去年末に本格始動した霜降り明星せいやの個人YouTubeチャンネル『せいやのイニミニチャンネル』をご存知だろうか。
「イニミニレカピカレーライオニカチカロリパパランパンプッシュ」
という意味不明なタイトルコールから始まる謎のチャンネルなのだが、このチャンネルを観ればあの『ONE PIECE』作者・尾田栄一郎氏に「天才」と称された彼の才能の一端を知ることができる。
究極のお笑い空間
まず、目を疑ったのが「部屋の白さ」。公開されている動画のほとんどが真っ白な部屋で撮影されているのだが、この世にこれ以上の白はあるのかというくらいに白い。「白」という概念を覆すほどの白さだ。常人ならば数分いるだけで精神が崩壊してしまうだろう。
総合学術電子ジャーナルサイト『J-STAGE』が公開している「笑いの性差に関する検討 : 大学生の意識調査から」(著/伊藤理絵)という論文にも、「『笑い』を色に例えると暖色系だと思う結果が得られた」とあるように、ハッピーな感情は黄色、オレンジなど明るい色に感じられることが多いという。すなわち、まわりに何もない白い部屋というのは「笑い」からは最も遠い場所にあると言っても過言ではない。
「無」さえ想像させるほど白い部屋を舞台にする意味。それは「観ているものにそれ以外の情報を与えない」という意図があるのではないかと思った。そう、『せいやのイニミニチャンネル』から得られる情報は「せいや」以外にはない。圧倒的に少ない情報量の画面上にただ燦然とせいやだけが存在している。「ほかに何もない」からこそ「そこにあるものを見てしまう」、この白い部屋はある意味で「究極のお笑い空間」とも言えるのかもしれない。
そんな『せいやのイニミニチャンネル』でせいやが披露しているのは『パニックになり続ける四千頭身 都築』、『売れてない世界線の明石家さんま』などのピンネタだ。
特に『【神業】いいともの最終回1人で完全再現!!』は2020年6月19日放送のラジオ『霜降り明星のオールナイトニッポン0(ZERO)』内でも一度披露されたことがあったが、改めて観てみるとせいやの記憶力と再現力の高さに震え上がるクオリティに仕上がっている。
本放送と比べてみても、冒頭の明石家さんまとタモリのトークから、ラストの柳沢慎吾の甲子園ネタまでの一連の流れをほぼ完璧に網羅している。特筆すべきは、当時番組を観ていた人間のほとんどが覚えているであろうダウンタウン、ウッチャンナンチャン→とんねるず→爆笑問題→ナインティナインの乱入の流れだけでなく、清水ミチコによる大竹しのぶのものまねや、オスマン・サンコンがステージに上がるくだりなど「誰が覚えてんだよ」と思うシーンを組み込んでいるディテールの細かさだ。タイトルにもあるとおり、まさに「神業」といえる。
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