<18歳成人>奥森皐月、高校3年の当事者が考える「私はもう一人前の“おとな”か?」

2022.8.26

文=奥森皐月 編集=田島太陽


民法が改正され、2022年4月1日から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた。今年の5月で18歳になった、お笑いとラジオを偏愛するタレント・女優の奥森皐月が、当事者の目線で“おとな”になったことで変わったこと・変わらないことを綴る。

成人とはいったいなんなのだろう?調べてみたら…

奥森皐月
奥森皐月

成人年齢が18歳に引き下げられて4カ月が経った。私は現在高校3年生だが、誕生日が5月なので「成人した高校生」としてしばらく生活をしている。これを読んでいるあなたもきっと、成人年齢が18歳になった日本という国で暮らしている。

さて、どうだろう。何か変わっただろうか。正直「18歳成人」による影響は今のところない。当事者の私が断言する。ただ、18歳になってから変わったことはある。ここが複雑なのだ。

たとえば、深夜に外出をしても条例違反にならなかったり、夜間にカラオケや映画館やネットカフェで過ごしてもよかったり、選挙権をゲットできたり。これらはすべて18歳になるとできることだが、成人することとは関係していない。運転免許の学科試験のような紛らわしさだ。

「18歳でできることである」はマルになるが、「成人してできることである」だとバツ。ちなみに私は18歳になって教習所に通い始めた。これも成人したこととは関係がないのでバツである。

では成人とはいったいなんなのだろうか。今一度考えてみると、実に曖昧なものだと感じる。成人証明書をもらえるわけでも、成人ピンバッチをつけるわけでも、成人マイクロチップが埋め込まれるわけでもない。ただ18歳の誕生日を迎えるだけでなれる。お菓子売り場で寝転がって駄々をこねていても、四六時中おすなばで遊んでいても、ハイハインばかり食べていても、18歳であれば成人だ。

成人という言葉自体を調べたところ、「心身が発達して一人前になった人、おとな」が本来の意味らしい。果たして18歳は一人前の「おとな」なのだろうか。これまでの成人年齢である20歳は当てはまるのだろうか。

いまだに夜ごはんの前にたべっ子どうぶつでお腹をいっぱいにしてしまう私にはわからない。成人して生活したここ最近の日々を振り返っても、自分が「おとな」になったかどうかなんてさっぱりわからない。

18歳から「契約」できるが、クレカはほぼ「高校生不可」

今年の4月の民法改正よりも前に、ニュースや学校でよく「18歳成人」という言葉を聞いた。では実際に何が変わったのか。まずは「18歳からひとりで有効な契約をすることができる」ということが挙げられる。

親の同意を得ることなく賃貸契約をしたり、クレジットカードを作成したり、携帯電話を購入したりできるそうだ。進学を機にひとり暮らしを始める人などにとっては、契約が自由にできるのは便利だろう。

ただ、クレジットカードに関しては18歳から契約ができても、多くのカード会社は高校生不可なのでややこしい。高校生には「一括で」という大人のセリフを言うことは禁じられているということだ。悔しい。

自由に契約できる反面、未成年のうちは保護者の同意のない契約は取り消すことができた。しかし今はそれができなくなった。よって18〜19歳の消費者被害が多発する可能性があるといわれているらしい。

悪徳業者増加の懸念もあり、新成人が狙われやすいそうだ。もしそのような事態に陥ったとしても責任は自分で背負わねばならない。自由に責任が伴うという大切なことを知る機会を与えられたのであろうか。大人の世界は甘くないぞというメッセージだろうか。スピードワゴン井戸田さんだって「あまくなーい!」と言うかもしれない。

被害につながる意識と自覚

この危機と隣り合わせの状況を、この4月から成人した人やこれから成人する若者はきちんと理解できていないのではないかと憂いてしまう。確かに学校で契約の重要性などを学ぶ授業は受けた。しかし、自分が今にもその被害を受ける可能性があるという自覚はとても薄い。あくまでも学校の「勉強」の一部でしかないため、他人事のように感じてしまうと思う。

私自身も、特別な契約をしなければ困ることはないだろうとどこか軽視している部分があった。「契約」という言葉の響きはどうもなじみがなく、自分には関係のないことと思えてしまう。契約と聞いて真っ先に浮かぶのは悪魔との契約くらい。寿命と引き換えに何かを得る機会はなかなかないと思う。

ただ、いろいろと調べていると危険性が少しずつわかってきた。特にエステなどの美容関連や化粧品などの定期購入が怖い。脱毛、美容、コスメ、スキンケアなど若い世代で興味がある人は多いだろう。近年は美容整形も身近になり、手軽に受けられるようになった。ネットで検索をすればいくらでも情報は出てくるし、できることなら安くサービスを受けたいと思う。そこを狙った詐欺があれば、引っかかってしまうかもしれない。
そう考えていた矢先、YouTubeで「新成人のあなた、おめでとうございます! 新成人だけの特別価格の脱毛のお知らせです」という映像が流れた。いわゆるターゲティング広告であろうが、もしこのサービスが悪徳なものであったらと考えると恐ろしい。誰もが目にする広告だろうと油断は禁物。すべてが詐欺だとは思わないが、警戒心とかウェットティッシュとかメカに強い友達とかは持っていて損はないだろう。

18歳成人で「変わったこと」「変わらないこと」

この記事の画像(全4枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。