「納言・薄幸の煙たい記憶」。
この連載は、愛煙家である幸さんに人生の起点となった一服を綴っていただく“煙草回想録”です。
今月の記憶は、“ファンから貰った初めての煙草”のお話。
10代の女の子から大量の……
コロナが流行る前はライブの出待ちが出来たから、ファンの方と直接触れ合う事が出来た。
そこでは、沢山の差し入れを頂いた。
貰える物はほぼほぼ何でも嬉しいのだが、中には驚く物もある。
3年位前の事。
ライブが終わり会場を出ると、10代の若い女の子が出待ちをしてくれていた。
まだまだあどけなさが残る、黒髪ショートカットのその子は
「みゆきさんのファンです! 応援してます!」
そう言って、薄いビニール袋に入った物を渡してくれた。
少し顔を赤らめて、それはそれは照れ臭そうに。
なんて可愛いらしい子だろう。
中身の見えないその差し入れは、厚さ的に多分手紙なのだろう。
そんな事を思いながら、その場では確認せず鞄にしまい、打ち上げに参加した。
軽く酒を飲んだ後帰宅した私は、その子から貰った差し入れを思い出した。
鞄から袋を取り出し、中身を取り出す。
中から出てきた物は、まあまあな枚数の、タトゥーシールだった。
しかも、色とりどりのハートや蝶々とかそういう可愛い系の奴じゃなくて、黒一色のドクロやサソリとか、そっちのおぞましい系のタトゥーシールがたっぷり入っていた。
「いや、何でだよ!」
プライベートの自宅で一人。
そこそこデカい声で自然とツッコんでしまったのをよく覚えている。
可愛いあの子は、私の事をどう思ってたんだろ。
差し入れをタトゥーシールに決めた経緯が知りたい。
“納言のみゆきさん、何が欲しいかな? 私未成年だから、煙草は買えない、お酒も買えないとなると、そう!! タトゥーシールだ!!”
ってなる訳あるかい。
残念ながらタトゥーシールは、煙草と酒に匹敵しない。
こんだけ文句垂れた後に言うのもお恥ずかしいのですが、興味本位でその日、腕と手の甲、2箇所にシールを貼りました。
意外と落ちないもんだから、結構焦りました。
あの時の可愛い子ちゃん、ありがとうね。
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