BiSHリンリンが見つけた自分の在り方「演じているのが楽しい」
2021年12月24日に開催した、中野heavy sick ZEROでの緊急ライブ『THiS is FOR BiSH』で2023年をもっての解散を発表したBiSH。2022年1月からは「12ヶ月連続リリース」をスタートし、8月は第8弾シングル『サヨナラサラバ』をリリースする。
彼女たちが表紙を飾った『クイック・ジャパン』vol.144(2019年6月発売)では、それぞれ単独インタビューの中で解散やBiSHの未来について語っていた。そこで「BiSHラストイヤー記念」として、6カ月連続でこの単独インタビューを掲載。
2018年の「Amazon Fashion Week」ではNEGLECT ADULT PATiENTSのモデルとしてランウェイを歩くなど、モデル活動にも興味が出てきたというリンリン。BiSHのライブではシャウトをするなど物怖じしない彼女は「BiSHでは見世物でいい」と語る。そんなリンリンの現在の心境とは?
撮ってほしいと思えるように
──リンリンさんは渡辺淳之介さんのブランドNEGLECT ADULT PATiENTSのモデルとして「Amazon Fashion Week」のランウェイを歩くなど、ファッション関係の仕事にも意識的なのかなと思うんですけど、実際のところはどう思っているんでしょう。
リンリン ファッションは今一番やりたいことですね。もともと服は好きだったんですけど、最近服飾関係の友達が増えて。スタイリストさんとか、映像関係の人とか、写真の人とか、美容師さんとか。一緒に観るものとかも最近変わってきて、自分もファッション系のことをやりたいと思うようになったんです。
──モデルとして見られることは好き?
リンリン 前まではそうでもなかったんですけど、今年に入ってから楽しくなりました。ずっと姿勢が悪かったので猫背バンドを最近はじめたり、綺麗に見えるように意識しはじめたら、ファンの人が撮ってくれるライブ写真の見栄えも変わって。むしろ撮ってほしいと思えるようになってきたんです。
──BiSHの活動をはじめたときはそんなことはなかった?
リンリン 自信もないし、カメラを向けられてもどういうポーズをとったらいいとか、どういうカットがいいとか何もわかっていなかったので、ずっと同じ表情でした(笑)。ショーで綺麗なメイクをしてもらうなかで、こういう顔も作れるんだと思って。楽しくなって自分でもメイク道具を集めるようになりました。
──私服もおしゃれですけど、自分で選んでるんですか?
リンリン 買った服をスタイリストのアシスタントの人とかに見せて、合わせ方を考えてもらったり教えてもらいながらいろいろしていますね。
大きな会場で見世物になる方が好き
──もともとはダイブをしたいという気持ちからBiSHを受けてライブをはじめたわけですけど、現在はどういう気持ちでライブには臨んでいますか?
リンリン 歌詞に共感してくれるファンが多いので、曲を聴いてお客さんが受け取るであろう歌詞の感情みたいなものを表情で表して歌っています。
──以前は大きな会場でやることが楽しいと言っていましたよね。去年、幕張メッセで1万7000人を動員するなど規模は大きくなっていますけど、気持ちは変わらないですか。
リンリン 大きいほうがいいです。見世物にされるほうが好きなので。
──リンリンさんが見世物になるということ?
リンリン はい。ちゃんと大きい画面があって、照明もいろいろ当たって、そういうほうが好き。
──それだけ多くの人に見られると、伝えたいことがまっすぐ伝わらずに誤解される可能性もありますけど、それは気にならない?
リンリン ならないです。歌詞を書いても自分の書いたとおりに伝わることはほぼないし、いろいろな解釈をされていいと思うので。その人のいいように読み取ってくれたらって思います。
──3rdアルバム『CARROTS and STiCKS』には実験的な曲も数多く収録されています。リンリンさんはシャウトのイメージが強いですけど、今作はどのような部分で力を入れていますか。
リンリン 『CARROTS』と『STiCKS』はすごく好きなんです。叫んでいると言っても「遂に死」とか「FREEZE DRY THE PAST」とか、ライブでやったら意外と叫んでいなくて。アイナ象の振りもあるので、1個の作品みたいな感じでメンバーで作っています。
──ちなみに、今はどんな音楽を好んで聴いているんですか?
