最終回『今ここにある危機とぼくの好感度について』意味のあることを言わない者たちの最終判断

2021.6.2

第4話と最終話は「蚊の流出」の顛末

主人公は、神崎真(松坂桃李)。イケメンアナウンサーだった彼は、「意味のあること」を言わないことで好感度をあげてきた。そのスキルを買われて、母校である帝都大学の広報課に抜擢される。
だが、帝都大の理事たちの隠蔽と忖度強要に、神崎は振り回されることになる。

第1話・第2話では、スター教授・岸谷(辰巳琢郎)の論文不正を隠蔽するために、内部告発者であり元カノである木嶋みのり(鈴木杏)に接触。よけいに事態を混乱させる。
第3話は、帝都大百周年記念イベントのゲストに予定していた浜田剛志(岡部たかし)がネットで炎上。なんであんなやつをゲストに呼ぶんだと大学に苦情が殺到し、ゲスト出演を取りやめにする。ところが、外国特派員協会の記者会見で、浜田がこんなことでは言論の自由が守れないと大学を批判し、それに応じて三芳総長(松重豊)も会見することになる顛末を描く。

第4話と最終話は、安全安心と大規模イベント開催をめぐっての騒動。次世代科学技術博覧会の予定地で謎の虫刺され被害が続出する。帝都大の研究室から流出した蚊が原因ではないかという疑いが浮上するが、理事たちは調べずにうやむやにしようとする。自分も刺されて死んでしまうかもしれないと怯えている神崎が例によって翻弄されまくって、帝都台の研究室から流出した証拠を掴んでしまう。

大学理事たちに翻弄されつづけた主人公の神崎真(松坂桃李)(5話より)写真提供/NHK
大学理事たちに翻弄されつづけた主人公の神崎真(松坂桃李)(5話より)写真提供/NHK

須田理事だけは逃げなかった

「みなさんもうお気づきでしょう。我々は組織として腐敗し切っています。不都合な事実を隠蔽し、虚偽でその場をしのぎ、それを黙認し合う。何より深刻なのは、そんなことを繰り返すうちに、我々はお互いを信じ合うことも、敬い合うこともできなくなっていることです」。

最終話、三芳総長の覚悟と決断により、外来生物の流出が自分たちの大学からだった事実が公表される。帝都大学は、過去最大規模の損失を抱える。
総長選考会議で三芳総長の留任が決定。他の理事たちはすべて解任かと思われたが、須田理事(國村隼)だけは留任することになった。

須田理事「現実を見てください。どうか」
三芳総長「私は現実を見ています。帝都大学は過ちを犯した。ゆえに然るべき責任を取らなければならない。これが本当の現実です」

三芳総長が見ている現実と須田理事が見ている現実は対立している。相容れない。
だが、ほかの理事たちが、忖度と追従でおろおろするばかりだったのに対し、須田理事だけは、自分が信じる現実を総長にぶつけてきた。蚊の騒ぎのときも逃げ出さなかった。

マスコミに向かって重大発表をする三芳総長(松重豊)(5話より)写真提供/NHK
マスコミに向かって重大発表をする三芳総長(松重豊)(5話より)写真提供/NHK

第3話で「ぼくは独裁者になんかならないよ」と三芳総長は笑った。そんな総長だからこそ、相容れないのを承知で、須田理事を慰留したのだろう。最終話でも、須田理事慰留の理由を「本気で大学のことを考えてる人じゃないと、こんな難しい局面は務まらないし」と優しい表情で語った。

厳しいけれども小さな希望

「長く厳しい戦いになる。これはその第一歩です」。
忖度と隠蔽がまかり通る権力構造を示しながら、それに翻弄される愚かな我々を描きながら、踏み留まるためにいかに「意味のある言葉」を使うか。
ドラマは、最後に厳しいけれども小さな希望を示した。腐った組織の大手術を行い、これから再生のための第一歩を踏み出す決意を示した。

といっても、主人公の神崎真は、相変わらずで、さほど成長していないのも(いや、彼にとってみれば大きな成長かもしれないけれど)、なんというか、ブラックコメディとしてナイスな着地だったと思う。
印象的な挿入歌は、バッハの作品番号BWV645『目覚めよと呼ぶ声あり』だ。


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米光一成

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