SKY-HI(スカイハイ)主催のオーディション『THE FIRST』によって誕生し、2021年11月3日にデビューした7人組のボーイズグループ「BE:FIRST(ビーファースト)」。デビュー曲「Gifted.」は米ビルボードの“Hot Trending Songs”24時間チャートで1位になるなど、大きな話題を呼んでいる。
『平成のヒット曲』(新潮新書)を上梓したばかりの音楽ジャーナリストの柴那典は、11月10日のツイートで「Gifted.」について下記のように記した。
「“引き算”の美学を持った曲」だという「Gifted.」の楽曲レビューをお届けする。
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静と動のコントラストを活かした構成
BE:FIRST「Gifted.」のMV再生回数が、公開から約4週間で1000万回を突破した。
とにかく曲の“耐久性”が高い。何度聴いても、時間が経っても、魅力が落ちていかない強度のある曲作りがなされている。BE:FIRST「Gifted.」を聴いたときのファースト・インプレッションはそういうものだった。
なので、単にグループの話題性や人気の勢いだけでなく、曲自体がじわじわと浸透して広がっている今の状況には納得しているところもある。
とはいえ、最初はかなり驚いた。ボーイズグループのデビュー曲として、よくあるタイプの方向性ではない。むしろ、もっと爽やかだったり、キラキラしていたりするエネルギッシュなナンバーが選ばれることが多い。もしくは迫力のあるパワフルな曲調もアリだろう。そうすればグループが始まったばかりの勢いの象徴になる。
が、そこにあえて“引き算”の美学を持った曲をぶつけてきた。「Gifted.」は、大胆にテンポを落とした、隙間のたっぷりあるビートが耳を引く曲だ。BPMは105だが、曲の序盤は、その半分にも取れるような最小限のリズムプロダクションになっている。
そして、隙間のある音作りのおかげで、歌の存在感がより前面に押し出されている。一つひとつに余韻が残るメロディで、ファルセットや高音のフェイクや地声を自在に操るメンバーの歌声のパフォーマンスのスキルが際立つ作りになっている。「どこを探したって僕ら以上はもうあり得ないでしょう?」というフックの強いフレーズも含めて、日本語の響きが伝わる歌詞も印象的だ。
サビの変則的なリズムもよく聴くとポイントになっている。「We just gifted」で始まるサビは曲で大きく3カ所あるのだが、単なる繰り返しにはなっていない。徐々に音数が増えて、高揚感も増して、後半に向けてグルーヴが堅固になっていく。どんどんとアグレッシブになっていくからこそ、曲の終わりの静寂が印象に残る。静と動のコントラストを活かした構成になっている。
ステージパフォーマンスを通して成長していく曲
クレジットを見ると、作詞はSKY-HI、作曲はSKY-HI、Ryosuke “Dr.R” Sakai、Carlo Redlによるコライトだ。Ryosuke “Dr.R” Sakaiはちゃんみな、miletなど数々のアーティストを手がけ、USシーンでも実績を積んできたプロデューサー。オーディション『THE FIRST』のテーマソング「To The First」の作曲も担当している。
ちなみにCarlo Redlは彼との縁でコライトに参加したマイアミ在住のシンガーソングライターだ。Ryosuke “Dr.R” Sakaiは、自らが主宰する音楽クリエイティブカンパニー「MNNF」の公式YouTubeチャンネルにて曲作りの裏側を解説している。
曲作りはトラック先行によるもの。余韻と間を打ち出したサウンドの意図は、音を削ぎ落とすことによって歌に焦点を当て、7人の歌の個性を活かしていくことにあるという。Aメロ・Bメロ・サビというJ-POPにありがちな曲構成になっていないのも、低音に存在感があるサウンドプロダクションも、グローバルなポップ・ミュージックの水準を意識したもの。BE:FIRSTが日本だけではなく、アジアや欧米に広がる存在になっていくことを意図しているという。
11月5日には初のワンマンライブ『“FIRST” One Man Show -We All Gifted.-』が開催され、そこでも1曲目にこの曲が披露された。YouTubeに公開されたそのライブバージョンを観ると、ステージパフォーマンスを通してまだまだ曲が成長していく余地のようなものも感じられる。
グループはまだ始まったばかりだが、おそらく2022年の躍進を経て、「Gifted.」がデビュー曲として選ばれたことの真価はより明らかになっていくような気もする。楽しみだ。
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