福井俊太郎(GAG)連載「指が輝いてる人はピザ食べた人」第11回【代々木×麺恋処いそじ×人生で大切にするべき基準が見えた幼き夕方】

文・撮影=福井俊太郎(GAG) 編集=福田 駿


福井俊太郎(GAG)による連載「指が輝いてる人はピザ食べた人」。総武線沿線の旨いグルメを、福井お得意の“決めつけ”を挟み込みながら紹介していく決めつけグルメ連載だ。巨大駅・新宿をひと駅進んだ代々木駅に降り立つと、そこにはノスタルジックな情景が込み上げてくるらしい。「夕焼け小焼け」で思い出す、福井の上京直後と幼少期の思い出を。

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家系ラーメン初体験の夜

どうもぉ私にとっての代々木は、、子供の頃に聞いた17時に鳴る「夕焼け小焼け」のチャイム、、と同じイメージなんですよね、、理由はシンプルで、、仕事終わりに総武線に乗って一緒に帰っている仲良い芸人さんが次の新宿で降りてしまうので高円寺に家を構えていた自分としては、、嗚呼もっと一緒に喋っていたいのに「次は代々木〜代々木〜」のアナウンスが聞こえると、、もうすぐ友達とサヨナラをしないといけない、、名残惜しいぃ、、となるからです、、

ただ良い事もあって、、代々木から新宿までは2分で着くので、、2分以内で終わらせるエピソードトークには強くなりますね、、舞台ではあまり時間を気にせずに喋っている舞台芸人にも、、代々木〜新宿間だけはテレビの生放送並みのシビアなトークが求められますからね、、いつかこのスキルが生きる事を願ってます、、

それでは、、恒例の、、OPV(オープニングVTR)の代わりとなるOGP(オープニンググルメピクチャー)を、、矢野顕子さんの「ラーメンたべたい」が流れているイメージでどうぞ!

♪ラーメンたべたい ひとりでたべたい 熱いのたべたい♪

極楽汁麺らすた さん

家系ラーメンのインスパイア系と呼ばれている「らすた」さん、、いいお店構えですよね、、私は今回の訪問がとてもエモかったです、、理由は、、10年前、、私が大阪から上京した直後、、まだ住む家も決まってなく、、友達の芸人さんの家を転々としていた頃がありまして、、

その時に、、大阪NSC27期の同期、、ボーイ(現在は足を洗ってます)、、というピン芸人が、、笑い飯の哲夫さんが借りられている代々木のマンションに管理人みたいな形で住まわせてもらっていて、、そのボーイ氏が何の権限があっての事かわからないのですが「じゃあ哲夫さんの家来る?」と優しさと狂気の入り混じった越権行為発言をしてくれて(もちろん哲夫さんには後で話を通してくれました)彼の親切心によって1週間ほど泊めて頂く事になったんですよね、、

その初日の夜にボーイ氏から「家系どう?」と言われたのですが、、私はその言葉の意味が全くわからなくて「え?イエスアイドゥ?」と聞き返したのが懐かしいです、、何故なら、、当時は関西地方に家系ラーメンというジャンルが市民権を得てなくて、、その存在すら知らなかったんですよね、、「そのラーメンはどんな味なの?」と聞くと、、ボーイ氏は「とにかく濃ゆくて旨いで」と、、男が片目をつむりながら親指を立てるしかない説明を頂き、、人生初の家系ラーメンと向かい合ったのが、、らすた、、さんでした、、

ミニラーメン

10年前の私は緊張しながら、、レンゲを手に取り、、ズズズッとスープを飲み、、そして、、箸で麺を持ち上げ、、ズルズルッとススる、、感想は、、

あっ!これ旨過ぎてあかんやつやぁぁぁぁ(低くねっとりした声で)

強い意志を持たないとこの甘じょっぱ旨さに依存してまうやつやぁぁぁ(低くねっとりした声で)

え?え?ちょっと待ってぇ?ボーイの野郎ぅぅ海苔を濃ゆいスープにつけてぇその海苔を白ご飯に巻いてぇトロンとした目で食べてやがるぅぅ(低くねっとりした声で)

何やその露天風呂に入りながらおちょこで日本酒をやってる不届き者がするトロンとした目はぁぁ(低くねっとりした声で)

その日、、初めて、、東京に飲み込まれた人間を見ました、、あの食べ方の表現としては、、白ご飯を【巻き】でやってる、、が妥当だと思います、、彼はそのうち海苔を一度ライターで軽く焼いて【炙り】でやってた可能性すらありますね、、東京の怖さを教えてくれた家系ラーメン、、そしてあれから10年が経ち、、新生GAGのリスタートはやはり、、らすた、、さんからでしょう、、さぁまたやるぞぉ

♪ラーメンたべたい うまいのたべたい 今すぐたべたい♪

その中華そばを例えるなら……

代々木、、私にとっては、、家系ラーメンを教えてくれた街であり、、印象の良い街です、、何故なら、、東京の芸人さん、、LLR福田(恵悟)さんに「住むならどこがいいですかね?」と聞いたら「ちょっと家賃は高いけど代々木は良い街だよ」と教えてもらったからです、、初めて見た物を親だと思うひよこの習性と同じで、、初めて質問した「住むならどこがいいのか?」の答え「代々木は良い街だよ」はいまだに10年前から脳裏に深く刺さってます、、後、、それを教えてもらったのがLLRの福田さんというのも大きかったですね、、

