ノスタルジーはスーパーの2階にある(パリッコ)

2020.3.20

日常の中にまだこんな冒険が残っていたなんて!

前回に続き、我が街石神井公園のスーパーを舞台に見ていってみよう。真っ先に思いつく2階のあるスーパーといえば、「ライフ」だ。北口にある大型店で、1階の売り場と同じ広さの2階フロアが存在する。日用品や調理器具、医薬品なども扱う、なかなか気合いの入った2階だ。

エレベーターで登ってゆくと、すぐにお決まりの婦人服コーナー。要するに、街でオーソドックスなおばさまたちが着ている「ああいう服ってどこで売ってるんだろう?」と疑問を抱くタイプの服が、ずらりと並んでいる。頭上には「ミセスコーナー」の表示。あぁ、なんたるノスタルジー。

つづいて、昔、土日にお父さんが家で着ていたような真っ白いVネックTシャツがこれでもかと並ぶ。その先に靴のコーナー。意外にもシンプルなデザインのスリッポンシューズが1590円と手頃に売られており、これは普通に買いたい感じ。が、僕が興味を惹かれたのはその横に並ぶ、いわゆる「便所サンダル」だった。何年か前からベンサンが妙に気になり、サンダル業界で評価の高い「ギョサン」の茶色を愛用している。が、数年使っていたらさすがに経年劣化しはじめ、どうしようかなぁと思っていたところだった。かかと部分に「Color Step」と書かれたいかにもなデザインのベンサンを手に取ってみる。こういうサンダルって素材がカチカチで、すぐに靴擦れができてしまいそうなイメージがあったけど、こいつは柔軟性があり、足にしっかりとフィットしてくれそうだ。ソールも厚く、かなり高品質なものに感じる。しかも破格の598円。近所で履くにはバッチリなんじゃないかと、購入を決意。そこでふと思う。「冒険してみるか……」と。僕は、いわゆるベンサンカラーである茶色の横の、ビビッドな緑のほうを手にとり、レジカウンターへと向かった。

懐かしさの中に冒険心を感じるデザイン

地元のローカルスーパー「まなマート」に2階はないけれど、すぐ横に別館である「2号館」があり、これもスーパーの2階の変則形といえるんじゃないだろうか。よく考えると僕は、毎日のようにまなマートに寄りつつ、この2号館には足を踏み入れたことがない。それに気づいたときには、日常の中にまだこんな冒険が残っていたなんて! と大興奮した。いざ、まなマート2号館へ。

街から姿を消しているトイレットペーパーが!?

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パリッコ

1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、ほか。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』『酒場っ子』『ほろ酔い!物産館ツアーズ』、スズキナオ氏との共著に『“よむ”お酒』『酒の..

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