令和ロマン・くるま「『M-1』しかできない」弱音を覆す人間的魅力とは?『世界の果てに、くるま置いてきた』バングラデシュの孤島に置き去りに!

年間100本以上のお笑いライブに足を運び、週20本以上の芸人ラジオを聴く、21歳・タレントの奥森皐月。
今回は、現在配信中の『世界の果てに、くるま置いてきた』(ABEMA)を視聴し、本編から見えた令和ロマン・くるまの人間的魅力を語る。
目次
ABEMA『世界の果てに、○○置いてきた』にくるまが登場
現在ABEMAで絶賛配信中の『世界の果てに、くるま置いてきた』を観ている。
普段このような海外ロケ系の番組はあまり観ないほうなのだが、“令和ロマンのくるまさん”と“世界の果て”というふたつの組み合わせは想像ができなくて、おもしろそうだと思っていた。

『世界の果てに、○○置いてきた』は、著名人を世界の果てに置き去りにするところから旅が始まる、ABEMAの人気シリーズ企画。
第1弾は『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』というタイトルで実業家のひろゆき(西村博之)さんがナミビアの砂漠のど真ん中に置き去りにされるところから旅がスタートし、旅のパートナーとして俳優の東出昌大さんも合流し、アフリカ横断旅に挑んだ。
第2弾は『世界の果てに、東出・ひろゆき置いてきた』として、俳優の東出昌大さんとひろゆきさんがふたりで南米横断に挑戦した。
その第3弾がこの『世界の果てに、くるま置いてきた』である。会議がどのように進んだら「ひろゆき・東出の次は、くるまにしよう!」となるのかが気になる。
コンビでも個人でも、最も話題に事欠かない芸人
令和ロマン、そしてくるまさんといえば、近年で最も話題に事欠かない芸人さんといえるだろう。
『M-1グランプリ2023』では歴代最短の芸歴での優勝を収め、2024年には『ABCお笑いグランプリ』でも優勝。優勝した翌年にあたる『M-1グランプリ2024』では、トップバッターだったにもかかわらず勝ち抜き、史上初の2連覇を達成した。

くるまさん個人では、2024年に出版された著書『漫才過剰考察』(辰巳出版)での卓越した考察力と、お笑いに対する熱愛を感じる文章が評判となり、発売3カ月足らずで15万部を達成。
さらに「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」を受賞するなど、お笑い界の唯一無二の存在として多方面に活躍している。
ところが2025年2月にオンラインカジノ問題が報道され、くるまさんは活動自粛に。4月にはくるまさんだけ吉本興業のマネジメント契約が終了したというニュースが出て、注目を集めていた。
吉本興業退所後も令和ロマンとしてのラジオやYouTubeは再開され、これまでどおり続いている。
くるまさんの自粛に伴って、相方の松井ケムリさんのひとりでの仕事も増え、現在はそれぞれのフィールドで活躍しながらコンビ活動を続けている印象だ。
今年9月には、来年5月に単独ライブ『RE:IWAROMAN』を開催することを発表した。
会場は、コンビ史上最大規模である約2万人収容のKアリーナ横浜。お笑いライブで聞いたことのないキャパシティで驚いたが、それでもチケットは争奪戦のよう。令和ロマンの勢いを物語っている。
直近でも「“髙比良くるま”から“くるま”に改名」というネットニュースが出たり、スタジオトークで出演していた『セフレと恋人の境界線』(Prime Video)が話題になったりと、常に注目の的となっている人物だ。
バングラデシュ南端の孤島から始まる、初めての海外旅
そんなくるまさんは、この『世界の果てに、くるま置いてきた』で、日本からおよそ4,800キロ離れたバングラデシュ南端の孤島に置き去りに。

アイマスクをつけた状態でスタート地点まで案内されるのだが、ドッキリやこのような過酷なロケのイメージがないので、その姿が新鮮だ。
いよいよアイマスクを外すと、見渡す限りの大自然。孤島の沼地にぽつんと立たされている。
そこからバングラデシュ本土を通過し、幸せの国・ブータンの王宮を目指す。約2週間の南アジア縦断の旅が今回の題材だ。
移動手段はローカル路線バスやヒッチハイクなど、基本陸路のみ。旅の軍資金は5万円だ。

まず驚いたのは、くるまさんがほぼ“人生初海外”だということ。番組冒頭、カバンに飛行機に乗るときの荷物タグがつけっぱなしで、スタッフさんに指摘されて「外していいかわからなかった……」と言うほどの初心者具合。
のちに自身のYouTubeでも紹介していたが、旅に必要なものはChatGPTと相談しながらそろえたそうで、全身この旅に備えて新たに買ったピカピカの装備だそう。楽しもうとしている姿勢がうかがえる。
旅の様子から垣間見られる、知識の吸収力と成長度合い
#1では、島からの脱出を目指すものの、さっそくスタッフたちとはぐれていて笑った。
スタッフさんが30分以上かけて探してようやく見つけると「すみません、勝手に行きすぎました」と呑気な様子。普段メディアでも見かける自由な振る舞いは、異国の沼地でも健在でよかった。

