「神回」となった『キングオブコント2021』。プロ同士の即席ユニットの出場解禁や、審査員が一新されたこと、お笑いマニアである17歳のタレント・女優の奥森皐月がさまざまな角度から今大会を振り返ります。
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即席ユニットにも注目が高まった『キングオブコント2021』
「過去最高」「神回」などとの呼び声が高かった『キングオブコント2021』。一端のお笑い好きである私も当然楽しく放送を観た。「コント日本一」という言葉をもう一度考えさせられる。この大会を通してお笑いの変化のようなものを感じた。
『キングオブコント』の大きな特徴としては、芸歴制限がないことであろうか。お笑い賞レースの多くは「新人向け」で芸歴の制限がある。『M-1グランプリ』も芸歴15年以内という規定があるのに対し、『キングオブコント』はまったく制限がないのだ。突然おぼん・こぼん師匠がエントリーしても出場できる。
また今年からは応募規定が改定され「プロ同士の即席ユニットの出場」が解禁されたことも話題となった。『M-1グランプリ2020』の「おいでやすこが」のように、新たなユニットが大会から注目されることが期待される注目の年であったことは間違いない。
予選の段階では元ラーメンズの片桐仁さんと青木さやかさんによるユニット「母と母」に期待していたが、惜しくも準々決勝で敗退してしまった。『エレ片のケツビ!』(TBSラジオ)で放送されていた『キングオブコント』へ向けた準備の模様が楽しかったので、より残念な気持ちにはなったが規定の改訂によって新たな楽しみが生まれたと思う。来年以降もこのルールが継続されればおもしろい展開があるのではないかと期待している。
準決勝進出メンバーの中にはチョコレートプラネットとシソンヌによる「チョコンヌ」や間寛平さんと村上ショージさんによる「ヤギとひつじ」、マツモトクラブさん、しゃばぞうさん、もじゃさんによる「マンプクトリオ」、そして「おいでやすこが」などユニットも数組残っていた。
その一方で賞レース常連のコンビや、テレビで活躍する組も多数。『M-1』、『R-1』と二冠を持つ霜降り明星・粗品さんとマヂカルラブリー野田(クリスタル)さんも準決勝進出。三冠を手にすることができるのか、という方面でも注目された。
超個人的には、ここ3年1回戦敗退だったマセキ芸能社のガクヅケが初めて準決勝まで進めたことがとてもうれしかった。準決勝進出者が発表されたあとに、私がガクヅケを好きだと知ってくれているお笑い好きの知人から「ガクヅケ!」と連絡も来た。しばらくは街中で「ガクヅケー!」と呟きながら歩いて喜びを噛み締めていた気がする。それくらいうれしい出来事なのだ。
芸歴に制限がないぶん、高くなった決勝の壁
さて、決勝進出メンバー10組を知ったときの最初の印象は「手堅過ぎる」だった。
うるとらブギーズ/蛙亭/空気階段/ザ・マミィ/ジェラードン/そいつどいつ/男性ブランコ/ニッポンの社長/ニューヨーク/マヂカルラブリー
特別なお笑い好きでなくても、ある程度バラエティを観ている人なら「このコンビは知らない」ということがないであろう10組だと感じる。過去にKOC決勝へ進出していたり、テレビでよく見かけたりと、決勝に出る前から知名度の高い芸人さんばかりだというのが正直な感想。それと同時に、すでに売れている芸人さんが現役で賞レース決勝へ進むことの凄まじさと実力を思い知らされた。
予選で期待されていた即席ユニットはひと組も決勝には上がらず、三冠がかかっていた霜降り明星とマヂカルラブリーの決勝対決もなかった。これは反対に、話題作りではない審査の厳正さを表しているようにも感じられる。
決勝メンバーの年齢にも着目したい。最年少はザ・マミィ林田(洋平)さんの29歳で、そのほかはすべて30代。ちなみに2020年大会のファイナリストには20代がひとりもいなかった。芸歴制限がないぶん、若い世代がなかなか活躍できないのが『キングオブコント』なのかもしれない。だからこそ、バイきんぐのように芸歴と年齢を重ねているが名が知れていない芸人さんが優勝できるともいえる。
そして年齢や芸歴に制限がないぶん、層が厚く決勝の壁は高い。とある記事に、今年の『キングオブコント』は「30代前半から中盤の芸人が多いフレッシュな大会」と書かれていて驚いた。もしかしたら公に知られていないことなのかもしれないが、世の中には10代の芸人さんも20代の芸人さんもいる。「若手芸人」の幅があまりにも広がっていることを痛感した。
『ツギクル芸人グランプリ』『マイナビ Laughter Night 第7回チャンピオンLIVE』と今年ふたつの賞レースで優勝した金の国、結成1年目にして『ワタナベお笑いNo.1決定戦』で優勝したゼンモンキーなど、実力のある若手コント師はまだまだ存在する。しかしながらふた組共今年のKOCでは準々決勝敗退であった。ライブシーンで大きく期待されている芸人さんですら準決勝までは進出できない現実を見ると、決勝に進出することが奇跡に等しいことなのだと深く感じさせられる。けれども、決勝を目の当たりにするとそれは奇跡でもなんでもなく本当の実力なのだとわかった。
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