『モヤさま2』ショウ君の影響を受けたナレーション
と、こんな感じで目立つものからそうでないものまで番組は少なからず変化を遂げてきたわけだが、中でも大きく変わったのはナレーターである三四郎・相田周二の声のテンションではないだろうか。

板川「声がいい芸人さんって誰っすかね?」
福田「三四郎の相田さんじゃないですか?」
板川「あ、それいいっすね」
構成作家・福田卓也と僕の30秒ばかりのやりとりでキャスティングされた『勇者ああああ』のナレーター相田。番組が始まった当初は「人気が出なければ3カ月で打ち切り」なんていう噂もあって僕らも気合いを入れてナレーション録りに臨んでいたため、相田の声の調子もかなりハイトーンだった。もし初回放送の録画が自宅に残っている方がいたらぜひ見返してもらいたい。「番組MCは〜!アルコ&ピース〜!」とお昼の情報番組ばりに声を張っている相田の声を聴けるはずである。
ところが番組も軌道に乗り、継続が決まると僕と相田の緊張感も低下。その結果「そんなに気合いをいれなくてもいいんじゃないか」という僕らの空気感がそのまま投影された「無機質な声」ナレーションが完成した。僕自身が『モヤモヤさまぁ〜ず2』で編集の技術を学んだこともあり、そちらの番組のナレーターであるショウ君の声に聴きなじみがあったというのも大きく影響していると思う。
※ショウ君
あまりにリアルに日常会話や業界用語を操るので実際の人間が声を出していると勘違いされることもある『モヤモヤさまぁ〜ず2』のナレーター。その正体はHOYAというメーカーが開発した音声合成ソフトである
そして何よりこの「無機質な声」はナレーションで悪口を言うのにすごく適している。感情を込めて言われるとちょっと引いてしまう文言も、相田が読むことで不快な印象がかなり軽減されるのだ。たとえばこれまでに僕が書いた以下の出演者紹介ナレーションを相田の「無機質な声」で脳内再生してもらいたい。
嫁の乳を吸うサイコパス愛妻家(平子祐希)
友達は若手コント師ばかりのアラフィフアスリート(大林素子)
腐っても鯛、太ってもクイズ王(古川洋平)
いかがだろうか。普通だったら苦虫を噛み潰した顔になりそうな悪意にまみれた文章が、相田の声によってほどよいビターテイストに仕上がったのではないだろうか。ちなみに3年半の歴史の中で相田の笑いのツボに最もハマったナレーションは、明石家さんまに扮したものまね芸人・ほいけんたが『バイオハザード7』をプレイする企画「世界一豪華なゲーム実況」の中で放った
「さんまさんが所さんを世田谷ベースのガレージで轢き殺す会です、どうぞ」
という、話の前後を知らない人が聞いたら大激怒しそうな一文である。普段は顔色ひとつ変えずに淡々と原稿を読む相田もこのときばかりは崩れるように爆笑、笑いがやむまでナレーション録りが中断される事態となった。声のよさはもちろんだが、いい感じに性格が悪いところもまたこの番組にピッタリの人材と言っていいだろう。

毎回魅力的な声色で「悪口」を「笑い」に変えてくれるナレーター相田周二。彼こそが令和の時代になっても「人を傷つけるお笑い」をつづける、この番組の影の立役者なのである。
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#【連載】『勇者ああああ』芸人キャスティング会議
アルコ&ピース平子祐希が番組内で「むせかえるほど安いギャラ」と公言する、テレビ東京の低予算ゲームバラエティ『勇者ああああ』。
予算がなくたって、テレ東には「金がないなら企画を考える、有名人が出せないなら素人をおもしろく撮る」の伝統芸能がある。
この連載では、同番組の演出・プロデューサーを務める板川侑右氏が、過去に呼んだ芸人や今呼びたい芸人と、その理由などを明かす。
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