怖がるな、というほうが難しいよ
ななは、思慮深くて、一歩引いて観察するようなところがある。よく言えば大人びているし、悪くいえば子猫らしくない。
ぶんは、天真爛漫な甘えん坊。でも当初の数日はよく怒っていたし、よく噛んでいた。ガブッというよりもグーッと噛む。歯が手や指に刺さる感じで痛い。
〈齧られる 噛むというより刺す感じ 子猫が噛んだ小指が痛い〉
考えてみると、得体の知れない、自分の数十倍もある生き物と対峙しているのだ。怖がるな、というほうが難しいよ。
そんなふうに納得しながら、同時期に読んだ『うちのねこ』(高橋和枝/アリス館)を思い出していた。
絵本『うちのねこ』は、子猫よりずっと警戒心も力も強い成猫の元野良猫が、「うちのねこ」になっていく話。
読むと、心がギューッとなって泣いてしまう。感想というか、ほとんどこの絵本を短歌化したような短歌ができてしまった。
〈馴れてない猫と自分に言い聞かす 「怖くないよ」と「だいじょうぶだよ」〉
ななもぶんも元気で、よく食べるけれど、とても骨ばっていて、痩せていた。外で食べていくのは、大変なことなのだろう。
子猫なので日に日に警戒が解けていく。警戒心よりも食欲や好奇心が勝り始める。これからはずっとそれでいいんだよ。
姉弟仲がよくて、よく遊ぶ。そして電池が切れたみたいに気がつくと寝ている。
〈「暴れる」か「寝る」かの二択 子猫には「温存する」がまだわからない〉
猫を飼うことを考えている人には「できれば2匹一緒に」と勧めることが多い。もちろん2匹分の責任を負うことになるし、状況が許せばだけど、実は2匹のほうが圧倒的に「楽」なのだ。猫どうしで遊んでくれるので、手がかからない。外出時に1匹で家に残すうしろめたさも軽減される。何より「2匹いて大変だ……」と感じることより「2匹いておもしろい!」と感じることのほうがずっと多いと思うから。
〈朝食後、子猫がじゃれる 見よ、世界 これが「平和の祭典」である〉
〈猫じゃらし 目で追う猫の目の色は「わくわく色」と名付けたい色〉
将来の譲渡先にいわゆる「先住猫」がいる場合もあるので「ほかの猫に対する反応」も大事な情報だ。
ぶんは、ずいずい屈託がない。ななは、ぶんを偵察隊にしながら様子を見ている感じ。どちらもほかの猫がすごく苦手、というわけでもなさそう。
これもホント、猫によってまちまちで「人は苦手だけれど猫は大好き」、「ほかの猫はダメだけど、人にはベタベタに甘える」、「人も苦手なら、ほかの猫も苦手」といろんなタイプがいて、それを踏まえて譲渡先の条件を考慮することになる。
一時預かりは「子猫の性格を把握すること」でもある。
〈猫なのに猫が苦手な猫もいる 僕が誰かを苦手なように〉
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