松岡昌宏『家政夫のミタゾノ 特別編』が暴いたリモートな不倫。コロナ禍で浮気は増加しているらしい
『家政夫のミタゾノ 特別編』が、リモートならではの浮気の現場を押さえた。「これは神回だ」。深夜ドラマを愛するライター大山くまおが確信した連載第11回。
10人以上のキャストが撮影を敢行
ドラマの撮影が止まっている間、いくつものリモートドラマが放送、あるいは配信されたが、最もチャレンジングな試みが成功していたのは5月29日に放送された『家政夫のミタゾノ 特別編 ~今だから、新作つくらせて頂きました~』(テレビ朝日)である。間違いない。
もはや松岡昌宏の代表作と言ってもいい『家政夫のミタゾノ』は、家事をはじめとするあらゆることに長けた女装家政夫・三田園薫が、なんらかのよからぬ秘密を抱える家庭に入り込み、“根深い汚れ”をスッキリさせて家族を崩壊させたあと、再生に導くというストーリー。すでにシーズン4に到達している人気シリーズである。家庭の秘密を探り当てて洗いざらい暴露してしまうのは市原悦子の『家政婦は見た!』(テレビ朝日)から、無表情な主人公のキャラクターは松嶋菜々子の『家政婦のミタ』(日本テレビ)からいただいている。
他のリモートドラマがZoomなどを使った会話劇に終始していたのに対し、『ミタゾノ』特別編は果敢にもレギュラーとゲスト合わせて10人以上のキャストが一度も顔を合わせることなく撮影を行い、それぞれのリモートの画面を組み合わせて通常回と同じような60分のドラマを作り上げてしまった。これは深夜ドラマならではの挑戦だとも言える(そもそもNHK、民放、WOWOW含めてリモートドラマが放送されたのはすべて深夜だった)。
背筋が冷えるリアルなシーン
この特別編でミタゾノに家政婦サービスを依頼したのは中堅広告代理店の部長・柴田明彦(音尾琢真)の妻・真理子(奥菜恵)。明彦は出張だと偽って、浮気相手の部下・美玖(筧美和子)の部屋に潜伏中の身である。ミタゾノはあっという間に不倫に感づくが、実は真理子も明彦の不貞を疑っていた……というお話。
ドラマは明彦と真理子のリモート会話、明彦と美玖のリモート会話、ミタゾノが所属する「むすび家政婦紹介所」の面々のリモート会議、明彦とミタゾノのリモート会話、明彦と会社の部下たちのリモート会議、明彦と真理子のメッセージアプリの画面などを組み合わせて進んでいく。PCのリモート画面の下にもうひとつミタゾノがいる小さなリモート画面が隠れているシーンなどは、いかにもミタゾノらしいし、日常的にもありそうで背筋が冷える。
全編PC画面の中だけでストーリーが進む映画『search/サーチ』を参考にした部分もあると思うのだが(PCに通話履歴を出すなど共通の画作りもあった)、それにしてもよくこの短期間でややこしい構成を作り上げたものである。特別編の監督は『孤独のグルメ』(テレビ東京)シリーズなどの宝来忠昭、脚本は『ミタゾノ』第1シリーズから携わっている小峰裕之。第4シリーズまで積み重ねたスタッフ、キャストのチームワークがあってのことだろう。
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