今の時代に「時代劇」が持つ無限の可能性について

2020.3.23

文=西森路代 編集=鈴木 梢


『鬼滅の刃』や『刀剣乱舞』など、剣劇が出てくるエンタメ作品が注目を集めている。BSプレミアムでは人情時代劇×妖怪ファンタジー×バディードラマとうたわれる『大江戸もののけ物語』が始まるなど、新しい時代劇の形が徐々に見えてきている。

ライター西森路代の連載「ドラマの奥底」。今回は、これからの時代劇の可能性について具体的な作品たちを例に挙げながら考えていく。

今こそ時代劇が求められているのではないか

3月20日にNHKで『スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディー〜』が再放送された。この作品は、最初に放送されたのが2019年の3月23日で、ほぼ1年前のドラマである。

「最新鋭の撮影機材を使って、最高にかっこいいチャンバラ時代劇を作る、それが僕の夢だった」と語る若きテレビ局の技術者が、ひと癖もふた癖もある俳優やスタッフたちと時代劇作りをする様子が描かれている。その技術者を演じているのは、昨今、話題に上ることの多くなった柄本佑である。

最新鋭の機材とは、ドローンやワイヤーアクションカメラ、スーパースロー撮影のできるハイスピードカメラなど。こうした機材と時代劇は、このドラマの放送時には結びつかないものと思われていたが、今になって考えると、むしろぴったりとハマるものなのかもしれない。そんな風に、時代劇の新たな可能性について考えさせられるきっかけとなったのがこの『スローな武士にしてくれ』であった。

最近、私は雑誌『GALAC』の「時代劇は死なない」という特集の鼎談企画に呼ばれた。この特集のトップには『スローな武士にしてくれ』作・演出の源孝志氏の寄稿文も掲載されていて、非常に読み応えのあるものになっている。

本当のことを言うと、私は時代劇を熱心に観てきたとは言い難く、この企画に参加していいのかと戸惑った。しかし、私と、てれびのスキマこと戸部田誠さんと編集者の藤岡美玲さんの3人の役割としては、「特撮や2.5次元、アニメ、映画などのジャンルから、時代劇にどんな可能性があるかを語る」というものであったので安心して受けることができた。

実際に鼎談をしてみると、今こそ時代劇が求められているのではないかと思えてきた。たとえば、最近アニメやマンガでも剣劇は人気である。累計発行部数2500万部を誇る大ヒット作『鬼滅の刃』も剣劇である。ほかのジャンルでも、2.5次元舞台で主軸のひとつとなっている『刀剣乱舞』もミュージカル、舞台ともに殺陣が見どころであるし、特撮でも『侍戦隊シンケンジャー』(テレビ朝日)などには剣が出てくる。時代劇ではないが、『HiGH&LOW』シリーズ(日本テレビ)にだって刀を使ったアクションは出てくるし、今年は『るろうに剣心』の映画最新作2作品の公開もある。 それに伴って、若手俳優にも殺陣を経験した人が多い。また、「女性はアクションを好まないのではないか」という制作側の懸念もあると聞くが、アクションはダンスを観るような高揚感があり、むしろもっとアクションを観たいという層も存在しているのではないか。

これからの時代劇の可能性

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西森路代

(にしもり・みちよ)1972年、愛媛県生まれ。ライター。大学卒業後、地元テレビ局に勤務の後、30歳で上京。派遣社員、編集プロダクション勤務、ラジオディレクターを経てフリーランスに。香港、台湾、韓国と日本のエンターテイメントについて、女性の消費活動について主に執筆している。

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