8月、無観客の1回戦から始まった『M-1グランプリ2020』は、5カ月にわたる激戦の末、マヂカルラブリーの優勝で幕を閉じた。しかし『M-1』の楽しみはまだ終わらない。いや、むしろここからが、さらに『M-1』を楽しむ時間の始まりだ。
まずは反省会と打ち上げで当日を振り返る
まず急いで押さえておきたいのが、期間限定で配信されている『M-1世界最速大反省会』と『M-1打ち上げ』。いずれも『M-1』当日、番組終了後にGYAO!で生配信されていた番組。『反省会』は小籔千豊MCのもと、笑い飯、ナイツ土屋伸之、麒麟・川島明が全組のネタを振り返る。いずれもかつて『M-1』で戦ってきた面々だけに、愛にあふれた評を聞くことができる。たとえば10位の東京ホテイソンに対して、川島は「ツッコミのキーがいいですね。2億出してでも取り替えてほしい声帯。カーンと行く、なのにうるさくなくてきれいな声なので、本当に漫才に向いていると思う」「リズム感もいいです」と絶賛。記者会見後にスタジオに駆けつけたマヂカルラブリーに話を聞く場面も。ネタの最中にどんな気持ちだったかなど、細かい部分が芸人ならではの質問でつまびらかにされていくところは聞き応えがある。
『M-1打ち上げ』は、2017年からスタートした生配信で、決勝進出者10組がお酒を飲みながら戦いを振り返るもの。この打ち上げ、MCが千鳥なのが重要で、『M-1』決勝に4度進出しながらも2回連続で最下位を経験し、最高位6位の彼らだからこそ敗者たちに寄り添えるのだ。ここでも、東京ホテイソンの「『M-1』前期の点数」という自嘲を、大悟が「なめるな、ワシらはもっと低い」「俺らスベって最下位、お前はウケての、今日の中ではの最下位やから」と笑い飛ばす。10組それぞれに見どころがあるが、この動画で特に観ておきたいのはアキナ。優勝候補と言われ、8番手という最高の順番で登場するも点数が伸びず8位に甘んじたふたり。点数発表の場、大反省会、そしてこの打ち上げと、決勝のあらゆるシーンを振り返っては「恥ずかしい」と繰り返す”恥ずかしい漫談”をたった数時間でめきめきと育てていった。湯水の如く湧きつづけるふたりの恥ずかしいポイントは圧巻。大悟が「恥ずかしいで飯食えるぞ」と言うのも納得できるおもしろさだ。
芸人たちのYouTubeで振り返る
コロナ禍も相まって、今年に入って急増した芸人たちのYouTubeチャンネルでも『M-1』振り返りがなされている。すでに「史上最高」と呼ばれた昨年の『M-1』の立役者のひと組であるかまいたちが1時間超え、武智が『M-1』を好き過ぎるあまり予選すべてを観たスーパーマラドーナが約40分の振り返り動画を公開。いずれもひと組ずつ、丁寧に考察がなされている。
また、東野幸治と和牛・川西賢志郎も、日本全国の地方の魅力を発信するYouTubeチャンネルで本題とは関係のない『M-1』の話をしていた。
さらに審査員を務めたナイツ塙は、自身のラジオ番組『ナイツ ザ・ラジオショー』で語るだけでは飽き足らず、個人チャンネルで2本にわたり『M-1』に関する動画をアップしていた。
ファイナリスト当事者も続々と戦いを終えての感想をアップしているが、オズワルドは翌日に仕事先の大阪から生配信を敢行。しかしホテルの電波が弱く、映像なしの音声のみで優勝できなかった悔しさを吐露していて、それはそれで心に響く。
激戦の敗者復活戦で戦っていたダイタクやランジャタイの配信も見応えがある。ダイタクは昨年敗者復活で一緒になったときのマヂカルラブリーの様子など、彼らだからこそ話せる情報を交えながら王者を讃えた。「マヂラブは漫才か論争」に関しての「漫才に決まってるじゃん。あれで笑い取るほうが難しいんだから」の言葉には実感がこもっている。ランジャタイは敗者復活戦のトリを務めたニッポンの社長のときに起こったハプニングについてたっぷり語っている。ハプニングは実際のネタ映像を観ればすぐわかることなのだけれど、ボケの国崎和也の口を通して語られるとおもしろさが何倍にもなる。
中でも印象的なのがダイアン津田篤宏。『M-1』当日、同時刻に『あつまれ どうぶつの森』の生配信を予告し、芸人の間でも「なぜこのタイミングで」と話題にのぼり、笑いを誘っていた津田。しかし蓋を開けてみれば『あつ森』をやりながらがっつり『M-1』を観て点数までつけ、エンディングでは涙目になりながら「俺ね、正直こんなにがっちり観ることなかった、ひとりで観れなかったんですよ」「こんなかたちでなかったらしんどくて観れんかった」とつぶやく。『M-1』のほうに夢中でもう操作を放棄され、画面に佇む『あつ森』のキャラクターが味わい深い。
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