温かな愛を吸収し、それを増幅して表現する稀有な才能の持ち主・REIKO「あきらめたいってときがあっても、がんばった先に今日みたいな日がある」

2026.7.24
『REIKO One-man tour “VOICE”』より

文=小川智宏

編集=森田真規


BMSG所属のシンガー・REIKOが、2026年7月17日、全国8都市を巡ったワンマンツアー『REIKO One-man tour “VOICE”』のファイナルを飾る追加公演を豊洲PITで開催した。

満員のフロアを前に、REIKOは最新作である2nd EP『VOICE』収録曲をはじめ、カバーや新曲を含めた多彩な楽曲を次々と披露。全22曲、最初から最後までオーディエンスを魅了し続けた。

バンドメンバーをはじめ、オーディエンスとも歌を通して温かな交流を育んだREIKO。その歌声が生み出した幸福な空間をレポートする。

EP『VOICE』に刻まれたREIKOという「声」

5月にリリースされた『VOICE』は「自分の声を信じて進むこと」というテーマを掲げて制作された作品だ。全5曲、アッパーなダンスチューンから繊細なバラードまでを行き来しながら、REIKOの歌声は「これが自分だ」という自負と自信を乗せて響いてくる。

BE:FIRSTを輩出した『THE FIRST』で、最終的にメンバーには選ばれなかったもののSKY-HIにその将来性を見出されたところから、REIKOのキャリアはスタートした。その後、トレーニーとして経験を積みながら才能を磨き、2023年10月にデビュー。それからの約2年半は彼にとって、アーティストとして歌える喜びを味わいながら、自分だけの武器を探す旅路でもあっただろう。

『VOICE』はそんな旅の先で生まれた作品。彼の歌を聴くたびに、筆者は彼の持つ大らかさや優しさのようなものに触れる気がしていたが、それがはっきりと作品化された、そんな印象を抱かせるEPとなった。

REIKO’s Liner “VOICE”

序盤から多彩な顔をのぞかせたパフォーマンス

その『VOICE』を引っさげてのツアー。ステージに立った彼が見せたものは、一緒に音楽を奏でるバンドメンバーやダンサー、スタッフ、そしてもちろん彼をサポートし続けるRAZE(REIKOのファンネーム)、その全員と手を取り合い、ハグするように歌を届ける姿だった。

会場には最初から最後まで双方向の愛があふれ、そのなかでREIKOはとても伸び伸びと自由に、まるで家にいるかのようなリラックスした表情でパフォーマンスを披露していた。

ライブの幕開けを飾ったのは「LOVE DEEPER」。パープルのロングタキシード(衣装のイメージソースは『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカらしい)に身を包んだREIKOはアカペラで歌い始め、全身でリズムを感じながら「もっと来いよ!」とオーディエンスに呼びかける。ツアーを通して練り上げてきたのだろうバンドとのコンビネーションも絶好調。歌ものっけからパワフルに響き渡った。

続く「Take It Back」では、ステージの端まで行ってオーディエンスとコミュニケーションを取るREIKO。登場したダンサーのMoney、ionaとともにキレのある動きを見せると、「No More」ではセクシーさとパワフルさを裏表のように表現する。冒頭3曲の間にも、REIKOというシンガーの持つさまざまな表情が詰まっている。

ジャンルや曲調に関わらず、楽曲に応じて自然と多彩なキャラクターが顔を出すのがREIKOというシンガーだ。もちろんそれは彼が培ってきたシンガーとしてのスキルがなせる業だが、同時に彼が音楽と歌を何よりも愛しているということの証でもある。そのあとのライブの中でも、彼がこの会場の誰よりも歌うこと、音楽を鳴らすことを楽しんでいることがはっきりと伝わってきた。

REIKOアーティスト写真
REIKOアーティスト写真

「仲間」を巻き込んで広がるREIKOの歌

この日のライブを観ていて筆者が最も強く感じたのはまさにそこだった。『VOICE』のテーマだった「自分の声を信じて進むこと」とは、別の言い方をすれば「自分の声を音楽に託す」ということでもある。自身の歌声を信じ、音楽を信じ、そこに全力の愛を注ぎ込むことで、REIKOのライブはとてもハッピーでハートフルな空間になる。

しかも重要なのは、それを彼はけっしてひとりで完結させようとは思っていないということだ。この日のライブ中に彼は、『VOICE』は「誰かに届けるために自分の声を自分のものにするまでの軌跡」だと説明していた。「誰か」がそこにいることが彼にとってはとても大切なのだ。

事実、この日最初のMCから彼はバンドメンバーやダンサーをまるで家族のように紹介し、オーディエンスをチーム分けして一緒にダンスし、コール&レスポンスを繰り広げていた。ともに音を奏でる「仲間」を心から誇るような満面の笑みとともに。単に歌がうまいとかセンスがあるとかではない、その巻き込み力と誰も置いていかない愛の深さに、REIKOというアーティストのオリジナリティがあるという気がした。

『REIKO One-man tour “VOICE”』より
『REIKO One-man tour “VOICE”』より

誰もが知る名曲たちがオーディエンスを引き込む

ライブ中に披露されたカバー曲もそうだ。たとえば敬愛する久保田利伸の「LOVE RAIN ~恋の雨~」。前回のツアーでは「流星のサドル」を歌っていたが、ダンサーチームともどもピンク色のビニール傘を使ったパフォーマンスは、先達へのリスペクトの表明であるとともに、誰もが知っている曲でオーディエンスをより近くに引き寄せるためのきっかけにもなっていた。実際そのあとに披露された「Neverland」ではラテンの情熱的なノリが会場全体を巻き込み、ライブは序盤にして最高の一体感を生み出す。

