土田晃之という男
「人気番組には1回は呼ばれるが、2回呼ばれてこそ本物だ」。
これは劇団ひとりさんのお言葉です。僕は『アメトーーク!』に2回呼ばれました。ということは……「神宮寺しし丸は本物だぁ~!」と、近所中を叫びながら走り回りたいところですが、どう考えても自分の力だけで2回目があったとは思えないのです。そこには土田晃之さんの存在がありました。
僕が土田さんと出会ったのは、今から15年ほど前。太田プロライブの楽屋でした。その日の太田プロライブはお台場でやるスペシャル版で、ゲストMCとして土田さんが来られていました。
ド新人芸人だった僕は、楽屋の隅っこで一人メロンパンを食べていました。すると、それを見付けた劇団ひとりさんが「お前、なに一人でうまそうな物食ってんだよ。そういうのは先輩にもお裾分けしなきゃいけないんだぞ」と言って来ました。
とんでもない言い掛かりに僕は怯えながらも「お裾分けしたいのですが、もうほとんど食べてしまいました」と答えました。
確かにメロンパンはほとんど食べ終わっていて、袋の下にカスが少し残っている程度。それでもひとりさんは「そのカスでいいから一口いかがですか?って配って来い」と言うのです。
そして「あの人に行って来い」と指差した先にいたのが土田さん。当時の僕なんて一言も話した事のない大先輩です。「さすがにそれは……」と言っても「行って来い!」と譲らない暴君ひとり。仕方なく土田さんの元へ行き「一口いかがですか?」と震える手でメロンパンのカスを差し出しました。
すると土田さんは「あん?」とドスの効いた声で一言。「大変失礼致しました!」と軍隊に即合格できる程の敬礼をして、僕はその場を立ち去りました。
ちなみにその時ひとりさんは、新聞を読むふりをして全く関係ないふりをしていました。
そんな出会いだった土田さんと、ちゃんとお話しできたのはそれから1~2年後。ライブの打ち上げでご一緒させて頂きました。しかし、そこで僕はとんでもない失態をしてしまいます。
泥酔してしまい、こともあろうに土田さんに絡んでしまうのです。「俺、格闘技やってるから土田さんにケンカ勝てますよ!」と。
土田さんが「じゃ、表出てやろうか?」と言うと、僕は「体重差があるので、俺の体重の58キロまで減量してから来い」と言っていたそうです。
この地獄のダル絡みを、朝まで何度も何度も繰り返していたそうです。その場にいた他の芸人はみんなどん引き。そりゃそうでしょう……。
翌日、死ぬほど後悔し、死ぬほど色んな芸人に謝罪しました。やってしまった……と落ち込んでいたのですが、ここからが土田晃之という男なのです。
後日、土田さんとお会いする機会が訪れました。僕はメロンパン事件を超える謝罪をさせて頂きました。
しかし、土田さんは泥酔事件の事を「よく覚えてないんだよなぁ。なんせ俺も酔ってたから(笑)」と言うのです。
これは許し方の中でも一番カッコいいとされる“忘れちまったよ”なのです。後輩にとってこれほどありがたいお許しは無いのです。
それどころか、その後はお会いする度に「おい! 勝負しようぜ! 俺に勝てるんだよな?(笑)」と言って泥酔事件を笑いにしてくれ、お互い格闘技好きということもあり、格闘技観戦の時はいつも僕を誘ってくれるという、許すどころかご褒美まで与えるというお釈迦様対応。
この泥酔事件以来、10年以上お付き合いをさせて頂いている土田さんが「キックボクシング大好き芸人」のプレゼンターだったのです。
ようやく『アメトーーク!』の話に戻って来ました。
土田さんが僕の事を『アメトーーク!』に推薦してくれていたかは分かりません。訊いたところで土田さんの答えはきっと“忘れちまったよ”でしょう。
【教訓】
「酒は飲んでも飲まれるな」とは言いますが、僕は飲まれたからこそ土田さんとの関係が出来、ひいては『アメトーーク!』出演に繋がったとも言えます。
上司や先輩との距離を縮めたいなら、泥酔し「俺、あんたにケンカ勝てますよ!」と、朝まで絡みましょう。
もし怒られても大丈夫! メロンパンのカスをお裾分けすれば許してもらえるはずです。
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