発売中の『Quick Japan』vol.186のバックカバー&特集には、お笑い芸人のこたけ正義感が登場。「しゃべりで立つ」と題した今回の特集では、そんな『弁論』の立ち上げからこれまでを振り返りながら、ピン芸人の新たな道筋を見つけた、こたけ正義感がその先頭で見ている未来について紐解く。
さらに、こたけが信頼する先輩芸人や『弁論』に魅了された人物の証言も掲載。ここではこたけの先輩であり、2026年に漫談のみの単独ライブ『ニヤる~話を3つ用意しました~』を開催し、大きな反響を呼んだみなみかわが、スタンダップコメディという芸に期待を抱くこたけに対して、不満に思っていることを語る。

みなみかわ
1982年生まれ、大阪府出身。2004年にデビュー、現在はピン芸人として活動中。2026年は単独ライブ『ニヤる〜話を3つ用意しました〜』を開催
自分なりのベストなやり方を探した『ニヤる』
こたけ正義感を知ったのは『M-1グランプリ』にお互いユニットで出てたときか、『R-1グランプリ』の予選だったか。最初はあの風貌と名前、経歴からして、キワモノ芸人かなと思ってました。強い思想のもと、活動してる人なんかなと。でもネタ観たらそんなことなさそうやし、ユニットの漫才もおもしろかった。しゃべってみたら柔らかいし。
よう覚えてるのは『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ)。僕とこたけが一緒に出た回があって、こたけがかなり空回ってたんですよ。でもそれがおもしろくて。大変な現場なのにずっとファイティングポーズを取ってるのがすごいなと思って「お前めちゃめちゃしてたな!」と声をかけたのを覚えてます。以降、ふざけて「うちの事務所の顧問弁護士になってくれへんか」とか言うようになりました。
僕が今年やった単独ライブ『ニヤる〜話を3つ用意しました〜』が『弁論』を意識しているかと言われれば、まあそうかもしれません。『弁論』はみんな手放しで褒めるし、めちゃくちゃレベル高い芸というイメージになってるじゃないですか。ただ、お笑いの構造的にはそんな難しいことやってないで、と僕はあえて言いたい。これを主張してるのは今のところ、僕とウエストランド井口(浩之)だけですけど。「誰でもできることをやりやがって!」と思ってるし、それを証明したくて今回このかたちで単独をやったところもあるかもしれないですね(笑)。
僕が2023年にやった単独ライブ『ドクン』では、コントをやって、最後に自分が投資詐欺に遭ったことを題材にした漫談をやりました。2024年の単独ライブ『よかれ』ではオープニングと最後に漫談をやって、その間にコントをやるという構成にしました。
特に『ドクン』のときは、ネタをかなり細かくやったんですよね。芸人の単独といえば、5〜10分のネタを7~8本やって、合間にVTRがあってというのが王道じゃないですか。ただ、僕は観客として単独ライブを観るとき、どんなにおもしろくてもネタが多いと疲れてしまう。だから『よかれ』ではネタ数を減らしました。
短いネタをたくさんやるのって、賞レースに向けた姿勢ですよね。だったらもっと独自のライブをやるべきやなと思ったんです。そんなとき、街裏ぴんくが独演会で長時間の漫談をやっていたり、それこそこたけの『弁論』があったりして、こういう方向もあるのかと。
もうひとつ、永野さんの存在も大きかったです。永野さんってライブのとき、めちゃくちゃ自由なんですよ。最初から最後まで独自の世界観でやりきる。もちろんそれはマネできないけど、自分がほんまにおもしろいなと思うことで単独ライブをやりたいなと思うようになりました。それに加えて、コントで演じるということと、自分のテレビに出ているときのキャラとかが乖離し始めたという感覚もあって。
だから、今回の単独は「漫談をやろう」というよりも「ひとりコントってほんまに求められてるのかな?」という葛藤からたどり着いた形式やったんですよ。いろんな人に相談して「でもコントを見たい人はいると思うよ」とか「ひとりコントがあったほうがライブとして締まるよね」とかいう意見もあったんですけど、今の自分がコントに対して懐疑的な気持ちがあるのならば、一度漫談に振り切ってみてもいいのかなと。将来的に全国を回るようなことがあるなら、荷物やスタッフも最小限で回れますし、劇場も選ばず、公民館の一室でもできますし。
今はありがたいことにテレビに呼んでもらってますけど、テレビって呼ばれ待ちじゃないですか。だから自分のエンジンを自分で作らないとアカンと思って。さらば青春の光はYouTubeでいろんな企画をやり、単独ライブで全国ツアーをやっている。個人事務所ならそうやって自分から動くのは当たり前だし、テレビの仕事と同じくらい大事なことなんですよね。だからテレビに呼ばれなくなってもこれで飯を食っていけるというものを見つけないと、という気持ちで単独ライブには取り組んでいます。
今回のライブも、実は「漫談をやった」という意識はそんなにないんです。さかのぼると、DDTプロレスリングで『まっする』という興行をやられていた、元プロレスラーのスーパー・ササダンゴ・マシンさんという方が僕がまだ松竹芸能にいたころに事務所に入ってこられて。イベントでササダンゴさんが披露した、パワーポイントを使った「パワポ芸」がすごくおもしろかった。構成力、バラエティ力がとんでもなく高いんですよ。で、『よかれ』のときに自分のルーツに関する漫談をすることになり、写真を使いたいなと思ったときにササダンゴさんが浮かんで。