くるまさんといえば、ひとりで何役も演じながら自分の世界を表現する漫才をしたり、次々と言葉を放ちながら自分の意見を言ったり、愛のあるものを矢継ぎ早に語ったりする姿を見る機会が多い。
しかし、当然ながら日本語がわからない相手には、その流暢なしゃべりは通用しないのだ。

簡単なベンガル語のあいさつを覚えて使ったり、AIを駆使して調べながら自分の伝えたいことを話す姿は、いつもとは大きく異なる。
それでも、明るい振る舞いやまっすぐな想いは言葉の壁を越えて届くようで、村の人気者になっていく様子が#1では見られた。

「モジャ」というベンガル語で「おいしい」を表す言葉は、「楽しい」という意味もあるそう。食事をしたり盛り上がったりするたびに、くるまさんは「モジャ!」と言う。すると村の人々も「モジャ!」と続けて言っていて、微笑ましい。
外国の方が日本にやってきて、なんでも「最高!」とか言ってくれたらうれしいだろうから、その村の人の気持ちもよくわかった。

くるまさんがバングラデシュ料理を食べるシーンでは、村の人から「自分たちは手で食べる」と言われる。そこで、すぐさま手で食べ始めようとしている姿がいい。
イスラム教の背景も説明しながら、手を使った食べ方を村の人がレクチャーしてくれて、それをすぐに取り入れるところが素敵だった。私もなんとなく知識としてあったが、実際にその地で体験したら、比べものにならないくらい文化を理解できるであろう。

もともとの性格もあるだろうが、くるまさんは旅のあらゆるシーンで情報や知識を吸収していくのがすごい。
本人は番組内で「『M-1』しかできない。ほかの能力は0」だと語っている。しかし、これまで向いていた方面が『M-1グランプリ』だっただけで、別の方角を向いてもやはり攻略して成長できる能力の持ち主であることが旅からうかがえる。
言語や文化は違っても、相手を対等に見る姿勢
一方で、#2ではレストランで頼んだハンバーガーが思っていた味と全然違って落ち込んだり、少しだけ寝坊したり、バスの休憩時間にご飯を食べていたら置いていかれそうになったりと、人間らしい部分も次々見えてきた。

バスで爆睡していたところを起こされて、街へ歩いていきながら、バスに履いていた靴を忘れてしまったことに気づくシーンには笑わされた。

『M-1』特化型漫才マシンのイメージとは打って変わって、おっちょこちょいな一面が次々と見えてくるのがおもしろい。くるまさんを漫才でしか見たことがない人ほど、意外性があって楽しめるような気がする。

#2の終盤には、日本語が話せる大学生の男女に出会い、日本で就職することや、ふたりが結婚していることを聞く。あまりにも幸せそうなふたりにやられて「もう帰ろう」と言っている姿は、人情味にあふれていてとてもよかった。

番組内でくるまさんがこぼした「旅をしても意外と普段と変わらないのは、世界をナメてないからだ」という発言が印象的である。言語や文化は違っても、相手を対等に見ているし、日頃と変わらない現実としてきちんと捉えている。
これから#3以降で触れる「世界」によって、くるまさんの考えや行動に何か変化は起こるのか。興味深く見ていきたい。
今後くるまと、ひろゆき&東出昌大が絡む可能性も!?
また#2の冒頭には、これまでのシリーズに出演していた東出昌大さんが過酷な山道をひとりで登るシーンが映し出された。さらに、ひろゆきさんも旅に合流することがすでに明かされている。
今後くるまさんの旅にどのように関わってくるのかはまだわからないが、想像のできない絡みなので楽しみ。

見ているだけのこちらも旅をしているような気分が味わえるし、知らない世界を知ることができる、いい番組だ。旅番組はそこまで興味がなかったが、これを観て悪いものではないと気づいた。
先述の令和ロマン公式YouTubeチャンネルの動画には、この番組のディレクターさんも出演し、番組の宣伝をしていた。
そこで「編集が追いつかなさそう」と言っていたのが唯一の気がかりだ。12日間の旅の記録をほぼひとりで編集していて、全然間に合っていないらしい。
この先ブータンにたどり着くまで、どんな人と出会い、どんな試練や喜びが待っているのか、そして編集は間に合うのか。注目しながら毎週日曜日の更新を楽しみにしようと思う。