佐久間宣行が語る、野呂佳代が必要とされる理由「自信があるわりに卑屈で、すぐ調子に乗る。それがおもしろい」

2026.4.23
野呂佳代特集

文=安里和哲 編集=梅山織愛


4月20日(月)スタートのドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)で、10クール連続でドラマ出演。さらに出演映画も多数控え、ますます俳優としての存在を確かなものにしている野呂佳代。なぜ今、野呂はこれほど求められているのか。

4月14日に発売された『Quick Japan』vol.183では、「私はわりと間違える」と題して特集を実施。ここでは、野呂のブレイクの発火点となった『ゴッドタン』(テレビ東京)の、佐久間宣行プロデューサーのインタビューをロングバージョンでお届け。『ゴッドタン』では、もともとはゲストだった野呂が、アシスタントのひとりを務めるようになったのは、あるコント企画がきっかけ。アイドル、タレント、そして女優。3つの肩書の交差点にあった『ゴッドタン』の野呂について聞いた。

佐久間宣行
(さくま・のぶゆき)テレビプロデューサー。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』(ともにテレビ東京)などを担当。『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)の水曜パーソナリティを務める

今の活躍には、ちゃんと原因と結果がある

野呂佳代
野呂佳代インタビューより(撮影=持田 薫)

『ゴッドタン』で野呂佳代の片鱗を見たのは2016年にやったコント企画「私の落とし方発表会」でした。女性タレントが自分で台本を書いて演じる番組の定番企画ですけど、その初回のトップバッターが野呂さんで、めちゃめちゃ盛り上げてくれたんですよ。コント的なデフォルメの効いたお芝居と、生々しいリアルな演技のちょうど中間。劇団ひとりに近い芝居で、それがすごくおもしろかった。

そのあと、2017年にアシスタントの松丸(友紀)が産休に入ったタイミングで、野呂さんと朝日奈央をアシスタントにしました。ただ、正直にいうと最初のころの野呂さんは、番組アシスタントとしてはハマってなかったんですよ。当時は彼女自身も自信がないから、平場で何かやっていても途中で不安になる。その結果、そこまでの流れを投げ出して、目先の笑いに逃げてしまうところがあったんです。要するに中途半端だった。実際、劇団ひとりに自ら絡んでいったのに逃げたときは「お前のやってることはわからないんだ!」ってマジの説教をされて、泣いてましたから(笑)。たしかに芸人からすると「お前何やりたいの?」っていうのが一番困るはずなんです。スベるにせよ、ウケるにせよ、やり通してくれないと、どう助けたらいいのかもわからないから。

バラエティの平場はとにかくやりきることが大事。その点、朝日奈央はアイドリング!!!時代に、バカリズムに鍛えられてて、やりきる力があったから、あっという間に売れていった。

実は松丸も最初は野呂みたいにやりきるのが苦手だったんですよ。でも「松丸プロデュース」という企画で、役柄をやり通せばウケるんだっていう感覚を覚えたことでなじんでいった。だから野呂も同じだろうなと。それでハリウッドザコシショウのモノマネを完コピしてもらう企画をやったんです。一度やりすぎちゃったほうが、あとがラクになるし、周囲も認めてくれる。実際あれから芸人の野呂に対する態度も変わりました。だからあの野呂さんの活躍は、奇跡でもなんでもなくて、原因と結果がちゃんとあったんです。

でも別に『ゴッドタン』だけで野呂佳代が作られたわけでは全然なくて、アイドル時代からの積み重ねだと思いますよ。アイドルって時と場に応じて立場を替えながら振る舞うことが求められる。そこで身につけたスキルは大きかったんじゃないかな。朝日もそうですけど、アイドル出身の人は度胸がありますから。

これは野呂さんに限ったことじゃないですけど、僕は出演者には特にアドバイスをしたこともありません。芸能人は自分でリスクを取って生きているから、自分の道は自分で選ぶべきだと思っているので。もちろん聞かれたら答えはしますけど、基本的には企画がお手紙だと思っているので、自分からは言わない。野呂さんもその企画に、現場で応えてくれただけです。

必要とされているのは当然の結果

野呂さんのおもしろいところは、自信があるわりに卑屈で、すぐ調子に乗るところ。あのくだらない人間性がいいんですよね。すぐ有頂天になるのに、すぐヘコむ。だから、おもしろいエピソードは山ほどあるんですよ。しかも年齢を重ねたことで、そういうキャラクターが痛々しくなく、笑いに昇華できるようになったのも大きいですよね。そういう意味では、お笑いの世界にいたから、無理して自分を変えずにそのままで来られたのがよかったんじゃないかな。別の世界だったら、「もっとちゃんとしなきゃ」というプレッシャーで、野呂佳代のおもしろいところ、くだらないところが削られたかもしれない。お笑いの世界が野呂さんを守ってくれたのかもしれないですね。

野呂さんが今ドラマで引っ張りだこなのも、彼女がひとつずつ現場を積み重ねて、現場のスタッフや共演者の信頼を勝ち得てきた結果でしょうね。そうやってがんばってるうちに、時代のニーズと合致したというか。ブレイクって、現場の信頼と時代の要請両方がそろわないと起こらないんで。

今って“技術の時代”なんですよ。事務所の力、いわゆる「ゴリ押し」で出てきたタレントや役者って最近見ないじゃないですか。若手の役者で大根の人がまずいない。一定のスキルは必須になっている。それってシンプルな話で、現場はもちろんのこと、ドラマの視聴者がスキルのある人を求めているからですよね。だから演技力が高い野呂さんが必要とされているのは当然の結果なんじゃないかな。

今のドラマって、ルックもトーンもバリエーションがいろいろあって、リアリティラインがバラバラになってきている。だから、コント的なお芝居も、リアルな演技もできる野呂さんは、スタッフとしても使いやすいんじゃないでしょうか。それに社会ってとんでもない美形だけで再現できないじゃないですか。ドラマを作るときも、美形しかいなかったらリアリティがない。そこでいろんな役柄を演じられる野呂さんは重用されるんですよね。

アイドル時代を経て、バラエティで台頭し、そして女優として活躍している。彼女は順当にキャリアを重ねているんですよね。野呂佳代の歩みは地続きなんだなって、こうやって話してみて改めて思いました。ずっと野呂さんは変わってなくて、時代が変わってきた。野呂佳代の時代になるまで踏ん張れたところが、彼女のすごさです。

今度のドラマ『銀河の一票』のプロデューサーの佐野亜裕美さんは、僕も10年来の友人ですし、めちゃくちゃおもしろいドラマを作る方です。佐野さんのドラマでどんな野呂さんが見られるか楽しみにしています。

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安里和哲

(あさと・かずあき)ライター。1990年、沖縄県生まれ。ブログ『ひとつ恋でもしてみようか』(https://massarassa.hatenablog.com/)に日記や感想文を書く。趣味範囲は、映画、音楽、寄席演芸、お笑い、ラジオなど。執筆経験『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』『Maybe!』..