リンリン 洋楽ばかり聴いていますね。家ではエリカ・バドゥのPVとか流れています。流しっぱなしにしているので、どれが何の曲とかわかってないときもあるんですけど、いろいろ流して聴いています。
──BiSHに入ったときに比べて、だいぶ聴く音楽も変わったんですね。
リンリン そうですね。
──BiSHの活動とともに、学業の両立もあったじゃないですか? 学校という場所から、なにか考え方だったり変化はありますか。
リンリン 結構変わったと思います。いいものを作ろうって、ちゃんと一個一個考えるようになったというか。
──学校に行きながらBiSHをやっているときはしんどかった?
リンリン 今考えたらしんどかったんですけど、やっている最中は全然普通でした。BiSHに入ったときから学校に行っていたので。逆に今は、みんな忙しいって言っているけど、私にとってはゆっくりすぎるくらい。
──学業も両立したいということも、BiSHの活動初期から言っていましたよね。それも将来の安心材料につながるからということなんでしょうか。
リンリン そうですね。親も学校だけは卒業してくれって言ってたし。私がめっちゃすごい実力があったら別かもしれないですけど、中途半端に学校に行くのは嫌だったので、学校にはちゃんと行こうと思って。
──BiSHは今、4年3カ月くらい活動をしてきていますが、この先一生続くかどうかは誰にもわからないことだと思います。リンリンさんは、BiSHは長く続いてほしい気持ちはありますか。
リンリン 結婚していいなら、ずっと続けたいですね。私は今洋服のお仕事をしたいんですけど、たとえばアユニがPEDROでバンドを好きになってめっちゃ楽しんでいたり、それぞれのやりたいことがちゃんと仕事として続けられるようになったらいいなと思います。
──結婚していいならBiSHを続けていいというのは、ほかのメンバーとは違う意見で興味深いですね。
リンリン 結婚したら、より夢にまっすぐに突き進める気がするんですよね。だから、リンリンというものを、作品として好きになってくれたらうれしいですね。
いつかファッションの世界で作品を作りたい
──リンリンさんはBiSHでリンリンを演じているような部分はありますか?
リンリン 最初はめっちゃ演じていましたね。前髪もぱっつんだったし、当時は人形っぽい人間になりたかったので、あまり笑わなかったり。歯も出さなかったりしていたんですけど、今はほぼ素です。トーク以外は楽屋とかでもめっちゃ素だし。ふざけているときが一番素かもしれないです。
──どうしてそういう変化があったんでしょうね。
リンリン なんでだろう? ずっと表情が無だったので、私が笑うとうれしいみたいなファンの人も増えて。安心するって言われたのかな。それで、笑っていたほうがいいんだと思って、もうちょっと人間っぽくなろうと思って無でいることを辞めました。でも一度人間っぽくなろうと思ってしんどい日は一切笑わないとか、不機嫌になるとか、泣き出すとか、良くない方向の素にいってしまって。その後、そうじゃないと思って楽しむようになりましたね。
──極端な時期があったんですね(笑)。そんなBiSHの活動の中で、自分がすごく大切にしているものってなんでしょう。一番自分が出るものというか。
リンリン うーん。自分を出しているのかわからない。ライブでも1曲1曲に別人格みたいな感じでやっちゃうので。演じているのが楽しいんです。アイナ象がつけてくれる振り付けは、私のやりたいようにやらせてくれることも多いので。
──リンリンさん自身が世の中に発信したいことだったり、伝わってほしいんだみたいなものってなんなんでしょう。
リンリン それはあまりないかもしれない。BiSHのライブでは曲によって違う人物になりたいので。自分が思ったその曲の雰囲気に合わせてやるだけというか。
──何かになりきるとか、演じることに関心が強いんですね。
リンリン そうですね。
──たとえば、チッチさんは音楽でダサいことはしたくない。アイナさんは唯一無二の存在になりたい。リンリンさんは自分の中でテーマみたいなのがありますか。
リンリン なんでしょう。唯一無二ってどういう意味ですか?
──その人だけ、みたいな。
リンリン そういう存在になれたらいいですね。モデルとして背も大きくないんですけど、私がそういう常識とかを変えられたらいいなって思います。
──やっぱりリンリンさんは今ファッションをしたいんですね。
リンリン 服がやりたいです。写真を撮られるものがやりたい。いろいろなメイクをされて、いろいろな自分を見てみたいんです。モデルもやって、BiSHもやって、今の若い世代のおしゃれな人たちにもウケたらいいなって思います。いつか自分の近くにいるファッション関係の友達と一緒に作品を作りたいって思いますね。
『クイック・ジャパン』vol.144には、まだまだ撮りおろし写真を掲載。さらにほかの5人のインタビューだけでなく、松隈ケンタによる『CARROTS and STiCKS』制作秘話も。購入はこちらから。
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