千鳥、霜降り、オードリー「深夜バラエティ番組」はみんなの「ホーム」だ

2020.3.24

オードリーが作る「ホーム」と、先輩たちが作る「ファーム」

4月から深夜に移動するバラエティ番組、ということで、本記事に含めたいのが『あちこちオードリー〜春日の店あいてますよ?〜』(テレビ東京)。深夜からゴールデンに昇格、という定番の流れに逆行する、土曜11時台から火曜25時台への移動である。舞台は春日俊彰が「大将」として切り盛りする料理店。店のカウンターで、常連客の若林正恭とゲストがトークをするという設定だ。

ゲストは芸人をはじめバラエティで活躍する芸能人が中心。カウンターという物理的距離の近さ、若林の絶妙なリードによる心理的距離の近さによって、ゲストは普段表に出さない悩みや、打ち明け話、プロとしての心がけなど本音をさらけ出してしまう。銀シャリ&Creepy Nutsはバラエティ現場の異常さをぶちまけ、伊集院光&柴田英嗣はアンタッチャブル復活の裏側を明かし、ベッキー&又吉直樹はテレビで本音を言う難しさを語り合った。テレビでありながら、ラジオのような密室感。放送時間を聞いて「土曜の11時なの!?」と驚くゲストも相次いでいたので、深夜帯への移動は納得である。

『オードリーとオールナイトニッポン 死んでもやめんじゃねーぞ編』
『オードリーとオールナイトニッポン 死んでもやめんじゃねーぞ編』

前述のアルコ&ピースとオードリー若林が出演しているつながりで、『しくじり学園 お笑い研究部』(AbemaTV)も紹介しておきたい。テレビ朝日で放送中の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』のスピンオフであり、平成ノブシコブシ吉村崇、ハライチ澤部佑と共に、若手芸人たちの悩みを解決していくネット限定番組。

食レポや情報番組での振る舞いといった実践的なレッスンもさることながら、コンビに深く切り込む回も印象深い。地上波でも放送された「インディアンスのきむを考える」では、自分に自信を持てずにいたツッコミのきむ(木村亮介)が、アルピー平子祐希らのアドバイスに感銘し号泣。「できない自分が悔しい」と漏らした本音に、相方の田淵章裕もももらい泣きしてしまった。吉村は言う、「初めて出したな感情を! 俺はうれしいよ!」と。若林は言う、「芸人がY字路で迷って、しばらく足踏みしてもいいじゃないか!」と。

冠番組を持つ芸人たちは自分たちの「ホーム」を、若手芸人たちは先輩たちによる「ファーム」を、それぞれ心の拠りどころにして大海に漕ぎ出す。今回挙げた番組はすべてTVerなどでネット配信されているので、ゴールデン帯のバラエティでは見られない姿を目に焼き付けてほしい。


▶︎【総力特集】アフターコロナ
『QJWeb』では、カルチャーのためにできることを考え、取材をし、必要な情報を伝えるため、「アフターコロナ:新型コロナウイルス感染拡大以降の世界を生きる」という特集を組み、関連記事を公開しています。

この記事の画像(全2枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

井上マサキ

Written by

井上マサキ

(いのうえ・まさき)1975年宮城県生まれ。ライター、路線図マニア。大学卒業後、システムエンジニアとして15年勤務し、2015年よりライターに転身。共著に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本』(..

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。