ちょうど『ドクン』を観たさらば森田(哲矢)から「単独ライブをやるなら演出家が必要ですよ」と言われていたんです。「おもしろいかどうかだけじゃなく、お客さんが観てよかったなと思えるように、演出を入れたほうがいい」と。それもあって、一緒にネタを作れる、演出もできる人としてササダンゴさんにお声がけしました。そこから、シンプルな漫談ではなく、自分なりのやり方でお客さんがより笑いやすいかたちが作れるんじゃないかと思えるようになりました。
こたけとかぴんくとか、しゃべりだけで惹きつける能力がある人、それだけで成立する人はそれでいい。でも、僕自身はしゃべりだけでは寂しいと感じてしまうんですよ。そうやってたどり着いたのが今回の単独です。ぴんくはウソ漫談。こたけは逆に、超絶リアルな話をする人。だとしたら、僕は“企み”かなと。自分がやってきたことの企みを笑いに昇華しないと勝てないなと思ったところはあったかもしれません。ササダンゴさんと一緒に、パワポ芸も活用しながらライブを成立させる僕の今のかたちは、漫談とはまた違うものなのかもしれないです。
スタンダップコメディは“こたけにとっての”最適解
こたけがほかのピン芸人に60分漫談を広めたいと言っている? 自意識過剰も甚(はなは)だしい。よくそんなこと言えますね(笑)。まるで漫談が自分のものかのように。今までだって長尺の漫談をやっていた人はいたでしょう。僕なら恥ずかしくてよう言わないですけどね!
ピン芸人が目指す『R-1』ってめっちゃ難しいんですよ。うしろにセットがあって、制限時間があって、「さあひとりでどうぞ」って。実はピン芸ってめちゃくちゃ自由で、ひとりコントもあればモノマネでもいい、それこそ漫談でもいい。ただ僕は、自分の中でジャンル分けをあまりしていないんです。だから『R-1』で4分間で何をやるかが自由なように、60分渡されたらその中で何をやってもいいと思う。こたけのようにしゃべる人もいれば、モノマネしまくる人もいる。コンビ芸人で「漫才師だからこれはできない」とか「コント師だからこれは苦手」とか言う人もいるけど、それも変な話だなと。芸人やったらその場その場でもがいて最適解を出そうや、と思うんですよ。そら誰しも苦手な分野はある。けどそれでも「これやったらいけるかな」と自分の頭と能力を使って何ができるか。
だから「ピン芸人だから60分漫談に挑戦すべき」ではなく、僕はどこまでいっても「とにかく楽しいことやるんで観に来てください」というタイプなんです。ただただウケたいんですよ。こだわりも何もない、ただ笑ってもらいたい。そのために、その場その場でできることはなんでもやる。それが芸人じゃないですか?(笑)
こたけはこれから、けっこう茨の道だと思いますよ。『弁論』が大きくなっていけばいくほど、言葉の力が強くなっていくじゃないですか。実際の事件の話をしたり、自分の見解を述べたりしていくうちに、本当に“正義”のキャラクターが強くなっていきますよね。そうすると、どんどんバカなことがやりづらくなっていくんちゃうかなと。
もういっそ、『弁論』をどんどんまじめにやっていって、社会に貢献するようになっていけばいいと思いますね。僕らはお笑い芸人をやるんで、こたけは弁護士のほうでがんばっていただければと。そうそう、こたけって『弁論』を「スタンダップコメディ」と呼ぶでしょ。なんで? 日本には「漫談」という言葉があるのに、なんでわざわざ「スタンダップコメディ」とか呼ぶん? 「みなみかわさんのライブもまさにスタンダップコメディでした」とか言われても、そんな自覚ないし、勝手なこと言うのはやめてほしい! 俺らが幼少期に信じたお笑い芸人たちがやってたのは「お笑い」なんですよ。腹抱えて笑わせてくれたのは「お笑い」。だから僕も「お笑い」をやりたいだけなんです(笑)。
こたけ正義感が『Quick Japan』vol.186バックカバー&特集に登場
10月21日(水)より発売中の『Quick Japan』vol.186のバックカバー&特集に、お笑い芸人のこたけ正義感が登場する。
こたけ正義感が2024年に立ち上げたスタンダップコメディショー『弁論』は、立ち上げからわずか3年で全国4都市開催へと拡大し、12月に開催する東京公演では約8000人を動員予定という、ピン芸人の単独としては異例の規模へと成長している。
「しゃべりで立つ」と題した今回の特集では、そんな『弁論』の立ち上げからこれまでを振り返りながら、ピン芸人の新たな道筋を見つけた、こたけ正義感がその先頭で見ている未来について紐解く。
さらにこたけが信頼する先輩芸人、みなみかわ、ニューヨーク屋敷裕政、そしてこたけ自身や『弁論』に魅了された小説家の朝井リョウ、歌人の俵万智もその魅力について語る。

『Quick Japan』vol.186
発売中
サイズ:A5/並製/144ページ
価格:1,650円(税込)
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