LLR福田さん

この写真を見てもらえれば一目瞭然だと思いますが、、福田さんこそが、、THE東京芸人、、関西芸人が想像する東京芸人を具現化した存在、、なんですよね、、少しイジらせてもらって申し訳ないですが、、まず東京以外の芸人さんは福田さんの髪型をできません、、

もっと細かく説明すると、、自分であそこまで格好良くセットできません、、昔から福田さんの髪の毛のセットは芸人界で群を抜いてスタイリッシュですからね、、

すいません、、冗談はさておき、、私が福田さんを慕わせてもらっている点が二つあって、、一つ目は、、東京へ来て全く結果が出ずお笑いを諦めようとしていた頃にめちゃくちゃ止めてくれた、、そこまで関係性のない後輩に貴重な時間を使ってくださった事は一生忘れません、、

二つ目は、、お笑いに熱く愛がある、、宵越しの金は持たず、、酒もガバガバ朝まで飲み、、ギャンブルに明け暮れていて、、仲間や友情にも熱い、、なのにスタイリッシュ、、という、、相反する魅力を同時に持ち併されているところなんですよね、、目を瞑ってて氷を肌に押しつけられた感覚みたいな芸人さん、、冷たいはずなのに「熱っ」って言っちゃう不思議な感覚、、「泥臭さ」と「スタイリッシュ」の配合が絶妙、、

まさに「動物系の出汁」と「魚介系の出汁」を繊細なバランスで掛け合わせている、、代々木の名店【麺恋処いそじ】さんの、、中華そば、、のような、、(すいません、、今回、、芸人さんの話をしながら気づいたらグルメの紹介にすり替わっている、、芸人スライドグルメ、、という手法を使ってみました)

麺恋処いそじ さん

めちゃくちゃ旨かったぁぁぁ(低くねっとりした声で)

スープが旨すぎて口の中が旨味でコーティングされるからお水を飲むのも勿体無いと思わされるぅぅぅ(低くねっとりした声で)

自分はラーメンの素人だから逆に思い切った評価させてもらうんですがぁラーメンを創られるセンスが良いんだと思うぅぅ努力だけでは辿り着けない才能という材料も必要になってくる味なはずぅぅ(低くねっとりした声で)

このラーメンを食べると、、いわゆる、、才能やセンス、、という概念に対しての苦い記憶、、、、私が、、小学生の頃にぶち当たった壁を思い出しました、、

センスと才能の思い出〜あの日も夕焼け小焼けが聞こえた〜

あれは、、少年野球をやっていた当時、、福井少年は、、走るのも速く、、力も強く、、運動神経が良かったんですよね(今は見る影もないですが)、、にもかかわらず、、福井少年がボールを投げると、、そのボールに絶対、、カーブがかかっちゃうんですね、、野球に詳しくない方にもう少しわかりやすく説明すると、、真っ直ぐの軌道の球をキャッチボール相手に投げ返したいのに、、福井少年が投げると、、その球は美しくない回転と共に相手の手前で失速して曲がってしまうんですね、、

一方で、、足も遅く、、力も強くない、、運動神経もそこまで優れていないチームメイトが投げたボールは、、すごく綺麗な回転で、、真っ直ぐ伸びるような軌道で相手の胸に届くんですよね、、で、、監督が、、「ナイスボールッ!!いい回転しとるなぁ!!センスが溢れとる!!」と褒めるんですよ、、でも福井少年が投げると、、監督は「よっしゃ!次行こうっ!声出していこう!」と前向き風味な言葉で濁すんですね、、そのリアクションの違いにハッキリと気づいた帰り道、、家の前の公園でブランコに乗りながら、、

福井少年の心の声「人ってセンスがある人間に惹かれる生き物なんだな。」

セミ「ジージジジジジ」

福井少年の心の声「並みの運動神経なんて才能やセンスの前では霞んじゃう。」

セミ「ジージジジジジ」

福井少年の心の声「でも野球がどうしてあんまり楽しくないのかわかったよ。僕にセンスがないからだ。うん。僕の人生は自分にどんなセンスがあるのか探す旅なのかもしれない。」

セミ「ジージジジジジ(すいません、アブラゼミが多い地区だったので鳴き声が全部アブラゼミで)」

福井少年の心の声「それかセンスがなくてもその競技をとても好きだって強い気持ちが持てるものを探そう。」

町内会から流れる放送「(夕焼け小焼け)タータタタ タタタタ タタタタタタ」

福井少年の心の声「よし!か〜え〜ろっ!」

と、、人生で大切にするべき基準が見えた幼き日、、福井少年には投げれなかった美しい回転のボールを、、麺恋処いそじさんのラーメンと重ね合わせました、、あれから30年経ち、、夕焼け小焼けのチャイムで代々木回の伏線回収(?)に成功してる事を福井少年に伝えてあげたいです、、最後になりましたが、、麺恋処いそじ、、さんの真横にお店を構えられている、、代々木parabola、、さんも才能とセンスに溢れていたので、、激旨ランチをご紹介させてください、、

代々木parabolaさん
特製ポークジンジャーのライスプレート
自家製ミートソースのラザニア

センスゥゥゥ(低くねっとりした声で)

【連載】福井俊太郎(GAG)記事一覧

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福井俊太郎(GAG)

(ふくい・しゅんたろう)お笑いトリオ・GAGのネタ作り担当。『キングオブコント』では過去4度決勝進出を果たす。2023年から「福井俊太郎(GAG)プロジェクト」始動。GAG活動は「GAG福井」、個人としての脚本・執筆活動などは「福井俊太郎(GAG)」として活動する。低くねっとりとしたボイスが持ち味。

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