ラジオ界を取り囲む状況も、リスナーの聴き方も、芸人とラジオの関係性も大きく変わった
本全体のコンセプトを決め、取材をする意味合いを捻り出し、最初から最後までの流れを決めるという作業は本当に楽しいし、それが“専門誌”に必要な要素だと勝手ながら信じている。
ただ単に人気のある番組の取材記事を並べるのではなく(そっちのほうが話題になって売れるときも多々あるから難しいけれども)、いろんな視点を提示しているのは自分なりに「ラジオの専門誌を作っている」というこだわりの表れだ。まあ、こういう屁理屈は読者に関係ないし、それこそまったく伝わっていない可能性も高いのだが……。
行き当たりばったりの制作過程で最も苦労するのは事前準備だ。ラジオに関するインタビューは聞き手の知識のなさがもろに文面から伝わってしまうだけに、取材が決まる前から過去の音声を聴き漁るのが恒例。編集者兼ライターという立場だけに、複数の番組を同時に下調べするのに四苦八苦し、まだ1文字も原稿は書いていないのにもかかわらず、取材を終えた際の安堵感は半端なかった。
だからこそ、自分がインタビュアーを務めない取材はご褒美になる。もちろん編集者として同席し内容を確認しつつ、時には口を出す必要はあるのだが、普段から慣れ親しんでいる番組のパーソナリティたちのインタビューは、言わば「自分だけが聴くことを許されるラジオの特番」。
特に巻末特別企画として実現した佐久間宣行×吉田豪のクロストークは、ラジオの本編にも負けない内容になったので、脳内でツッコミメールまで妄想してしまい、ニヤニヤを抑えるのに苦労した。これは完全に役得だ。
私が編集人となって『お笑いラジオの時間』というムック本を初めて出したのは2013年のこと。当時はradikoこそ始動していたが、エリアフリー機能もタイムフリー機能もなかった。あれから7年が過ぎ、ラジオ界を取り囲む状況も、リスナーの聴き方も、芸人とラジオの関係性も大きく変わり、隔世の感がある。今回の取材過程でもそれを強く感じた。
それでも変わらずに芸人ラジオはずっとおもしろい――。そんな番組を提供しつづけてくれるお笑い芸人と番組スタッフの方々に改めて敬意を表すとともに、時代の変化すらも笑いに変える芸人ラジオを満喫するための案内書として、本誌を手に取ってもらえたら幸いである。
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