エヴァンゲリオン、人生を並走するアニメーションとして

2021.4.21

文=土居伸彰 編集=森田真規


観客動員数は500万人を超え、興行収入もシリーズ最高を更新中の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。4月29日には先日放送された『プロフェッショナル』(NHK)の拡大版『さようなら全てのエヴァンゲリオン~庵野秀明の1214日~』のオンエアが決定するなど、公開から1カ月以上経った今もまだ話題を呼んでいる。

新千歳空港国際アニメーション映画祭のアーティスティック・ディレクターで、アニメーションのプロデュース、配給を手がける株式会社ニューディアー代表の土居伸彰氏は、「エヴァは、アニメーション云々に収まるものではなくて、人の人生のひとつのピースとなるような作品」だという──。

※この記事は映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の結末までの内容を踏まえて書かれたものです。未見の方はご注意ください。


14歳のとき、碇シンジと完全にシンクロしていた

僕が『エヴァンゲリオン』と出会ったのは1995年のテレビシリーズ放映時のことだった。1981年生まれの僕は当時14歳。碇シンジをはじめとする「チルドレン」たちとちょうど同い年だった。うちの中学校は麻原彰晃の出馬した選挙区に属していて、近くにはオウム・ショップがあり(誰かがそこで万引きしてきた麻原彰晃の曲のテープが昼の校内放送で爆音で流されて問題になったことがあった)、関係あるようで関係ないが宮崎駿の出身校でもあり、これは日本全体の話でもあるが同年1月に阪神・淡路大震災があり、さらに3月には地下鉄サリン事件があり、前述のようにオウム真理教と「近い」土地柄ゆえ、世紀末思想がとてもしっくりきてしまう雰囲気を生きていたときだった。

【公式】新世紀エヴァンゲリオン 第壱話「使徒、襲来」

『エヴァンゲリオン』が始まると、うちの学校のオタクたちはそのクオリティに色めき立ち、クラス中で布教を始めた。うちの中学校はのちに関東連合と呼ばれることになる半グレ集団の発祥地近辺にあり、そことつながりのある一定の数のヤンキーがいたのだが(たまに暴走バイクが校庭に乱入してくるときがあった)、エヴァはそんなヤンキーたちも虜にしていたことが印象に残っている。

僕はそのオタクのひとりから放映を録画したVHSとフィルムブックを押しつけられ、そしてまんまとエヴァにハマってしまった。Windows 95の登場で世の中にインターネットと呼ばれるものが広がり始めたのもこのころだったと思う。同じく1995年には、テレホーダイと呼ばれるサービスで深夜帯に家の電話回線を占拠し、エヴァのことが語られる掲示板に入り浸っていた記憶がある。

エヴァにハマったのはそれがよくできたロボットアニメだからではなかった。最初に観たエピソードは第13話「使徒、侵入」で、エヴァがほぼ登場しない静かな戦いの回だった。しかし、その静けさにこそ何か異様なものを感じたのだ。それまで観てきたアニメは『ドラえもん』や『ドラゴンボール』といったごく平凡なもので、しかし『エヴァンゲリオン』は「何か違う」と思った。心の奥底に直接触れられるようなものがあったのだ。エヴァは、そこで何が起ころうと、それは内的・精神的なドラマであり、それを観ることは、碇シンジに完全にシンクロするような体験だった。

第25話・第26話があんな展開になったことに対しても、とても自然なことのように思えた。一方で、家族と一緒に観るのはなんだか恥ずかしく、観ていること自体を悟られたくなかったので、いつも友達からVHSを借りて夜中にこっそり観ていた。当時所属していた野球部の練習中も、ヤンキーの先輩たちがかっ飛ばす打球の球拾いをしながら、来週のエヴァはどうなるのか、ボンヤリと考えつづけていたことを思い出す。

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土居伸彰

1981年、東京生まれ。アニメーション研究・評論・プロデュース。新千歳空港国際アニメーション映画祭フェスティバル・ディレクター。2015年に株式会社ニューディアーを立ち上げ、『父を探して』『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』など海外作品の配給を本格的にスタート。国際アニメーション映画祭での日..

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