Netflix配信中の『アンという名の少女』は、原作『赤毛のアン』に現代的解釈を大胆に加えた作品。NHKで先週放送された第7話「後悔は人生の毒」(Netflix版6話)では、ギルバートに大きな不幸が降りかかった。今夜最終回「あなたがいてこそ我が家」を前に、ゲーム作家・米光一成が物語を振り返る。
アンが、ミニー・メイの命を救う
NHK総合で11月1日(日)夜11時から第8話。いよいよ最終回である。だが、『アンという名の少女』はシーズン3まである(まだつづく予定だったが打ち切りになってしまった)。しかも、シーズン1の終わり方は、めちゃめちゃ「つづく!」であり、けっこうな悪者が登場して「この先どうなる?」ってところで終わる。いわゆるシーズン2に向けてのクリフハンガーというやつだ。
「つづきが観たい!」となるのは必至なのだが、NHK総合では、来週からは『グッド・ファイト2』がスタート。つづきはNetflixで視聴できるが、NHKオンリーで観てる人は要注意だ。
さて、最終回直前の7話を振り返ろう。
ダイアナの妹、ミニー・メイが病気になる。
大人たちは首相の演説を聴きに出かけている。ダイアナがアンのところに駆け込んでくる。いちご水事件(6話)で、バリー夫人(ダイアナの母)に、ふたりは引き裂かれ、ずっと会えないでいた。ミニー・メイが咳き込んで、ほとんど息をしていないのだとダイアナはパニックになっている。
クループだ。クループというのは、喉が炎症などで狭くなり呼吸しにくくなる病気の総称。気管支炎のこと。
ここからアンの大活躍。窓に近づけて高熱の小さな身体を冷やす。玉ねぎを足の裏に当てて解熱する。子守をしていた家での経験が活かされる。
喉を詰まらせたミニー・メイの上半身をテーブルに乗せて、うつ伏せにしてくの字にして、背中をとんとん叩き、「咳をして!」と促す。
アンが、ミニー・メイの命を救うのだ。
翌日の昼。6話で「兄さんは、子供を甘やかし過ぎですよ」とマシューをいなしたマリラがアンを甘やかす。机に腰を下ろして手掴みでで食事をするアンを叱らない。
娘をアンに救ってもらったバリー夫人が謝りに来て、ダイアナと会ってもいいことになったのだ。
ギルバートを怒らせてしまう
ギルバートの父、ジョン・ブライスが亡くなる。
プリンスエドワード島の真っ白な雪景色の中、黒い服の人たちが歩いていく。
ギルバートは、ひとり墓石の近くに残り、ベンチに座っている。
泣いてはいない。手のひらで一片の雪を受け止める。溶けた雪が手のひらをゆっくり流れていく。
6話のキーカラーが赤だとすれば、7話は、黒と白だ。
マリラの学生時代が回想シーンで挿入される。イケメン男子(ギルバートのお父さんだ)から青いリボンをもらう。
1話で、アンの髪を結んだあの青いリボンだ。
そのリボンをつけたアンは、ギルバートをを慰めようとして「(小さいときから孤児だった自分よりも)あなたは運がいい」と言ってしまい怒らせてしまう。
ダイアナのお父さんのおばさんである(大叔母)ジョセフィン・バリーとアンが急接近する回でもあった。
秘密基地でジョセフィン・バリーおばさまとアンが恋について語ったり、アンが悩みごとの相談にジョセフィンおばさまのところを訪ねたりする。「結婚せずに自立している先輩」として、アンはジョセフィン・バリーをリスペクトする。
このあと、シーズン2でも、ジョセフィンおばさまは重要な役割を演じる。
ルビーとダイアナとアンの3人でシェパーズパイを作り、ギルバートに届ける。
ギルバートの前で「アンも手伝った、料理がうまいの」とダイアナに言われたアンは、唐突に「でも結婚には向かない」と言ってしまう。めちゃくちゃギルバートを意識しているのだ。
グリーン・ゲイブルズに帰って「マリラ、結婚したかった?」と、アンはマリラに問う。
「昔はしたいと思ってたけど、無理だったのよ」とマリラは答え、「家にいるべきだった。兄弟が死んだとき母が立ち直れなくて、わたしを必要とした」とマリラは語る。6話でマシューが「思い出すか」と聞いた兄マイケルのことだ。
原作『赤毛のアン』には、アンがこう語る場面がある。
ダイアナと私は、二人とも結婚しないで立派な未婚女性として、生涯、一緒に暮らす約束をしようかしらって真剣に考えてるの。ダイアナは、まだ決心がつかないのよ。だって、むこう見ずで乱暴な性悪男と結婚して、夫を改心させるのも、崇高な行いだという気がするんですって。
『赤毛のアン』第30章・松本侑子訳/文春文庫
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