年明け早々、“配信ライブシーン”とでも言うべきものを揺るがした『ダイヤモンドno寄席』(1月3日開催)と『ケビンスno寄席』(1月7日開催)。主催であるダイヤモンドとケビンスはかねてより、打つライブ打つライブ高い評価を得る2組だ。∞レギュラーの中でも抜きん出た「企画力」「動員力」の背景には、明確な目的意識が潜んでいる──。
※この記事は『芸人雑誌volume9』(2023年3月24日より順次発売)掲載のインタビューを転載したものです。
これは偶然ではない──混沌の裏に仕組まれた戦略
──この2組といえばまずは『no寄席』です。今年『ダイヤモンドno寄席』が約1万2,900枚、『ケビンスno寄席』が配信チケット約4,100枚と、∞ホール開催『no寄席』の中で堂々の1位2位に。
全員 (拍手)
──出演者が重なっているというのもありますが、どこか似た匂いを感じました。
小野竜輔(以下、小野) 僕は『ケビンスno寄席』は観れてないんですけど、とんでもない数の芸人が出たって噂だけは聞いてます。
山口コンボイ(以下、コンボイ) 架空のコンビ名が出て、それに合ったものを身にまとってとりあえず舞台に出ていくみたいな企画でした!
小野 出ていくのは誰でも良かったの?
仁木恭平(以下、仁木) そうですね。あの時期、毎日寄席ばっかりやってて同じことの繰り返しみたいな感覚になっちゃってたんで、芸人みんなが脳みそフル回転させるような企画にしたかったんです。同時に、裏側の映像を流すことで即興感を強調して、ダメでもウケるガワにすることは意識しました。
野澤輸出(以下、野澤) ストイックだなぁ。
小野 いや、すごいよ。来年はケビンスも1万枚いくんじゃない?
──『ダイヤモンドno寄席』は去年は野澤さんが骨折で休演していたのが、今年はフルメンバーでの開催で。
野澤 怖かったですね。去年のを観たときに、僕がやりたかったことが僕がいない状態で完成してると思ったんですよ。そこに自分が入って、去年を超えられるんだろうかって。結果的に、売上では超えられたんですけど……。
小野 どっちがカオスだったかっていったら去年なんですよね。
野澤 それは正直ある。
小野 今年はオチきっかけをつくったり2部構成にしたり、ガワをちゃんと考えたから。
──コンボイさんは『ダイヤモンドno寄席』にも出演してましたね。
コンボイ はい! 帰ろうとしてたら真空ジェシカの川北(茂澄)さんに「出なよ」って呼び止められて出ました!
小野 それで主催の俺らの許可とらずに勝手に出たんだよな。あれは正直許してない。
仁木 泥棒だなぁ。
コンボイ 泥棒じゃないって! いろんな人に確認しましたよ、僕!
小野 でも僕らは聞かれてないから。
コンボイ うわそうでしたっけ!? ごめんなさい!
──『no寄席』に限らず、2組の主催ライブはやりたいことが明確に存在する感じが共通項なのかな、と。
野澤 ケビンスのライブに出させてもらうと、企画も面白いししっかり考えてるなって思う。
コンボイ ありがとうございます!
仁木 コンボイは考えてないでしょ。
コンボイ いや、たしかに俺は打ち合わせには呼ばれてないけど。
小野 呼ぶと変な感じになっちゃうからな。やってるライブの感じとか雰囲気は似てると思います。2組とも外との交流があるし、ネタの系統は全然違うけどいろんな要素が少しずつ似てる。
──どちらのライブも吉本以外の方が多く出てるのは特徴的ですね。
仁木 ∞ホールでライブを主催できるってなったときから、出演者の半分くらいを他事務所にするのは決めてました。ママタルトとかカナメストーンさんとか、ライブシーンで人気の人たちに出てもらうことで、その人たちを「面白い」と思ってるお客さんに知られたくて。
小野 俺、初めて仁木くんと飲んだときにそういう話になって、考え方がめっちゃ似てるなって思った。主催ライブを満席にできたら会社の見る目が変わるわけじゃん。じゃあそのためにどうしたらいいか考えると、お客さんを呼べる人をゲストにするのはズルでもなんでもないんだよね。それで埋まるなら。でもやらないヤツが多すぎる。ユースカップも今は決勝以外はお客さん投票なんだから、勝ちたかったらお客さん呼べばいいのに。
仁木 そうなんですよね。僕らがユースカップに出るようになったときに審査員じゃなくて客票システムになったんですよ。だから応援されるような動き方は意識してました。どんなにファンでも来れる機会は限られるから、ただ毎日ライブの告知をするんじゃなくて「勝ちたいんでこのライブに来てください」ってちゃんと伝えるようにしたり。
野澤 僕はバトル嫌いだけど、やっぱ勝つための努力はしたほうがいいと思う。自分たちのお笑いを貫いて負け続けても意味ないんですよね。面白いのにもったいない人が多すぎる。「チケット売れてません」とかも言うのやめたほうがいいと思うんだよな。面白くなさそうじゃん、そんなライブ。
仁木 あれはマジで言わないほうがいいですよね!