この日はその「LOVE RAIN」に加えて、平井大「Slow & Easy」、ジョン・レノン「Imagine」、そして終盤にはブルーノ・マーズ「Just the Way You Are」のカバーも披露。特に「シナモンちゃん」と名づけたウクレレをプレイしながら歌われた「Slow & Easy」や「Imagine」は、ウクレレの素朴な音色も相まって、みんなで一緒に音楽を楽しむ、とても穏やかで愛おしい時間となった。

そのカバーコーナーを終えて、REIKOがステージに持ち込んできたのはBMSGのロゴが入ったスウェットフーディー。メジャーデビューした証として事務所の代表であるSKY-HIから贈られたものだ。彼がデビューを発表したのは2023年7月の『BMSG TRAINEE Showcase 2023』でのこと。その場所も、この豊洲PITだった。

「つらいこととか、ああ、もうあきらめたいってときがあっても、その時期をちょっとずつ乗り越えてがんばった先に今日みたいな日があるんだって、みんなが証明してくれています」

あの日からの日々を振り返ってそう語るREIKO。歌もダンスも未経験の状態からオーディションに挑戦し、多くの壁にぶつかりながらもたどってきた道のりを、「誰かに届く」ということだけを信じて彼は進んできたのだろう。

だからこそ彼の歌は今も常に誰かと分かち合いたいという思いにあふれている。そんな言葉に続いて歌われた「まだ」の「まだ手放せないんだ今は 僕を信じてくれたから」という歌詞は、その旅についてきてくれたRAZEたちとの答え合わせのようだった。

自身のルーツであるフィリピンの音楽のカバーも

その旅は、日本から始まり、さらに大きく広がっていこうとしている。それがこの日のライブで披露された新曲たちだった。7月27日に配信リリースされるシングル『Folklore Vol.1 – Tadhana / Multo』に収録される「Tadhana」と「Multo」だ。

「運命」を意味する「Tadhana」はUp Dharma Down、「亡霊」を意味する「Multo」はCup of Joeという、いずれもREIKOのルーツでもあるフィリピンのアーティストのカバー。「みんなをフィリピンに連れて行きます」という言葉とともに、「イタズラ」のタガログ語バージョンである「Hanggang Kailan Pa」も加えて3曲立て続けに歌われたタガログ語の歌は、大げさにいえば彼のアーティストとしてのキャリアと、彼という人間の歴史を結びつけるものだ。

きっと、タガログ語の歌を聴いただけですぐに理解できる人は、この日の会場にはほとんどいなかったと思う。でもここまでのライブを通してREIKOが歌に乗せている感情はとても豊かに伝わってきたし、それはたとえ言葉が変わっても同じように届いてきた。

特に「Tadhana」のトラックには日本の伝統楽器である箏(こと)のサウンドも使われていて、フィリピンで生まれ、日本で育ちアーティストとしてデビューを果たしたREIKOというアイデンティティを象徴するものとなっている。

この『Folklore』は、今後もシリーズとしてさまざまな国の音楽をカバーしていくつもりだという。言葉や文化の違いを「声」の力で超えていくというのは、まさに「自分の声」を信じた先に続く道としてふさわしい。そうした挑戦ができるのも、REIKOというアーティスト像が彼自身の中ではっきりと定まってきたゆえだろう。

REIKO Philippine Vlog

「こんなに愛をもらっていいのかってくらい愛をもらってる」

「フィリピン楽しかった?」とREIKOがオーディエンスに問いかけ、ライブは終盤に向かっていく。「こんなに愛をもらっていいのかってくらい愛をもらってる。たくさん恩返しできるように、これからもがんばっていきます」。そんな言葉で自身を取り巻くすべての人に向けて思いを伝え「First Christmas」を届けると、その言葉に応えるように会場中でスマホのライトが揺れた。

「BUTTERFLY」を経て『VOICE』からの「CHECK」「maybe」という2曲で一気にギアを上げて、豊洲PITのオーディエンスとひとつになって盛り上げきると、REIKOはダンサーやバンドメンバーを改めて一人ひとり呼び、ステージから送り出す。

REIKO ‘CHECK (Prod. ALYSA)’ Music Video

1回のライブの中でこんなに何度もメンバーの名前を呼び、オーディエンスに紹介するアーティストを見たことがない。REIKOにとって彼らがどういう存在なのか、そして音楽をやるということがどういうことなのかを物語る光景だった。

そしてスポットライトの中、最後に「まだ」を1コーラス、アカペラで歌うと、REIKOはステージを去っていく。その「まだ」を引き継いでオーディエンスが歌って始まったアンコールではもう一度「So Good」をみんなで楽しみ、彼のツアーは終わりを迎えた。

随所でハンズクラップやシンガロングが生まれ、全員のチームプレイで駆け抜けたREIKOのワンマンライブ。そこには温かな愛と、それを吸収し、さらに増幅して表現するシンガーの才能があった。

歌やダンスがうまいアーティストはいくらでもいる。でも、それだけでは生み出せないものを生み出せるのが彼という人だ。そのことを改めて強く感じた。

『REIKO One-man tour “VOICE”』より
『REIKO One-man tour “VOICE”』より

REIKO『Folklore Vol.1 – Tadhana / Multo』

REIKO『Folklore Vol.1 – Tadhana / Multo』

配信日:2026年7月27日(月)
<収録内容>
M1 Tadhana
M2 Multo
Pre-add / Pre-save:https://presave.umusic.com/pspa-reiko-folklorevol1

【ライブ情報】
『REIKO’s Winterland Vol.3』
日程:2026年12月15日(火)
※詳細は後日、公式ホームページなどで発表予定

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