自分の心を守るための「スルー」TBSアナウンサー田村真子が綴る若手時代【明日の朝はどんな朝?】

田村真子アナウンサー連載第一回

文・撮影=田村真子 編集=山本大樹


TBS『ラヴィット!』でおなじみの田村真子アナウンサーが日々の悩みや心の動きを徒然なるままに語るエッセイ連載、スタートです! 大好評だった「『ラヴィット!』日誌」からおよそ2年、田村アナが『Quick Japan』に帰ってきました。入社7年目、中堅会社員として大奮闘する田村アナの日常をお届けします!

アナウンサーは1秒たりとも気が抜けない!

親友の結婚式で久しぶりの振袖!

なんと再び連載を持たせてもらえることになりました! 以前の「『ラヴィット!』日誌」とは違うかたちということで、どんなことをここで話そうかと考えていました。

アナウンサーとしてメディアを通して人前で言葉を紡ぐ仕事をしてきましたが、本音をいうと私は自分のことを話すのが苦手です。そもそも私の話にみんな興味があるのか、聞いている人にどう思われるかが怖い、注目されることに「ビビる」タイプなのです。昔からフリートークも苦手だし、インスタですら気軽に投稿できません。友達同士の中ではずっと話しているタイプなんですけどね(笑)。なので今回こうして多くの人が見てくださる場を持たせてもらうことも私にとってはかなりのチャレンジです! 変に切り取られて炎上したらどうしようとか、さっそく不安がよぎっていますががんばりますのでお付き合いください!

初めての上高地!

そもそもこんな性格なのによくこの仕事に就いたな、と思われる方もいるでしょう。本当にそうですよね。アナウンサーは担当する仕事によってかなり求められることが変わります。報道や情報番組は、記者の人たちが集めた情報を自分の言葉や原稿読みで視聴者の方に届けることがメインです。バラエティやラジオの場合は情報を伝えることもありますが、それ以外にも自分の個性を出すことが求められます。『ラヴィット!』は後者ですね。

就活時に私が思い描いていたのはひとつ目のアナウンサー像で、「基本的に個性を出す必要はない」と思っていたわけです。本配属されてからは情報・報道番組でニュース読みを中心に3年ほど仕事をさせてもらいました。

みなさんもアナウンサーがニュースを伝える姿を見たことがあると思いますが、ニュースを扱うってとても緊張感のある仕事なんです。原稿に書かれていることを正しく時間内に伝える、一見シンプルなことですがすごく神経を使います。さらにこれに加えて緊急で速報が入ることもあるので我々は常に身構えています。特に報道フロア担当はシフトの時間はお昼ご飯を食べていても、何かが起こればすぐにカメラの前に走らなければなりません!

心に沁みた、赤荻アナの優しさ

会議ブースで合唱の練習

私はニュースの担当を2年目からやっていたのですが、そこでの2年間がアナウンサーとしての自分をグッと成長させたタイミングだと今では思います。社会人の先輩方も、振り返ればあのときに鍛えられたなーという期間があるのではないでしょうか? 

過去というのは思い返すと不思議と美化され笑い話に昇華できたりするものですが、冷静に考えてみると、あのころはあのころで違う悩みを抱えていました。生放送でカメラの前に立つという基本的なことにも慣れないまま、ニュースを伝えることに必死。もちろん失敗もします。単純な読み間違いもあれば、自分でも気づかないミスをしていて驚くことも。先輩からの振りにうまく答えられなかったり、うまくプレゼンできなかったり。朝の番組を終えた帰り道、泣きながら帰ることもしばしば……ご存じの方もいるとおり涙もろいので(笑)。

ある日の昼ニュース終わり、研修からお世話になっていたある先輩に「読み方に癖が出ている、自分が楽な読み方をしているから内容が全然伝えられていない、今のままではダメだ」という指導をいただいたことがありました。

まだ時間内に間違えず原稿を読むことに必死だった私は、たしかにそこまでの余裕が自分になかったこと、そして数週間後に夜の報道番組を担当することも決まっていたためよけいに焦ってしまい……大泣きしながら報道フロアに帰ったんです。すれ違う人もびっくり、その日たまたま一緒にニュースを担当していた赤荻歩アナは、そんな私を見て焦ったことでしょう。赤荻アナは優しいので一緒にどうすればいい読みになるのか考えてくださったのを覚えています(その節は本当にお世話になりました、驚かせてすみませんでした)。

