おぎやはぎのいない『メガネびいき』に出た話(森本晋太郎)
『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)で、前代未聞の緊急事態が起きた。
2020年8月27日(木)の放送。小木博明は療養中のため欠席し、トンツカタン森本晋太郎とchelmicoがゲスト出演することが発表されていた。しかし、矢作兼も体調不良により急遽お休みすることが当日に決定する。その結果、おぎやはぎの冠ラジオでありながら、おぎやはぎが不在のまま生放送が行われた。
学生時代から『メガネびいき』のヘビーリスナーでもあったトンツカタン森本が、その日の顛末を書き綴る。
人力舎に入り、すぐに懇願したこと
友達もほとんどおらず、ひと言もしゃべることなく講義だけ受けて家に帰る日もザラにあった大学時代。お昼ご飯を一緒に食べる人もいなかったので売店でコッペパンを買い、まるで次の予定があるかのようにいそいそと歩きながら食べていた暗黒の時代。そんな僕を支えてくれたのが深夜ラジオだった。
『おぎやはぎのメガネびいき』はほぼ毎週リアルタイムで聴いていた番組のひとつで、ラジオネーム「しまいにゃポコチン」としてネタを投稿したりもしていた。大好きな芸人さんが自分のメールで笑ってくれると、それだけで救われた気持ちになった。あまり満喫できていなかったキャンパスライフのことなんてどうでもよくなるほどに。
大学を卒業してそのまま人力舎の養成所に入学した。1年間いろんな挫折を経てなんとかトンツカタンとして事務所に所属することができ、さらにその1年後に担当のマネージャーがついた。待ってましたと言わんばかりに僕はすかさず「『メガネびいき』を見学させてほしい」と懇願し、ついにあのころ聴いていたラジオ番組を目の前で聴かせていただけることになった。
2時間かけて歩いて帰った夜
見学当日、喜びと緊張と恐れ多さが入り混じった未知の感情に支配されながら深夜のTBSへ向かった。ただでさえ行き慣れてないのに存在すら知らなかった夜間入口探しに苦戦しながらもなんとかラジオフロアに辿り着いた。そこで初めておぎやはぎさんにご挨拶をさせていただいた。見学させていただく旨を伝えると「見学すんの? 変わってんねー」と言われた。何気ないひと言だけど、とてもうれしかったのを覚えている。
そして迎えた本番。ブースの外から見る『メガネびいき』はあまりにも贅沢で、僕の背中は一瞬たりともイスの背もたれに触れることなく放送が終わった。いち“クソメン”が享受していいワクワクのキャパシティを遥かに超えていた。その幸せを噛み締めるように僕は2時間弱かけて歩いて家まで帰った。
それから6年の時が経ったある日、友人であるchelmicoの真海子から「今月末にうちら『メガネびいき』出るよ」という連絡が来た。てっきりchelmicoとしての告知かと思ったらどうやら「うちら」の中に森本も入っているらしい。その瞬間、大学時代からの思い出が一気にフラッシュバックして心臓がバックバクにフル稼働し始めた。
そこからの1カ月弱は常に頭の片隅に『メガネびいき』があった。楽しみであるのは間違いないのだが、とにかくヘマをしたくない、番組に迷惑をかけたくないという思いが強かった。なんならずっと黙ってればよけいなこと言わなくて済むから「答えは沈黙か……?」と、『HUNTER×HUNTER』のクラピカみたいなことを思ったりもした。
小木だけでなく、矢作も不在と知らされる
そんなソワソワを常に抱えた状態で迎えた8月27日。その日は午前中から夕方までお仕事をしたあと、仮眠を取るため一度家に帰った。部屋着に着替えてベッドで横になろうとしたくらいでマネージャーさんから「矢作さんが体調不良で『メガネびいき』をお休みします」というLINEが届いた。一度読んだだけではなかなか事実を受け入れてくれず、何回も読み返してようやく脳みそが観念してくれた。
「おぎやはぎさん不在の『メガネびいき』にchelmicoと僕が出演……?」
さっきまで眠りにつこうとしていたのがウソのように急上昇する心拍数。そりゃ眠れるわけなんかない。とにかく本番までにできることをしよう。全力で頭を回転させた結果、熱々のシャワーを浴びることしか思いつかなかった。これはもはや何も思いつかなかったと同義である。案の定どれだけお湯の温度を上げても不安と緊張は洗い流せなかった。刻一刻と過ぎていく時間。一向に治まらない緊張。さっぱりとした体。いてもたってもいられなくなった僕は早めにTBSへ向かうことにした。
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