伊集院光が岡村隆史と深いラジオ論「スターに努力されちゃたまんねえよ!」(おかべろ)

岡村隆史

トップ画像=岡村隆史インタビューより

文=てれびのスキマ 編集=高橋千里


テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『おかべろ』(5月27日放送)

ゲストは伊集院光。

橋本アナが「テレビにずっと出ているなんでも屋さん」と彼のイメージを表現するように、特に関西ではその経歴が浸透していないということで、落語家からラジオのパーソナリティになった経緯、「伊集院光」命名の理由、師匠にバレたときの話、大師匠が激怒した際にかばってくれた話、「芳賀ゆい」の話など、「そもそも何者?」というトークに。

そんななかで、現在の事務所へ所属した経緯の詳細が興味深かった。

落語を廃業し、個人事務所を立ち上げた伊集院。あるとき、フジ系のイベントとしてラーメンフェアが開催された。タレントのオリジナルレシピのラーメンを、開会式で発表してほしいというオファーが来たという。

そのとき提示されたギャラが2万円。それを断ると、翌日には4万円、さらに8万円にまでギャラが上がったそう。

それでも断ると今度は、世話になっていたラジオのディレクターから説得され、了承。その際「お金に不満があったわけじゃないから、もとのギャラでいい」と言うも、8万円で通したから8万円でということになったそう。

しかし、翌月、ギャラが振り込まれると、その額300万円。つまりラーメンが出品されている40日間すべてにギャラが入った。

伊集院は、図らずも「80万(2万×40日)をごねて300万にした人」になってしまい、「お金の勘定を自分でしているとどうかなってしまう」と怖くなって事務所に所属したという。

伊集院同様、長らくラジオのパーソナリティを務める岡村が「ネタ帳はあるか」と聞くと、伊集院はペライチの紙にだいたいのメモをして本番に臨むと答える。だが、それをまったく使わないときが絶好調だと。

「今日しゃべることが全然なくて、散歩に行って、もしここにミートボールでも落ちていたら、なんで落ちてるんだってしゃべれるのに、ミートボールも落ちてないんだよ」という話を1時間できたときに、「俺は食っていけると思った」と伊集院は語る。

岡村が「ラジオのためにネタを作りに行くのは見透かされる」と言うと、伊集院「賛成!」。

そして「絶対に話したかった」こととして、岡村がちゃんとハガキにきちんと目を通して、どう読もうということをやっているのを称讃。

スターや売れっ子は(ハガキを)その場で渡されて読むのでいいのに、岡村のように「忙しくてやっている人はあんまり見たことない」と。

「同じラジオでも、この手間をかけるとかけないとでは違うラジオになると思ってる」と言う伊集院は、自分がほかの人に勝てるのは“丁寧にハガキを選んで準備すること”だと思っていると語った上で、「スターに努力されちゃたまんねえよ!(笑)」。

認め合ったふたりだからこその深い話の数々に聞き入った。

『ベスコングルメ』(5月28日放送)

伊集院光と王林をゲストに迎え、伊集院の師匠・円楽が愛したヒレステーキを目指して歩く。王林にとって伊集院のイメージは「頭のいい司会できる人」。

春日は伊集院のラジオのリスナーで、憧れの存在。それゆえ、『あちこちオードリー』では緊張してほとんどしゃべれなかったが、今回はひとりでホスト、かつ円楽ゆかりの場所を巡るということもあり、落語家時代の話を中心にかなり深い話まで引き出していた。

「怖かったときは怖かった。細かい事情は言えませんけど、博多の空港で引きずり回されたこともありますから」と語る。

その上で「苦労は芸の肥やしっていうだろ。でもな、肥やしあげ過ぎた植木って、腐ったり曲がったりする。たまに休めよって言ってくれたりする。うちの師匠は優しかったですね」としみじみと話しながらグッときている姿に、師匠への深い愛情を感じた。

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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2023年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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