『真犯人フラグ』5話を考察。朋子の暴走、望月のホクロ、太田黒の嫉妬が鍵を握る



凌介を押したのは誰で、瑞穂は何故助けることができたのか

ますます謎が深まり、深まるばかりで、手がかりに乏しい混迷の展開になってきた。第5話はコミカルで突飛なキャラクター性も強まった。

嫌味を言いつづける本社社員のお偉いさんや、急にラップでツイートを読み上げる一星、いや主人公である凌介も、会話の受け答えがおかしくてトボけた人柄ではすまされないレベル。しっかりしていると思っていた真帆も、息子の大事なサッカーボールに油性マジックで『シベツ!』のSのマークを間違えて鏡文字で書いてしまうおっちょこちょいぶり。阿久津(渋川清彦)と落合(吉田健悟)のほのめかしの不思議会話もつづいている。

奇人変人大集合の町で、これだけ尋常じゃない行動をする人物が勢ぞろいすれば、何が起きていて、誰が犯人でも不思議はない。
凌介が車道に突き飛ばされ、瑞穂がすぐに引き戻して助ける場面。あのタイミングで助けられるのなら、瑞穂は犯人を見ているはずなのだが、その後、それについて会話したり検討したりする様子もない。そもそも、「誰がやったのか」と探すそぶりもないのは不自然だろう。ストレートに考えると、瑞穂が押して助けるという自作自演なのではないかと思うが、それもさすがに不自然だ。ちゃんと説明のつく場面として解決してくれるのか?

望月と冷凍遺体の少年のホクロの位置

「アフロディーテの下僕」のアカウントが誰か?という謎も、まず冷凍遺体について知っている人物で絞り込んで、その中から嫉妬してそうな人物と考えると、太田黒と望月だろう。だが、それも他の情報入手経路がないという仮定の元でしかないし、嫉妬してそうという曖昧な推測に過ぎない。

望月のホクロを妙に強調して映しているので、望月のホクロの位置と冷凍遺体の少年のホクロの位置が似ている点も、何かのヒントかもしれない。

とはいえ、こういったほのめかしの断片が散らばっているばかりで、いまだ収束する気配がない。しかも、「アフロディーテの下僕」も冷凍遺体も、家族失踪事件の犯人とは無関係である可能性も高い。
ノイズが多過ぎて、さらに変人キャラも多過ぎで、いまのところ「なんとでもなるし誰でも犯人になり得る」としか言いようがないのだ。

しかも、家族失踪事件そのものも、どういう事件なのか、いまだにはっきりしない。真帆たちは生きているのか。3人の失踪は全部同じ事件なのか(さすがに別々の事件が偶然重なったというのはご都合過ぎだろうが、今までの展開を考えるとあり得そうなのが怖い)。どこまでがメインの事件で、どこからが便乗犯なのか。曖昧模糊としている。

イラスト/たけだあや
1話のラストの真相もまだわからない。イラスト/たけだあや

正義中毒は酔っ払いと同じ

物語のほとんどが、メインの事件ではなくて、便乗犯だったり、野次馬の正義感の暴走だったり、ネット上の炎上だったりする。
「真犯人フラグ」を立てたがる野次馬がいかにひどいかを描いているドラマなのだ。
特に、今話は野次馬の悪意を批判するセリフが多かった。

「ふるんふるんゼリー」を路上でかけられた凌介が「甘いからたぶん間違いないと思う」とのんきに受け止めたとき、瑞穂はこう言って、野次馬を批判する。

「完全に正義中毒ですね。人の脳って正義の制裁を下すと脳から快楽物質が出るようにできてるんです。だから、自分が正義だと考えれば喜んで悪を攻撃する。正義中毒は酔っ払いと同じですから、まともな会話はできません。止めるのも不可能に近いです」

不安になると他人を攻撃する

オンラインサロンの仲間とスポーツをしたあとの瑞穂と一星の会話も、野次馬批判だ。

一星「今のトレンドは、好きなことして生きていく」
瑞穂「それができたら苦労しないよ」
一星「でも、それが流行ってるわけ。そうすると今度は好きなことがないと不安になる。で、他人を攻撃したりしちゃうわけじゃん」
瑞穂「そういう人たちに夢を与えてるってことか」
一星「そんな偉そうなもんじゃないって。世界に笑顔がひとつでも増えればそれでいいの」

さらに、(今のところ)いいヤツの一星を、若くして会社社長だったりインタビュー写真の爽やかさをみて「キラキラくそ野郎」と評するライターを登場させて、メディアだけで判断する人の偏見っぷりを見せつける。

フェイクニュースは正しいニュースより6倍速く広がる

一星の会社プロキシマで、若い社員たちが、ぷろびんについてわいわい話している場面もそうだ。

「基本デタラメか、根拠の薄い情報の受け売りだしな」
「ってか、ただの嘘つきじゃん」
「フェイクニュースって正しいニュースの6倍広がるのが速いって研究があるらしい」
「は、なにそれ」
「でも、普通に考えたらそうだよな。嘘なんだからいくらでもおもしろいこと言えるし」
「適当な嘘言ってるだけで勝手に信者が増えて稼げるなら誰でもできんじゃん」
「おれもやろうかな」
「やったらクビね」

真犯人はこれ見て笑ってる

そもそも、『真犯人フラグ』第1話の最初の場面が、こういったネット野次馬の姿を描いていたのだ。
エリンギ王の通称で知られる実業家が死亡したという速報を見て、路上でスマホで検索している人たち。
さらに、電車の中で、エリンギ王の事件を報じる週刊誌のつり革広告を見て「コスプレで炎上して奥さんに突き落とされたらしいよ」「まーじー?」「えぐー」と会話する女子高生3人(その中のひとりは光莉)。
「エリンギサンタ」と叫びながら遊ぶ小学生(その中のひとりは篤斗)。さらにスーパーの店員が噂話をしている場面(その中のひとりは真帆)。
そして、亀田運輸で、エリンギサンタ事件の犯人探しをしている社員たち。凌介は、それを見て、

「こういうとき犯人ぽく見える人が犯人と限らないんじゃない。真犯人はこれ見て笑ってるかもよ」

と、画面真正面向きで(つまりテレビを見ている我々を見て)言うのだ。
野次馬側だった相良家族が、一転して野次馬に悩まされる側になってしまう悲劇を、テレビ受像機を使って、我々野次馬が見ているという構図。
おそらく『真犯人フラグ』の謎を解く鍵は、この構図にある。

【西島秀俊 芳根京子 宮沢りえ】日曜ドラマ「真犯人フラグ」第6話予告60秒【日テレドラマ公式】

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米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

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