キングオブコント2021サムネ

『キングオブコント2021』採点結果を徹底分析。松本人志&歴代キング審査員の「美し過ぎる審査」と「サイコゥ!なコメント」を振り返る

7ORDER安井謙太郎の採用体験記

7ORDER安井謙太郎の採用体験記──妥協なきエンタメの現場で「一緒に働きたい人」とは?【求人ボックス特別企画】

天才コント師、最強ツッコミ…芸人たちが“究極の問い”に答える「理想の相方とは?」<『最強新コンビ決定戦 THE ゴールデンコンビ』特集>

「みんなで歌うとは?」大西亜玖璃と林鼓子が考える『ニジガク』のテーマと、『完結編 第1章』を観て感じたこと

「まさか自分がその一員になるなんて」鬼頭明里と田中ちえ美が明かす『ラブライブ!シリーズ』への憧れと、ニジガク『完結編』への今の想い

歌い手・吉乃が“否定”したかった言葉、「主導権は私にある」と語る理由

クイック・ジャパン/QJWeb/QJサポーターズ

クイック・ジャパンを一緒に盛り上げるメンバーを募集しています!

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。