岡野陽一の嘆き「美容室に行きたくない」
3月21日、1都3県の緊急事態宣言が解除される。それについていろんな意見はあるけれど、ピン芸人の岡野陽一は思うのだ。「ああ、美容室に行きたくない」。散髪してもらうことが楽しかった子供のころに思いを馳せながら、長く曲がりくねった美容室への道にため息をつく。
美容室のあれは「ラーの鏡」だ
美容室に行く度に僕は思う。
「こりゃ世の中から戦争が無くならない訳だ」
僕には散髪中、あんな真っ直ぐに鏡を見れる人の気持ちが全く分からない。
あの鏡は僕にとっては「ラーの鏡」と同じだ。
『ドラクエ』に出てくるあれだ、真実の姿を写し出す能力を持ったあの鏡。
王様のふりした「ボストロール」を倒す時に使うあれなのだ。
あんな物を直視なんて出来る訳がない。
それなのに奴らはキラキラした目で鏡を真っ直ぐ見て言うのだ
「前髪もう少しボリューム出す事て出来ます?」
「今襟足どんな感じですか?」
「サイドを少しバリカンで刈り上げて下さい……」
自分の頭の横の事をサイドと言い出したら人間おしまいだ。
あそこには側頭部という立派な名前がある。
サイドて……。
サッカーじゃないんだから。
側頭部側もびっくりしてることだろう。
「え?今サイドて言った?側頭部!側頭部!
サイドて……。
サッカーじゃないんだから……」
よく人の気持ちを考えろとか、人にやられて嫌な事は人にするなと習うが、これを見る限りあれは間違った教育だ。
決して美容室で働いてる方々や、鏡を直視する一族の事を否定してる訳ではない。
どうしても分かり合えないと言ってるだけだ。
直視派の方々、気分を悪くしたら申し訳ない。
勿論、こういう時はお互い尊重し合うのがベストなのだが、全ての人間を理解するには人生短過ぎる。
こういう時は、分かり合えないという事をわかる事が大切なのだ。
下手にお互い分かり合おうとすると、戦争が起きる。
あなた達がパチンコ屋さんに5時から並んで8万負ける人達、WINSの開門と同時に馬よりも早くスタートダッシュするおじさん達と分かり合える気がしないのと同じである。
もし直視派の人が総理大臣になって、美容室鏡直視法案が通ったら、僕はこの国を出るしかないだろう。
結局何を言いたいのかと言うと、僕はそれくらい美容室が苦手なのだ。
僕みたいな、国道の端っこで干からびてたミミズの死骸に、パチンコ屋で負けて泣きながら帰っていたおじさんの涙が一粒落ちて、奇跡的に産まれた下等な生き物が好き嫌いを言うのは烏滸がましいのは分かっているが、今回は美容室について書かせて頂きたい。
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