こたけ正義感が『弁論』で確信した、日本でスタンダップコメディが文化として醸成されていく未来

2026.10.27
こたけ正義感

文=青島せとか 撮影=鈴木 渉 編集=梅山織愛


こたけ正義感が2024年に立ち上げたスタンダップコメディショー『弁論』は、初開催からわずか2年半で全国4都市開催へと拡大し、12月4日(金)に東京ガーデンシアターで開催する東京公演では約8000人を動員予定という、ピン芸人の単独としては異例の規模へと成長している。

コンビやトリオに比べ人(にん)が伝わりづらいとされてきたピン芸人が、自分自身を軸とした芸で観客と関係を結べる、スタンダップコメディという芸。彼は『弁論』という企画以上に、この芸に対して大きな期待を寄せている。ピン芸人の新たな道筋を見つけた、こたけ正義感がその先頭で見ている未来を語る。

※この記事は『Quick Japan』vol.186に掲載のインタビューを一部抜粋し転載したものです

わずか2年半で、キャパ100倍に成長した『弁論』

こたけ正義感
こたけ正義感(こたけせいぎかん)1986年5月12日生まれ、京都府出身。『R-1グランプリ2023』で決勝に進出

こたけ正義感(以下、こたけ) 一応、意識的に拡散しようとはしてるんですよ。SNSで感想言ってほしいとか、グッズをいっぱい買ってくださいとお願いして、拡げる努力はできるだけしてきたつもりです。

こたけ 第1回で手応えを感じたあと、もう少し勉強しようと思って、漫談やスタンダップを見るようになりました。街裏ぴんくさん、あべこうじさん、ナオユキさん、キャプテン渡辺さんとか、日本の人たちをひととおり観たあと、Netflixに海外のスタンダップコメディ動画が山ほどあると気づいたんです。観てみたら、みんなとてつもなくでかい劇場でやってるんですよ。日本のピン芸人でこの規模で単独をやっている人は誰もいない。これがやれたらすごいぞと、目標にするようになりました。

こたけ それはめっちゃ思ってます。妻は英語ができるので、「ここなんでウケてんの?」と聞くことも多いですね。解説してもらうと、前提知識を知らなかったとか、実はこういう言い方をわざとしているとか、前のこの言葉とかかってるとか、細かいテクニックがあって。やっぱりスタンダップってそういうもんだよなと思います。

こたけ正義感

おもしろさを原液で出せるスタンダップという形式

こたけ 賞レースのヒリヒリ感は嫌いではないですけど、今の自分はそれよりもやりたいことがあるという感じですね。たまたま賞レース向きのネタができれば出るかもしれない、くらいの感覚。賞レースに賭ければ賭けるほど、特にピン芸人はいろんな損をしている気がするんですよ。

こたけ おもしろいピン芸人は山ほどいるけど、なかなか集客できなかったり、テレビの仕事が少なかったりする。でも海外のスタンダップを観て価値観がひっくり返ったんですよ。みんな気づいていないだけで、ピン芸人はみんなこうなれる可能性を秘めてる。先日もZAZYさんとのツーマンライブでZAZYさんに漫談をやってもらいました。結果的に45分くらいの長尺になって、めっちゃおもしろかったですよ。もともとおもしろい人がしゃべったらおもしろいのは、確信していたことですけど。みなみかわさんの単独ライブ『ニヤる~話を3つ用意しました~』も「『弁論』を意識してる」とご本人が言っていましたけど、完全にスタンダップコメディで、とんでもなくおもしろかった。

こたけ そうですね。スタンダップという形式は、その人のおもしろさを原液の状態で出せて、観る側も一滴もこぼさず受け取れるものだと思うんです。自分の話をするから、人となりがどうしても表れる。するとその人のファンになる。観れば観るほどその人を好きになるし、好きになればなるほどおもしろく見えてくる。そうやっていい循環になっていくんです。

こたけ まさに。これまでのピン芸人は、関係性が存在しないからキャラもわからない。だから無理やりキャラクターをつけて、一発屋になる人も多かった。もちろんそれもいいんですけど、まっすぐ自分を表現して、そこを好きになってもらうのは最高の流れだと思うんですよ。そうやっていろんなピン芸人が長尺のスタンダップをやるようになったら、それをしっかり楽しむ層も育まれて、文化として醸成されていきそうな気がするんです。「お笑いはわちゃわちゃしているから苦手だけど、スタンダップなら見ていられる」という人たちがいるのは、『弁論』を通じて知ったことで。スタンダップをやる芸人が増えれば増えるほど、新しいお客さんも取り込めるような、いい市場ができていく気がしています。

