「納言・薄幸の煙たい記憶」。
この連載は、愛煙家である幸さんに人生の起点となった一服を綴っていただく“煙草回想録”です。
今月の記憶は、納言として立った初舞台後の一服。
すぐに解散するつもりで“納言”結成
相方の安部(紀克)は、本当に何もしない。
ネタは100%書かないし、アンケートも必要最低限の事しか書かない。
芸人の中でもトップクラスで頑張らない。
周りからは“じゃない方”やら“ポンコツ”やら、そんな風に言われる事もあるけど、それは違う。
彼自身が、僕は何もしないぞ!と決断して、ああなったのだ。
3年程前だっただろうか。
当時ルームシェアしていた私の家で、コンビでの飲酒ロケがあった。
お酒も入っていた事もあり、私はどうしてそんなにお笑いを頑張らないのか?何が楽しくてお笑いやってんのか?
という、1ミリも愛とデリカシーの無い質問を安部に投げかけた。
すると安部は、飄々とした表情で
「コンビ組みたての時は頑張ろうとしてたんですけど、気付いたんですよねー。僕は何も出来ないんです。だから、もうツッコミとかお笑いとか頑張らないって決めました。それからですかねー、楽でしょうがない!」
そう答えた。
あの時の安部、かっこよかった。
自ら頑張らない、何もしないという決断をしたのだ。
そんな人に、何で頑張らないんだ!だなんて、目くじらを立てて説教するのはお門違い。
人の決断に反論するのは間違っている。
彼はこれからも一生、絶対に頑張らない。
今後ともどうか期待しないでやって欲しい。
でも本人も自覚している通り、コンビ組みたての時は確かに安部は頑張っていた。
そもそもコンビを組まないかと誘ってきたのは向こうからだ。
安部から
「コンビを組みませんか?」
そう誘われた私は、当時ピンで活動していた。
安部は芸人としてもそうだし、人としても、尊敬出来る所がこれっぽっちも無い。
笑っちゃう位尊敬出来ない。
人として魅力がない。
惹かれるポイントが見つからない。
私は尊敬出来る箇所が無い人間とは、コンビを組みたく無いのだ。
安部みたいな奴と一緒に居たら、私も人間として成長出来ない。
まだまだ書けるけど、安部がこれを見てショックで死んでしまったら迷惑なので、悪口はこの辺にしておこう。
とにかく、こいつとコンビを組むのは勘弁だ。
そう思った私は
「ごめん!今はまだピンでやりたいかな」
なるべく傷つけない様に断った。
「分かりましたー」
そう返事をした安部はその日の深夜、私とコンビを組んだていの漫才を、大量にラインで送ってきやがった。
安部のセリフはA。
本名が小泉の私のセリフは、Kで送ってきやがった。
ローマ字で書くな、気色悪い。
“あ”と“こ”で良いだろうが。
昼間の
「分かりましたー」
は何だったんだよ。
何も分かってねえじゃねえか。
断られた事にも気が付かない、そんな話の通じない相手だ。
もう一回断ったら殺されるんじゃないか?
そんな恐怖を感じた私は、すぐに解散するつもりで納言を結成した。
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