『呪術廻戦』16巻。乙骨憂太がついに登場!映画化される0巻との繋がりとズレを考察


虎杖と脹相は本当に兄弟なのか?

人間である母を弄ばれた呪胎九相図の長兄・脹相(ちょうそう)は、偽夏油の正体を知ると激昂。さらに、弟(と一方的に思い込んでいる)の虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)と戦闘(15巻考察参照)を強いられたこともあり、脹相は偽夏油に飛びかかった。

「弟の前で命を張らない理由になるか?」

勘違いしている脹相の顔は真剣そのもの。虎杖は完全否定しているのに対して、脹相は「お兄ちゃんと呼んでくれないか?」と兄弟のコミュニケーションを楽しむ。ギャグとシリアスが入り混じった不思議なバトルだ。

実際のところふたりは兄弟なのだろうか? 術式で血を操る脹相が感じた「虎杖との血のつながり」は一定の信憑性があるが、作者の芥見下々は「呪胎九相図は(登場済みの)1~3番以外出す気はない」(『漫道コバヤシ』フジテレビONE)と語っている。可能性があるとしたら、虎杖は呪胎九相図ではなく、脹相らと母が同じで「種違いの兄弟」という線だろうか。それならば、虎杖の出生に偽夏油も関わっていそうだ。

『呪術廻戦』<16巻>芥見下々/集英社
『呪術廻戦』<16巻>芥見下々/集英社(134〜142話)

リアル東京からディストピアへ

「始まるよ 再び呪術全盛平安の世が…!!」

そんな脹相に加え、パンダら京都校の面々、さらには特級術師の九十九由基(つくも・ゆき)も参戦するが、偽夏油はまんまと逃げ切り、「渋谷事変」は終幕を迎える。「渋谷事変」は五条悟(ごじょう・さとる)を封印した呪霊軍団の勝利で終わった。

偽夏油と共闘した裏梅(うらうめ)の存在が鍵を握る。裏梅は両面宿儺(りょうめんすくな)と偽夏油の両方とつながりを持つ唯一の人物で、宿儺に「お久しう」と言っていることから数百年以上前から生きていると思われる。また、乙骨と五条の先祖である菅原道真(0巻で五条が言っている)の家紋が梅であることから、このふたりとも何かしらの関係を持っていそうだ。

「渋谷事変」後の東京はというと、23区はほぼ壊滅、政治的空白、放たれた呪霊の数は1000万超え……。変わり果てた世の中になってしまう。これまではリアルな街並みに潜む呪霊との戦いが描かれてきたが、ここからの舞台はディストピア。かなり思い切った展開といえる。

そしてそんな荒廃した街に登場したのが、0巻の主人公・乙骨憂太(おっこつ・ゆうた)だ。乙骨は本編登場前から人気ランキングの上位に位置していて、ジャンプ連載初登場時には余裕でツイッターのトレンド入りするほどの騒がれ方だった。満を持しての登場となり乙骨の快進撃で世界を変えるのかと思われたが、その役回りはなんと虎杖の命を狙う敵役だった。

乙骨憂太が抱える0巻とのズレは?

乙骨が敵になったのは、呪術総監部の命令だった。保身を図りたいお偉いさん方は、「渋谷事変」での失敗を五条や呪術高専学長・夜蛾正道(やが・まさみち)のせいにし、虎杖もろとも抹殺しようとしていたのだ。

さらに、禪院家(ぜんいんけ)の当主争いで恵(めぐみ)に敗れた直哉(なおや)は、恵もろとも虎杖を殺そうと東京へ。荒廃した東京で呪霊退治をしていた虎杖&脹相vs乙骨&直哉が開始される。呪力だけなら最強である五条よりも多いという乙骨は、成長著しい虎杖をも簡単に上回った。

現時点で最強候補にも上がりそうな乙骨だが、0巻との意味ありげなズレも描かれている。幼いころに結婚を約束した祈本里香(おりもと・りか)は、事故死したのち、乙骨の意思と関係なく乙骨を守る特級過呪怨霊となった。乙骨は0巻で「里香ちゃん」と呼んでいたが、本編はなぜか「リカちゃん」とカタカナで呼ぶようになっている。

そもそも0巻で里香は、解呪(成仏のようなもの)されたはずだった。にもかかわらず本編でも当たり前のように登場し、乙骨をサポートしている。乙骨が里香をこの世に留め、式神のように扱っているのかもしれないが、そうなってくると0巻での別れのシーンが意味のないものになってしまう。

今戦っているリカは、里香への愛で乙骨が作り出した何かなのかもしれないし、既存の式神を勝手にリカと呼んでいるだけなのかもしれない。いずれにせよこのズレは、意図せずに生まれた矛盾であるとは考えづらい。

『劇場版 呪術廻戦 0』特報【12月24日(金)公開】

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