「不幸な子供を見捨てきれない大人」像は汚らわしいものなのか。真造圭伍の新境地『ノラと雑草』

2021.1.8

文=足立守正


あるファッション雑誌のウェブ記事で、「今だったら完全にアウトなフランス映画」という見出しがあった。こんなものを好きとか言う人には気をつけろ、などと過激な論調で、倫理的観点からセレクトしたらしい。

ご立派なことだが、ここで『レオン』を断罪した、「ローティーン少女がオッサンを誘惑しているかのようなシーンを挿入しているだけでアウト」という短いコメントはどうか。どうやら少女役だったナタリー・ポートマンの最近の発言に便乗しただけっぽいけど、すごい雑でしょ。倫理的なメガネをファッションにし過ぎやしないか。

※本記事は、2020年12月25日に発売された『クイック・ジャパン』vol.153掲載のコラムを転載したものです。


少女と刑事猫と芸術

「不幸な子供を見捨てきれない大人」像は、『ペーパームーン』にせよ『北斗の拳』にせよ、グッとくるものだったが、いつからこんなに汚らしい扱われようになっちゃったんだろ。近年のそうした風潮に対する歯噛みに、つき合ってくれるような話が、真造圭伍の描いた『ノラと雑草』。

売春のガサ入れ現場で、中年刑事・山田は亡き愛娘によく似た少女・海野詩織を補導する。事件が深刻さを増すなか、少女と偶然再会した山田は、野良猫を媒介として打ち解けるが、家庭内虐待のにおいを嗅ぎ取り、ついに自宅にかくまってしまう。

どう転んでも、ハッピーな結末の見えない展開。浮遊感のある心地いいコメディに親しんだ真造ファンなら、「海野と山田」のネーミングに反応する前に、小技を抑えて重い物語の運びに徹しているさまが意外だったろう。

かつて短編『美少女なんて大嫌い』で小学生と青年の交流を描いたときですら、罪深さをふわりと空に逃がすようだったのに、今回ばかりは、現実社会の不思議な誘拐事件や殺人事件の記憶がファンタジーをねじ伏せる。

さらに、芸術に対する向き合い方が裏テーマに描かれる。画材を与えられ絵画と向き合いはじめた少女に対し、向き合い方を見極めようとしているイラストレーターの助言が暖かい。そして(造形も含め)できれば真造圭伍作品には登場して欲しくなかった人物である少女の母親の、向き合い方を誤ったことによるモンスター化の描写の容赦のなさよ。

本作で作者が踏み込んだのは、王道なのか横道なのかは知れないが、とはいえ、車窓に見える白鷺など「らしさ」は不意に飛び込んでくる。少女の入部したイケてない美術部に徐々に漂いはじめる仲間意識も良かった。あと好きなのが、イヤな役ではあるが、埼玉県警の刑事の顔ね。長い睫毛ね。勝手ながら俺の脳内で、若き日の梅宮辰夫が見事に演じています。

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