おかげさまで私は無事午後のニュースも読み終えることができました。そのときは苦しかったですが、この先輩からの指摘があったからこそ成長できて今の自分につながったのだと確信しています。

帰宅後、『APEX』に没頭した日々

「田村菅原クイズ」でのライブ風の田村

もちろん、『ラヴィット!』が始まってからも毎日鍛えられております! 同じ職種ですがまたガラッと環境が変わって、まるで別会社(番組)の新入社員になったとでもいいましょうか。私は『ラヴィット!』が始まったころ、帰宅すると大してうまくもない『APEX』というゲームを無我夢中でやっていました。今になって考えると、仕事から頭を切り替えるためにゲームの世界に没頭してたのでしょうね(笑)。毎日笑顔で楽しくやっているつもりでも、無意識のうちにストレスを感じ頭や体は疲れてしまったりするものです。社会人1年目のときは、みなさんもそうじゃありませんか? 

新番組やプロジェクトを作り上げていく過程というのは、大変だけど貴重でワクワクする経験でもあります。でもそのぶんまわりからいろいろなことを言われたり、自分も迷ったり、さまざまなことに神経を使うものです。おそらく『ラヴィット!』の人たちはいろいろ言われ慣れていますし、私もその一員です(笑)。

特にどの世界も、若いうちはまわりからいろんなことを言ってもらったりしますよね。その意見に謙虚に耳を傾けることは間違いなく大切です。そこには成長するためのヒントがちりばめられています。大泣きしたときに言ってもらったことはあのときの自分に必要な言葉でした。

ですが「ん? これは……正しいのだろうか……」とか「なんだかすごく心がしんどくなってしまうな」というものはありがたく受け取ってからスルーするということも必要です。たとえばこれは若手アナウンサーが言われがちなことですが、「あざといキャラでやったほうがいい」とか「ヘアスタイルを変えたほうがいい」などなど。よかれと思って言ってくださっているのでしょうが、これは技術的なこととは違い個人の自由が効く部分です。でも若いうちは全部真正面から受け取って悩んでしまいます。よく考えれば、もっとがんばるべきことはほかにあるのに! 

だから精神衛生のためにもたくさんいただく意見の中から、正しいものを自分で取捨選択できればずいぶんと心が楽だっただろうなと今は思います。自分の心を守れるスキルを身につけてこそ、さらに日々成長する準備が整うのではないかなと。

おすすめは散歩と睡眠!

かくいう私もいまだにすごく考え込んだり落ち込むタイプなので日々の失敗でダメージを喰らっています。生放送中は「切り替え命!!! 今は忘れろ!」と頭で唱えて仕事をしています。読み間違えたり、進行が飛んだり、歌がうまく歌えないのもものすごいダメージです。でもこれを引きずるとまたミスをしてしまいます。丸一日落ち込むと夜もよく眠れなくて集中力が落ちてしまい次の日のパフォーマンスも落ちてしまいます。死ぬほど落ち込んでも次の朝はやってきますからね。

反省はもちろん大事ですが、長時間引きずると本当にいいことがないんですよね。こんなときにおすすめなのが「お散歩」です。リズムよく歩くことで幸せホルモンのセロトニンが活性化するんだとか、モヤモヤした気持ちも晴れるので落ち込んだときに最適です!

もうひとつは「睡眠の質を上げる」こと、朝が早くなってからの私は睡眠の質オタクです。ヘッドマッサージ、ストレッチ、首のうしろを温める、ホットアイマスク、深呼吸などなどいろんなことを駆使して快適な睡眠を追い求めています。いい睡眠は頭をスッキリ切り替えてくれます。すべては次の日の2時間に全力投球するため(笑)! みなさんもおすすめがあれば教えてください。  

豪華絢爛サムギョプサルランチ

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田村真子

(たむら・まこ)TBSアナウンサー。1996年生まれ、三重県出身。2021年より『ラヴィット!』MCを務める。趣味は博物館、美術館に行くこと。

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