小野 結局、興行ですからね。お客さんありきでやってるのに、お客さんがついてないことをわざわざ見せる必要がない。(コンボイに)ごめんね、難しい話しちゃって。
コンボイ 大丈夫です! ついていけてます! たしかにマイナス発言は意味ないですよね!
仁木 『ダイヤモンドno寄席』も『ケビンスno寄席』も、そういう意味でお客さん目線に立ちつつその想像を超えることができてるんじゃないかと思います。
小野 求めて来てくれてるお客さんをどう裏切れるかとか、そういうことを考えてるかどうかだよね。
──もうひとつ、2組のライブに共通するキーマンとして作家の河谷忍さんの存在があると思います。
小野 それは一個ありますね。河谷さんと一緒にやってきて、ガワの固め方の大事さがよくわかりました。芸人や作家は中身をどう面白くするかだけ考えがちですけど、フライヤーのデザインとか演出、オープニング映像だけでこんなに変わるんだって教えてもらった。
仁木 「良い」と思ってるところ、大事にしてる部分が同じなのはでかいですね。
コンボイ あと、これ意外と大事だと思うんですけど、河谷さんは打ち合わせでもめっちゃ笑ってくれるんですよね!
仁木 ほかの社員さんはコンボイに笑ってくれないんだ?
コンボイ 笑ってくれるわ! けど河谷さんは人一倍笑ってくれます! 芸人が相当好きなんだなって思います!
野澤 ライブ後のダイジェストの切り抜きとかも河谷くんはずば抜けてうまいよね。
小野 ただ切り抜くだけじゃなくて演出を加えてくれたりね。そういう作り込みはちゃんとチケットの伸びにつながるから。お客さんをどう喜ばせるか考えてる人やなと思います。
──そういう部分で共鳴してるんですね。
仁木 主催でスベろうもんなら自分の責任ですからね。ちゃんとやりたいですよ。
野澤 責任感も変わるよね。
──その感覚は誰もが持ってるわけではないんですか?
野澤 持ってないんじゃないですか? 言われたから好きなメンバー呼んでやってるだけのもありますよ、たぶん。
小野 それも悪くはないと思うんですけど、良いものつくりたければちゃんとやらないと。
仁木 自分のやりたいライブを、しかもホールで打てるんだから「ラッキー」くらいに思いますよね。
小野 好きなことできる!ってなるよね。……コンボイ、大丈夫?
仁木 今日あんまりしゃべってないよ?
コンボイ いやいや! 邪魔しない程度に相槌打ってましたよ!
野澤 「うん」じゃ載らないだろ(笑)。
──そうですね……では最後にコンボイさんに質問です。同じ∞ホールレギュラーとしてダイヤモンドさんと肩を並べて活動するようになったことで、先輩ふたりの見え方が変わった部分はありますか?
コンボイ うわー、いい質問ですね!
野澤 池上さん?
コンボイ ちょっと待ってくださいね……今も昔もまず、めちゃくちゃいい先輩です!
仁木 それだけ!? もったいな!
コンボイ 今になって思うのは……
小野 思うの?
コンボイ やっぱりいい先輩だなぁと思います。
仁木 ヤバい(笑)。
コンボイ いや、これめっちゃ気持ち良い答えがあるはずなんですよ……ちょっと待ってくださいね……あ!
小野 お、なんかありそうだぞ。
コンボイ 仁木くんが僕のことでなにか困ってるときに「コンボイってこういうところあるから」みたいにプレゼンしてくれるのは、野澤さんや小野さんとか、昔からの先輩なんですよ。そういうふうに導いてくれた。だから、すごくいい先輩です!
野澤 結論「良い先輩」だった。
小野 なんかなぁ……。
仁木 苦手だなぁ、会話。
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『芸人雑誌volume9』では今最もホットな劇場ヨシモト∞ホールを取り上げる。中面ではレギュラーメンバー全25組の撮り下ろし写真&インタビュー、ほか表紙を飾るそれぞれ2組のクロストーク、さらにはダンビラムーチョが語る『2022年「M-1」敗者復活戦』やコットンと劇場支配人との対談を収録。ケビンス・山口コンボイの知られざる楽屋ルーティーンやシシガシラ・脇田浩幸の私服も激写。賞レースファイナリストやテレビ・YouTubeでの人気者が多数在籍し、お笑いシーンを牽引するヨシモト∞ホールを総覧できる一冊となっている。
定価:1,650円(本体1,500円+税)
発売:2023年3月22日より順次発売
ページ数:96ページ
判型:B5
※表紙は3バージョン用意(中面は全て同じものとなります)
※限定版(A・B)は丸善ジュンク堂書店、honto、よしもとエンタメショップにて限定販売
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