BiSHセントチヒロ・チッチが語る自身の成長「嫌われてもいいと思えるようになった」

2022.4.19
セントチヒロ・チッチ

文=西澤裕郎 撮影=オノツトム


2021年12月24日に開催した、中野heavy sick ZEROでの緊急ライブ『THiS is FOR BiSH』で2023年をもっての解散を発表したBiSH。2022年1月からは「12ヶ月連続リリース」をスタートし、4月は第4弾シングル『ごめんね』をリリースする。

彼女たちが表紙を飾った『クイック・ジャパン』vol.144(2019年6月発売)では、それぞれ単独インタビューの中で解散やBiSHの未来について語っていた。そこで「BiSHラストイヤー記念」として、6カ月連続でこの単独インタビューを掲載。

今回は、BiSHの中で最もロックミュージックを愛する、セントチヒロ・チッチ。「誰よりもBiSHに厳しかった」と振り返る彼女だが、人を理解しようとする心が芽生えてきたらしい。きっかけは音楽で出会った大人たち。今だから伝えられる、BiSHへの気持ちと自分の気持ちを聞くと、チッチは次の熱いステージへと上ったようだった。


自分で音楽をやるのが第一

セントチヒロ・チッチ

──チッチさんのソロ活動と言えば、キュレーターを務めるライブイベント『THAT is YOUTH!!!!FES』ですね。BiSH、eastern youth、GEZAN、リーガルリリーの4組がZepp Tokyoに集結するという、開催1回目にしてすごいメンツが揃いました。

セントチヒロ・チッチ(以下、チッチ) 私だったらすぐに飛びつく対バンなんですけど、イベントむずっ!って思いました。BiSHのお客さんはバンド好きな人も多いけど、そういう人が圧倒的多数ではなくて。BiSHの出演時間は短いし、今回はいいかなと思っている人も多いみたいで。

──この4組がZeppに集結するなんて、チッチさんじゃなきゃ実現しなかったと思うんですよ。

チッチ かなり奇跡的な日だと思うんですけどね。1回目の開催だし大切にしたくて。絶対自分が出てほしいと思う3組に、自分で手紙を書いたり、電話をしたり、直接会いに行ってお話をしたり、いろいろ頑張りました。

──『Quick Japan 創刊25周年LIVE』でのサンボマスターとの2マンを見たんですけど、バンドがBiSHと対バンをすると、普段とは違う部分が刺激されて、とんでもないライブをすることが多いですよね。

チッチ BiSHが楽器を持っていないからこそ、相手からしたらどう臨んでいけばいいか難しいだろうし、考えて臨んでくれているのかなって。それはBiSHも同じで、どう自分たちがこの形で戦っていくかみたいなところは、常に悩みながら挑んでいます。

──『THAT is YOUTH!!!!FES』でのBiSHのライブは、自分でブッキングしているぶん、いつも以上に気合が入るんじゃないですか。

チッチ BiSHって6人いるから音楽の趣味も本当にバラバラで。アユニとはよく音楽の話をするんですけど、普段はメンバーとそういう話をあまりしないんです。だから「チッチのイベントだから、チッチ頑張ってね」という気持ちになっていないか不安というか。そうではなくて、私はBiSHで戦っていきたいから。

──メンバー間の意識の部分で、もどかしさを感じることもある、と。

チッチ もどかしいし、思ったようなライブができずに悔しかったときは怒っちゃったりもして。自分がセトリを組んだ日はライブ前に必ず伝えるんですよ。こういう思いで、こうやっていきたいセットリストだからって。私は、ダサいと思われるのが一番イヤで。アイツらヤバかったなと思われるようなライブとか、歌とか、パフォーマンスとか言葉を残したいんです。

──チッチさんは自ら歌を歌えるし、プロデューサーだったり、イベント主催者だったり、音楽に関する仕事でいろいろ選択肢があると思うんですね。その中で一番やりたいことって何なんでしょう。

チッチ あくまで自分で歌ったり音楽をやりたい。それは絶対的な根本にあります。それがはじまりで音楽を好きになっているので、プロデューサーになりたいとかまったく思ったことはないです。人の生きる糧になるために音楽を伝えたいと思っている。自分のために自分の好きな音楽をやるのが根っこにあって、それが誰かのために繋がると私は思っているから。絶対に自分で音楽をやるということが第一ですね。

何があっても音楽は続けたい

セントチヒロ・チッチ

──BiSHの活動をしていて、不安を感じることはありますか?

チッチ 不安だらけですけど、前ほど重くは悩まなくなりました。嫌われてもいいと思って生きられるようになったんです。もちろん、フェスや先輩バンドに対バンで呼んでもらったとき、その瞬間はうれしいけど、5秒後にはどうしようって気持ちになることが多くて。

ここでダサいことをしたら、BiSHはそういうものだと見られちゃうかもしれない。私たちがいいライブができていたと思っていたとしても、相手からしたらそんなもんなんだと思われたらどうしようとかめっちゃ考えちゃいます。
BiSHって超スーパー才能集団じゃないんです。努力に加えて、奇跡みたいなことが重なって今のBiSHがある。だからこそ、これからどういう風になっていくのかは不安です。ただメンバー間の不安はあまりなくなりましたけどね。前はすごい不安だったけど。

──何が不安だったんですか?

