松本人志の“嬉しい悲鳴“
5人という少人数ながら、ここまでバランスが整った採点に驚いた。審査員は自分のなかに基準を持ち、8点という点差のなかで優劣を付けている。となれば、序盤から高得点がつづいたのも、歴代最高点が出たのも、単純に「おもしろいコントがつづいたから」と見るのが自然だろう。
後半につれ審査員たちには疲れが見え、松本人志は「すごく矛盾してんねんけど『もうあんまりウケんな』って思ってまう」「もう許してくれ!」と、ぼやいていた。ハイレベルなコントがつづいたからこそ出た“嬉しい悲鳴“。ただ、そのあと最下位になったニューヨークから「松本さんのせいや!」と怒られてしまうのだが。

最下位のニューヨークに誰も最低点をつけていない
ファーストステージ最下位になり、『M-1グランプリ2019』を思わせる松本人志との絡み(「最悪や!」)で番組を盛り上げたニューヨーク。しかし、各審査員がつけた最低点に着目すると、誰もニューヨークには最低点をつけていない。全員がほぼ90点をつけた453点は、決して悪い点数ではないのに……。
これは結果論ではあるが、今回の採点は「500点からの減点」ではなく「450点(5人×90点)からの加点」と考えるとしっくりくる。濃いキャラクターや意外な展開が審査員の誰かに刺されば、そのぶん点数がアップする。深く刺されば刺さるほど、刺さる人が増えるほど順位があがり、全員に深く刺さった空気階段が歴代最高点になった……と見えるのだ。裏を返せば、誰も「やらかして減点になった」わけではない。
一定の水準を保ち、広く受け入れられるタイプのネタでは、今回のキングオブコントは戦えない。既にテレビで幅広く活躍しているニューヨークやマヂカルラブリーが10位9位になったのも、広さと深さのチャンネルが今回の流れと噛み合わなかったからかもしれない。
『M-1グランプリ2020』で、マヂカルラブリーは流れを読みながらギリギリまで1本目のネタに悩んでいた。だがコントでは臨機応変にネタを変えることができない。ましてや、審査員が当日までわからないとなれば、その準備はとても悩ましいものだっただろう。
かつて挑戦者だったからこその「審査コメント」
今回の『キングオブコント』は、審査コメントもとても丁寧だった。新たな4人の審査員は、テレビでネタを披露することも多い「現役」でもある。プレイヤーの目線から「ここがよかった」と語る評は、テレビを見ているこちらに発見をもたらしてくれた。
小峠「ツッコミの海野が、そこまでガーッとツッコまないのがいいかもしれないですね。2人がゴチャゴチャしてツッコミまでワーッときたら、ちょっとうるさいのかなと思う。そこまで入らないのがよかった」(ジェラードンに)
山内「空気階段って設定が止まって、そこでコントすることが多いんですけど、今日は話がどんどん流れていって最後まで全部おもしろかった」(空気階段の1本目に)
飯塚「迷子センターというよくある状況設定の中で、慌てて変なことを言うお父さんよりも、アナウンスで緊張感のある方を笑わせる。それはちょっと新しかった気がして」(うるとらブギーズに)
秋山「ずっとアレ1個で引っ張っているからこそ、最後の『どうだ』っていう顔が活きているわけだし。ニッポンの社長っぽくて、だいぶ狂ってておもしろかった」(ニッポンの社長に)
もちろん松本人志も『キングオブコントの会』(TBS系列)で圧巻の新作コントを見せつけたように「生涯現役」だ。今回は他4人のコメントの流れを汲み、しっかり内容に触れたコメントが多かったように思う。
松本「最初これ、どっちかというとスタジオコントのほうが向いてるコントかなと思ってたんです。でも後半の『アレ』が見せたかったんだと。あぁ(この舞台に)適しているなと。そのチャレンジ精神を買いましたね」(そいつどいつに)

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