初の著書『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』が現在5刷のロングセラーとなり、 テレビ、雑誌、SNSなどでも話題の「チェアリング」の開祖としても知られるスズキナオさん。「なんでもない日々を少しぐらいは楽しいものにする」アイデアを提案する、誰にもできる遅く起きた日曜日の楽しみ方。
新しいラーメン屋のラーメンは本当においしいし大好きだけど、「店の前を歩いたことは何度もあるけど今まで一度も入店したことのない中華料理店」にも、今日はなんとくなく入ってみる。
店に入って時間を過ごしラーメンをすすり、自分がずっと求めていたものに気づいた遅く起きた日曜日。
町中華のラーメンが、店の座席に身を置いて過ごす時間が好きだ
ラーメンを食べようと思って近所を歩いていた。最寄り駅前には去年できたばかりの新しいラーメン店があり、白湯(パイタン)系の凝ったスープがおいしくてたまに行くのだが、外から見るにどうやら満席のようだ。じゃあ今日は別の店で食べようか……とふらふら歩き、店の前を歩いたことは何度もあるけど今まで一度も入店したことのない中華料理店の前にやって来た。今日はなんだか「ここ!」という気がする。

カウンター6席ほどの小さな店だ。「ラーメンを……」と言いかけて奥を見やるとビールを飲んでいる先客の姿が目に入った。「あと瓶ビールもお願いします!」と注文完了。

昼下がりの穏やかな時間が流れる店内。静かで落ち着く。目の前の水槽を泳ぐメダカを眺めて過ごす。

しばらくして、カウンターの向こうからラーメン鉢がそーっとこちらへ差し出された。慎重に受け取る。わあ、これだ。

あっさりした鶏ガラスープにつるつるしたストレート麺。具材はもやしとネギとチャーシュー。こういうのが食べたかった自分に改めて気がつく。仕込みダレの味が沁み込んだチャーシュー、すごくおいしい。
店を出て、やっぱりこういう町の中華屋さんが好きだなと思った。味そのものもそうだけど、座席に身を置いて過ごす時間がそれに輪をかけて好きである。「しばらく行けてないお店も近所にたくさんあるし、今度直して巡りみよう」と思いながら店をあとにしたのだが、その機会は割とすぐに訪れた。
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