ウイルスの不安にくじけず生きるには。パリッコ『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』

2021.7.4
パリッコ『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』

文=スズキナオ 編集=森山裕之


「これぞ生活者のチープシック! 山田家は夫婦ともどもパリッコチルドレンです」山田詠美
「どんな時代になろうとも──やっぱりパリッコさんは、『今そこにある幸せ』を見出す天才でした!」ライムスター宇多丸

QJWeb連載「マイバスケット・イズ・スーパーマーケット」などを中心とした、ここ数年のパリッコさんの日常の中の冒険をめぐるスーパー・エッセイ集を、盟友のスズキナオさんが読む。


それでも毎日パーティーを

パリッコさんが名前の由来を聞かれている場面に何度か出くわしたことがある。賑やかな飲みの席やトークイベントの会場で「それにしても、どうしてパリッコなんですか?」と。その都度パリッコさんは丁寧にその理由を答えていたはずなのだが、どういうわけか、私はその回答の内容が一向に記憶できないでいる。確かに同じ場にいたのに……。

しかし私はパリッコさんの新刊『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』を読んで確信した。「パリッコ」という名前は「Partyっ子」が元で、よりなめらかな発音の「パーリーっ子」へと転じ、それが縮まった結果生まれたものだと。

収められている原稿の初出を見ると2020年以降、つまり新型コロナウイルスの脅威に世界が覆われたあとに書かれたものが中心であることがわかるが、中にはそれ以前の文章もある。にもかかわらず、コロナ以前の文章も以後の文章も不思議と同じように楽し気なムードにあふれている。

もちろん、多くの人々の生活が大きく変わってしまったように、パリッコさんだってライフワークである酒場巡りが制限され、仲間たちと酔い潰れるまで酒を酌み交わすこともできなくなっただろう(大阪に住む私が東京にいるパリッコさんと気軽に飲めるような機会もまったくなくなってしまった)。

だが、未知のウイルスの不安にもくじけず、パリッコさんは日々を小さなパーティーで彩って生きている。天才的なセンスで誰もがマネしたくなるようなレシピを作り出したり、ときには派手に失敗したり、スーパーの2階をあてもなくうろうろしたり。結果はどうあれ、胸が高鳴るような瞬間に全力を注ぎ、グラスにはたっぷりと酒を注ぎ、毎日を生きていく喜びをみんなに発信しつづけているのだ。


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Written by

スズキナオ

大阪在住のフリーライター。「デイリーポータルZ」「メシ通」等のWEBメディアで記事を書いている。酒とラーメンが好き。パリッコとの飲酒ユニット「酒の穴」としても活動中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)など。

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