こたけ そうですね。テレビに出ていれば食べられるという時代ではないので、いかに自分自身のことを好きになってもらうか、ファンになってもらえるかは、これまで以上に重要な気がしていました。

こたけ そこはめっちゃ意識的にやってますね。そもそもをYouTube(『こたけ正義感のギルティーチャンネル』)始めたのも、そこがきっかけで。賞レースでウケていても決勝に行けなかった理由は、自分にファンがいないことだと思ったんですよ。『R-1』は特に、どうしても知名度も影響しますから。

こたけ お笑いを辞めたいと思ったことはないですけど、辞めなあかんのかなと思った時期はあります。でも、やっぱり好きだったので。お笑いの世界が。

こたけ 先日『しくじり先生(俺みたいになるな!!)』(テレビ朝日)の収録があって、まさにそこをこじらせているという話をしてきたばかりです(笑)。キャラクターとして見せてるくせに、真正面から弁護士キャラを求められたくない。勉強も実務もして、弁護士であることは自分の考えの根底に根づいてもいる。でも、けっしてそれがすべてではないんですよ。だから出身地とか性別とか、それくらいの要素のひとつとして受け止めてもらえるようになったらいいなと今は思っていますね。

インタビュー全文は『Quick Japan』vol.186に掲載

10月21日(水)より発売中の『Quick Japan』vol.186のバックカバー&特集に、お笑い芸人のこたけ正義感が登場する。

こたけ正義感が2024年に立ち上げたスタンダップコメディショー『弁論』は、立ち上げからわずか3年で全国4都市開催へと拡大し、12月に開催する東京公演では約8000人を動員予定という、ピン芸人の単独としては異例の規模へと成長している。

「しゃべりで立つ」と題した今回の特集では、そんな『弁論』の立ち上げからこれまでを振り返りながら、ピン芸人の新たな道筋を見つけた、こたけ正義感がその先頭で見ている未来について紐解く。

さらにこたけが信頼する先輩芸人、みなみかわ、ニューヨーク屋敷裕政、そしてこたけ自身や『弁論』に魅了された小説家の朝井リョウ、歌人の俵万智もその魅力について語る。

『Quick Japan』vol.186(2026年10月21日発売)バックカバー

『Quick Japan』vol.186
発売中
サイズ:A5/並製/144ページ
価格:1,650円(税込)

【通常版】『Quick Japan』vol.186

『弁論2026』
2026年11月4日(水)東京エレクトロンホール宮城
2026年11月11日(水)福岡県立ももち文化センター 大ホール
2026年11月24日(火)ロームシアター京都 メインホール
2026年12月4日(金)東京ガーデンシアター

『弁論2026』公式サイト

この記事の画像(全4枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

青島せとか

ライター。お笑いを中心にインタビューやレポートを執筆。

関連記事

大森時生「長谷川あかりは、背負おうとしている人の目をしている」。ふたりが語る“ポップさ”の美意識について【スペシャル対談】

『Quick Japan』vol.186(2026年10月21日発売)バックカバー

こたけ正義感が『Quick Japan』vol.186のバックカバー&特集に登場。みなみかわ、朝井リョウらからコメントも

【140万再生超え】こたけ正義感『弁論』に惹かれるのはなぜ?日本のスタンダップコメディに感じる無限の可能性

大王×ナユタ

東京よしもとの期待株・大王×ナユタが語る若手芸人の層の厚さ「10年前と今の子はおもしろさが違う」

たくろう×丸亀じゃんご

たくろう×丸亀じゃんご、『M-1』優勝に向けて劇場でつけた勝ち癖と「サボったらヤバい」と思わせてくれた仲間

『マンゲキ夏祭り2026』

【写真たくさん】活気あふれる会場に出演芸人たちも大盛り上がり! 売れっ子芸人大集結の『マンゲキ夏祭り2026』レポート

「気づけば支えられている。表現者って、素敵な職業ですよね」声優・小原好美にライバーが聞く“続ける原動力”【17LIVE特別企画】

CANDY TUNE 186

CANDY TUNEが表紙・巻頭特集に登場!「10秒で元気になれる」悩み相談にパワフルなメッセージで全力回答!

長谷川あかり特集号、表紙ビジュアル解禁! 趣味の料理を楽しむ人も、日々の料理がつらい人も「人生の主体」を取り戻す言葉と創作の50ページ