いまおかしんじ監督が語る俳優・日穏(STARGLOW)「すごい人は何を言っても、ちゃんと芝居の中に取り込んでくれる」
桜井日奈子とともに日穏(カノン/KANON)が主演を務める映画『死神バーバー』(6月26日(金)公開)。
その公開を記念して、2026年6月24日発売の『Quick Japan』vol.184で“俳優・日穏”の現在地を多角的に映し出す12ページ特集「ただひとり、きみに届く。」を実施。SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版として、表紙&バックカバーを飾った。
ここでは本誌の特集に掲載した、いまおかしんじ監督インタビューのロングバージョンを、本誌未掲載の撮り下ろし写真とともに特別にお届けする。

いまおかしんじ
1965年生まれ、大阪府出身。映画監督、脚本家。主な監督作に『たまもの』(2004年)、『あなたを待っています』(2016年)、『れいこいるか』(2020年)など。脚本を手がけた作品に『苦役列車』(2012年)、『超能力研究部の3人』(2014年)、『まなみ100%』(2023年)、『化け猫あんずちゃん』(2024年)などがある
目次
日本にはいなかったタイプの役者
──日穏さんを『死神バーバー』に起用した決め手はなんでしたか。
いまおか 周囲のみんなはオーディション番組(『THE LAST PIECE』)を観てたんですけど、俺は観てなくて。ただ『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』は観ていたんです。いいなと思ったのは、あれも不思議な役じゃないですか。何考えてるのかよくわからない、みたいなところがあって。もしかしたら、それ、死神の要素あるんじゃないかと。
──たしかに、ちょっと不思議な感じありましたよね。
いまおか 『代々木ジョニー』はそういう役でもあったんだけど、資質というか、もともと本人が持っているものもあるんじゃないかと。
──こんな人いなかったなと。これまで日本にはいなかったタイプの役者だと衝撃を受けました。映画にはこれまでさまざまな死神が登場してきましたが、まったく違う死神が生まれましたね。
いまおか 死神だったら、どうにでもなるじゃないですか。こんな死神もあるし、あんな死神もあるし。結果、死神像も日穏さんに寄せていきました。死神って、誰も見たことないじゃないですか。
でも、人間とはちょっと違う何かは欲しい。日穏さんとも話して、動きも芝居の感触も、普通の人間とはちょっとだけ違う、それが“死神らしさ”かどうかはわからないですけど、そういうものを加えていきましたね。

芝居をどのようにすればいいかわかっている
──劇中で日穏さんが見せる、あの独特のステップは撮影現場で生まれたものですか?
いまおか 脚本にはなかったですね。死神らしさを出すにはどう動いたらいいか。そこからキャラクターを作っていけたところはありましたね。日穏さんがやることにちょっとだけ足す。対面してしゃべってたのを「ぐるぐる歩きながらしゃべって」とか。
最初はポカンとしていたんですが、だんだん楽しそうにやるようになっていきました。そうなると、こっちもどんどん(イメージが)広がっていくんですよね。
──あの動きが、現実と非現実をつないでいるように感じられました。不思議なんです。笑える、とかではない。コミカルではなく、とにかく不思議な間(あわい)がある。
いまおか プロデューサーの久保(和明)さんは現場を見ていて、当初「ヤバいな」と思ったらしいんですよ。僕が「くるっと回って」とか「ステップ踏んで」とか言ってたから。たしかに、これは“やりたがる人”がやったら、目も当てられない。スベってしまう。“やるぞ!”ではダメなんです。日穏さんはそうじゃなくて、自然にすっとやるんですよね。
──デフォルメしないですね。
いまおか だから、いやらしくならない。「ギャグじゃなくて、ある種の身体的なクセみたいに、自然に動いちゃう感じがいいんだよね」と伝えると、それをすぐ理解して、すっとやってくれた。あと、ダンスをしてるから、動きがなめらか。

──本来は非常に危険な動きですよね。でも、日穏さんは「やってる感」が全然ない。
いまおか “白紙”というのかな。その場の状況を全部吸収する。すごくやりやすかったですよ。素直だから。若くて、素直で、いい子だなぁ!って。ほんと、いいヤツですよ。初々しい。“これから”を持っている。今だからこそ、できることをしている。あと5年後には、彼でももうできないかもしれないですよね。
──人間たちの話を聴いている顔も抜群ですよね。演技って、どう聴いているかが大事じゃないですか。
いまおか そのとおりです。そういうことが自然にできてる。あれはヤバいよね。あと何年かしたら、もう遠くに行ってしまって、一緒に仕事ができなくなる気がする。伸びしろがヤバい。
彼はちゃんとわかってるんだよね、芝居をどのようにすればいいかが。芝居ってたぶん、“相手とどうやるか”だから。自分のプランよりも、相手のことを見てる人からは、生まれるものがある。素晴らしいですよ。

日穏考案のキャラが一発でわかるアクション
──冒頭の「アサー!」のポーズもよかったです。
いまおか あのアクションは彼のアイデアです。「アサー!」のセリフは俺だけど、「なんでもいいから、何かやってください」と伝えたら、本人が勝手にやってくれた。キャラが一発でわかるアクション。すごいですよね。その場で考えたことでしょうから。
──死神のポーズは監督から?
いまおか そうです。「マジですか?」と聞かれたんですが、俺が「マジです」と言うと、照れもせずちゃんとやってくれるんですよね。すごい人は何を言っても、ちゃんと芝居の中に取り込んでくれるんですよ。
──明らかに不自然なポーズが自然に見える……そういう人だと、いろいろアイデアを伝えたくなるものですか。
いまおか そうですね。思いついたことをパッと言える。向こうもそれをサッと返す。こっちもおもしろくなるし、お互いもっともっと、どんどんやろう!ってなる。
──会話劇ですが、人間にはそれぞれ未練があって、だから時間が一時停止する。人間、死ぬとなっても、ただ悲しいだけではないなと、愛おしくなる映画でした。
いまおか これは作ってる途中で思ったんですけど、最期に逢いたい人に逢って、しゃべって、これで思い残すことなく逝っちゃったら違うなと。もっと生きてみたい、と未練が増えて、そのまま逝っちゃう。やっぱり、生きることをそのままあきらめるんじゃなくて、生きることにしがみつく。人間って、そうなんじゃないかな。
死神はそんな人間の姿を見ていて、「人間はバカだな」と思いつつ、ちょっとうらやましくなる。生きてるって、いいものなんじゃないか。誰かが生きててほしい、誰かにもう一度逢いたい……そういう感情が、映画の最後に残ってくれるといいですね。

『Quick Japan』vol.184 SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版


『Quick Japan』vol.184 SPECIAL EDITION 日穏(STARGLOW)特別カバー版
2026年6月24日(水)発売
サイズ:A5/並製/144ページ
価格:1,650円(税込)
※内容は予告なく変更する場合があります
映画『死神バーバー』

公開:2026年6月26日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:いまおかしんじ
原案:梅木陽一
脚本:谷口恒平
主題歌:Furui Riho「太陽になれたら」(LOA MUSIC/PONY CANYON)
出演:桜井日奈子、日穏、岡部大、平井亜門、猪塚健太、工藤遥、宇野祥平、美保純
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
公式HP:https://shinigami-bb.com/
(C)『死神バーバー』製作委員会
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