『呪術廻戦』17巻。よくわかんない「死滅回游」編のルールを平たく説明する!


「殺し合いの螺旋」を地で行くゲーム(by『バガボンド』)

「死滅回游」のルールが箇条書きで8つほど説明された。ややこしいというよりは、何か裏ルールや裏抜けの余地がありそうな感じだ。ザッと説明すると、羂索に選ばれた1000人の泳者(プレイヤーと読む)は、日本全国10カ所にある結界の中で19日以内に参加を宣言しなければならない。泳者同士が殺し合いをすることでポイントを稼ぐバトルロイヤルだ。

問題なのは、現行ルールで「○○をすれば終了」などの記述がないこと。最初に設定した1000人以外も途中参加がOKなためいつまで殺し合いがつづくのかわからず、羂索を殺しても終わるわけではないという。「殺し合いの螺旋」(『バガボンド』辻風黄平が残した名言)を地で行くデスゲームになっている。

それを止める方法として「100ポイント(ひとり殺すと5ポイント)を使えばルールを追加できる」という記述もあった。ひとまず虎杖たちは、巻き込まれてしまった津美紀を救うために100ポイントを目指す。つまり、人を救うため、平和を生み出すために、何十人、下手したら何百人もの人の命を奪わなければならないということになるのだ。

また、「死滅回游」には呪術を消滅させる術式の持ち主・来栖華(くるす・はな)も参加している。虎杖たちは、封印された五条悟(ごじょう・さとる)を解放するために、彼女を探すこともミッションになってくる。

『呪術廻戦』<17巻>芥見下々/集英社
『呪術廻戦』<17巻>芥見下々/集英社(144~152話)

別に理解しなくても楽しく読める部分

羂索の目的がこれまた難解だ。もはや概念のようなものになってきているので、読者は理解しなくてもいいのではないかとさえ思う。一応説明すると、羂索は「天元様(てんげんさま)と人類の同化」を目論んでいる。

だが、そもそも天元様をしっかりとイメージすることが難しい。天元様とは、人間が高じた特異な存在で、「私の魂は至る所にある」「個としての自我は消え、天地そのものが私の自我」とまで言っている。平たく言えば「神」みたいなことだと。ほんと平たく言えばだが。

そんな天元様と人類の同化。もはや概念が過ぎる。人間がいなくなるの?みんなの寿命は?永久に?動物は?そもそも日本の話だけど、急に外国人も同化させられてしまうの?それって理不尽過ぎない?湧き出る疑問が果てしない。

『新世紀エヴァンゲリオン』の「人類補完計画」を聞いた時のような気持ちだ。果てしな過ぎてどういう感情になっていいのかさえわからない。なので、「人類が滅ぼされてしまうから何としても止めなきゃ!」くらいの気持ちで読めばいいと思う。

ちなみに羂索は天元様と人類の同化の“慣らし”のために、「死滅回游」を行うそう。いきなり同化しちゃうと天元様の自我である天地がビックリしちゃうから呪力慣れをさせる、みたいに僕は解釈しているが、概念が過ぎて本当のところはイマイチわからない。

ナナミンの術式だけが復活する?

難解だ難解だと言ってはいるものの、やることはバトルロイヤル。『少年ジャンプ』の超王道パターンだ。ルールの穴抜けなんかはシーンごとにしっかりと説明されるだろうし、始まる前からそれほどハードルを上げる必要もない。本当に「羂索は世界を滅ぼそうとしている」「虎杖たちは、津美紀と五条を救うために参加する」ぐらいで大丈夫だと思う。それより気になるのは参加するキャラクターだ。泳者それぞれの参加前日譚がオムニバス的に描かれた。

「ずっとおもろい奴と ずっと自分のことおもろいと勘違いできる奴や オマエはどっちや」。売れないお笑い芸人・高羽史彦(たかば・ふみひこ)は、先輩に説教を受けていた。これに対して高羽は、「五分五分だと言うけれど…本当は七三くらいが……」と遠くを見つめながら謎につぶやく。

今作で「七三」と言えば、死んだ七海建人(ななみ・けんと)の術式・十劃呪法(とおかくじゅほう)が思い浮かぶ。この能力は、対象を7:3に分けた部分を強制的に弱点にするというもの。死んでしまった七海の十劃呪法が、高羽に引き継がれた可能性があるのだ。読者人気の高いナナミンなだけに、高羽の動向が注目される。

謎に包まれていた完全自立型人工呪骸(かんぜんじりつがたじんこうじゅがい)・パンダの製造方法の秘密や、禪院真希(ぜんいん・まき)VS禅院家が描かれた。ひと回り成長したふたりも、「死滅回游」に参加しそうな雰囲気。他にも、伏黒恵、乙骨憂太、乙骨いわく「ノってる時は僕より強いよ」の秤金次(はかり・きんじ)らが参加するようだ。

1巻ずつ振り返ってきたこの連載も、最新刊到達によりいったんここで終了する。何度も読み返していたつもりの『呪術廻戦』ではあったが、書くために改めて読み直すと理解できていないことが本当に多かった。なんなら大きな勘違いをしていそうな気すらしてならない。

12月25日に発売される18巻や公開される映画『劇場版 呪術廻戦 0』のためにも、読者のみなさんももう一度くらい振り返ってみてほしい。僕もしつこいくらいに読み直す予定だ。

『劇場版 呪術廻戦 0』特報【12月24日(金)公開】

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