原作動画へのリスペクトとオリジナル要素のミックス
原曲MVの世界観の中に自分自身を投影したキャラクターを登場させるなど、本家リスペクトとアレンジ要素をミックスしたスタイルが、「歌ってみた」イラストMVにおいて長年主流になっている。本家MVと全く異なる世界観で制作することはあまりない。
そもそも「歌ってみた」は、音楽の二次創作である。原曲のクレジットやURLの明記がマナーとされるなど、他ジャンルの二次創作同様に原作を尊重する姿勢が浸透している。音楽にせよ映像にせよ、あくまで原作をベースに「自分ならそこにどんな色を混ぜるか」を創意工夫するのが醍醐味なのだ。歌い手がイラストMVによってどんな表現をするかは、リスナーにとってももちろん楽しみのひとつとなっている。
パンダヒーロー/luz×nqrse×そらる×まふまふ【歌ってみた】
(イラスト:△○□× 動画:MONO-Devoid)
luz、nqrse、そらる、まふまふの4人がコラボした「パンダヒーロー」の歌ってみた動画。原曲はボーカロイド・GUMI(Megpoid)を用いて作られたもので、米津玄師がメジャーデビュー前にハチ名義で発表した楽曲だ。原曲MVもイラストで構成されている。発表から約10年の時を経て人気歌い手たちがコラボカバーをしたことで話題になった。
原曲MVのセピアな色使いを活かしつつ、歌い手4人のイラストが登場。彼らのアイメイクや小道具、衣装などに原曲アートワークの要素が散りばめられている。
【HoneyWorks】「可愛くなりたい」を歌ってみた♡-Arrange ver-【オリジナルPV】
(イラスト:ann、MINORI 動画:りんごあむ 手書き文字:ハルタ)
HoneyWorksが手がけた楽曲「可愛くなりたい」を、歌い手の利香がカバーした動画。原曲MVでは金髪ツインテールの女性キャラクター・成海聖奈が歌っているが、利香の「歌ってみた」動画では茶髪ショートヘアーのイラスト版利香が登場。演出や構成は原曲MVを踏襲している。
また、普段の利香による発信で見られる小ネタ(『スプラトゥーン』のぬいぐるみや、胸の大きさをからかわれて怒るシーンなど)も登場しており、それに気づいたリスナーからはコメントも書き込まれている。
若いリスナーに人気のマンガ風MV
イラストMVにおける表現方法の中には、マンガのような表現を用いたものもある。一番の利点は、「歌ってみた」を楽しみながらマンガの展開も別途楽しめることだ。映像として見応えがあるだけでなく、リスナーの視聴離脱防止にもつながる。
【オリジナルPV】 小さな恋のうた / MONGOL800(cover) by天月
(イラスト:みっ君 動画:ぽぷりか、まごつき、おはじき)
天月-あまつき-(以下、天月)が投稿したMONGOL800「小さな恋のうた」の歌ってみた動画では、セリフのように書かれた歌詞と共に表情豊かなイラストが次々に登場し、マンガを読むような感覚で視聴することができる。
天月は自身のオリジナル曲にもマンガMVを用いており、「かいしんのいちげき!」はマンガMVを原案にマンガアプリ『Palcy』でコミカライズされた。
【96猫&天月】お願いマッスル を歌ってみた
(イラスト:ユルサレン反省、尽 動画:あさこ)
実写では難しいコミカルな表現も可能になるのが、イラストMVの特長でもある。アニメ『ダンベル何キロ持てる?』のOPテーマ曲「お願いマッスル」を天月と96猫がコラボカバーした「歌ってみた」は、ふたりが筋トレに奮闘するシュールなマンガMVだ。
イラスト担当のひとりである尽はもともと、天月や96猫をはじめとする歌い手のファンアートを描いてツイッターに投稿していたいちファンであり、今回の動画で公式起用されたことはシンデレラストーリーとして話題となった。こうした起用やコラボによるドラマが生まれるのも、同人創作をルーツとする「歌ってみた」の世界の魅力と言えるだろう。
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