チッチ 全然フリを覚えてきていないとか、歌も上手くならなかったり、声が出なくなっていったりってときがあって。毎日何しているんだろう?とか思ったり。私は性格が悪いので(笑)。真剣すぎてそういう風に思っちゃうときがあったんですけど、最近は一人ひとりが真剣に向き合っているなと思うし、メンバーから学ぶことも多いです。

──そう思えるきっかけがあったんでしょうか?

チッチ 4年間の日々の中で、私も寛大な大人になってこれたからかな(笑)。

──相手を許せるようになってきたのかもしれないですね。

チッチ かもしれない。私もメンバーに慣れたし、メンバーも私に慣れたというか。みんながそれぞれ調和していった感じがします。

──チッチさんは、BiSHを長く続くグループにしたいという想いはありますか。

チッチ 「楽器を持たないパンクバンド」として選んだのであれば、続けていくことが道なのかなと思っていて。それこそ怒髪天のように、ずっと続けている人はたくさんいるから。でも、この前ある先輩に「長く続けたいの?」って言われて「続けたいです」って答えたら、「いいけどさ、お前ら、おばさんになって踊られても嫌なんだけど」って言われて。そのとき初めてたしかに!と思って。長く続けたいって言い続けてきたけど、相手からしたら、おばさんが踊っているのは見苦しいのかと思って、初めてグサっときました(笑)。

ただ、これからBiSHがどういう形になっていくかはBiSHにもわからなくて。あっちゃんは(ザ・)ドリフターズみたいになりたいって言ってるし。BiSHの未来がまったく見えないけど、私は続けたい気持ちはずっとあります。

もちろん6人が6人そうではないかもしれないし、もしかしたらBiSHがどこかのタイミングでバラバラになる可能性もある。それでも、私は音楽を続けたいです。

──チッチさんにとって、BiSHがなくなること、売れなくなることの怖さはありますか?

チッチ 今はBiSHを好きでライブに来てくれる人がたくさんいるからこそ、できることもたくさんあるんです。だけど、私は好きな音楽ができたらいいなという想いが一番にあるから、絶対に売れたいという部分が一番ではない。怖いってことはあまり思わないです。でも、知ってほしいとか、売れたいという気持ちがないと絶対にダメだなと思う。今は松隈さんのサウンドでBiSHは走っているけど、自分がやるってなったら、その気持ちは持ちながら好きなことをやりたい。人生いつ終わるかわからないし。


いつか子どももほしい

BiSH

──チッチさんの中には音楽が中心にあって、ダサいことはしたくない、かっこよくありたいという哲学があるんだと強く伝わってきました。

チッチ やりたいことをやっていきたいし、生半可なことをして後悔をしたくないんです。メンバーにもそういう思いでいてほしい。ただ、私は決めつけることを辞めたんです。どうせこうでしょ?とか。あの人が考えていることややっていることをすぐに理解できなくても、その人にはその人の思想があるんだろうし、理解しようと思うようになった。なので、私にとっての哲学は今、結構変わってきています。

──最近心がけるようになったことはあるのでしょうか。

チッチ ずっと考えることです。考えて考えて自分の正解を導き出すというか。自分のイエスを見つけることを目標に生きています。普段意識しないと、考えることってあまりしないじゃないですか? 

だから、時間ができたらいっぱい考えて、1対1で話したい人と会って、その人の考えを聞いたりするのが楽しいんです。

──自分に嘘のないような生き方をすること、本当に自分がやりたいことをやることが、見てくれる人に一番伝わると思ってBiSHの活動をしているんですね。

チッチ やりたいことをやって、それに共感してくれたり、好きだなと思ってくれている人が、今私を応援してくれている人たちなのかなと思うんです。私のやっていることが誰かの生きる糧になったり、日々の吐き出し口でもいいしオアシスでもいいし、活力になっていたらいいなと思います。例えば、明日が来るのが怖い人がBiSHの曲を聴いて、明日も頑張ってみようって思えるような存在になっているのであれば、それは成功というか。寄り添えていたらいいなって。自分が音楽に救われてきたから。それが一番理想かな。

──最後に、BiSHでの活動をしながら、プライベートで家族を作って、子どもと一緒に過ごしたいみたいな考えはありますか。

チッチ まったく具体的には考えていないんですけど、私は子どもが大好きで、特典会とかに子ども連れの家族の方が来ると抱きついちゃうんです。モモコにも「出た、子どもキラーだ」って言われたり(笑)。なので、いつか絶対子どもはほしい。それで「お母さん、音楽をやっているんだ」って自信を持って言えるお母さんになりたい。
今は難しいかもしれないけど、何年か後には誰かが結婚していても私はいいなと思っていて。6人同時で結婚しても面白いなと思う。みんながそれぞれの人生をちゃんと生きながら、BiSHをやっていってほしいというのは私の願いですね。

『クイック・ジャパン』vol.144には、まだまだ撮りおろし写真を掲載。さらにほかの5人のインタビューだけでなく、松隈ケンタによる『CARROTS and STiCKS』制作秘話も。購入はこちらから。

クイック・ジャパンvol.144
『クイック・ジャパン』vol.144

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西澤裕郎

(にしざわ・ひろお)ストリートを愛するカルチャー・マガジン『StoryWriter』記者・編集者。