QuizKnock山本祥彰がママタルトに聞く“大喜利のコツ”「知りすぎている大喜利プレーヤーはまだいないと思う」
実はかなりのお笑い好きで、日頃から大喜利の動画を観たり、自身も企画で大喜利に取り組んでいるQuizKnockの山本祥彰。やればやるほど、その奥深さを体感する大喜利をもっと知りたいということで、今回は大喜利ライブでも活躍するママタルトと対談を実施。
クイズと大喜利の共通点を考えながら、“大喜利”においての正解をたっぷりと語り合う。
目次
大鶴肥満を待ちながら
肥満さんが間違えて別のスタジオに向かってしまったようなので、先におふたりで始めていただけたらと思います。
ママタルトの檜原と申します。よろしくお願いします。(電話が鳴る)あ、すみません大鶴肥満から。……ええと、そう、交差点の信号越えてもらって。スタッフさんが立ってくれてる。……あ、出会った? 今出会ったみたいです。ほんとすみません。
(笑)。いやいや、出会えてよかった。僕、実は大喜利すごく好きで。おふたりの大喜利もめちゃくちゃ見てます。
ありがとうございます。大喜利は何きっかけで好きになったんですか?
実は芸人をやってる友達がいて。その友達が出てる大喜利の動画を観始めたのがきっかけですね。『大喜る人たち』とかもほぼ全部観てます。早稲田大学のクイズ研究会の同期だった、大久保八億ってやつなんですけど……。
えー! そうだったんですか。僕、2年ぐらい八億と一緒に住んでましたよ。そんな共通点があったとは。
僕、大喜利とクイズってわりと似てる部分があると思ってるんです。ちょうどいい“あるある”を攻めると評判がいいのかなって。クイズの場合、「日本一高い山はなんでしょう?」という問題は、誰でも答えがわかってしまうからおもしろくない。でも、それを「日本一低い山」にしてみたり、少しだけ真ん中からずらすといい問題と評価されることが多い気がするんですよね。……あ! 肥満さんだ。
すみません! 遅くなりました! 申し訳ない。すぐに着替えます。申し訳ない、申し訳ない……。(走って控室に入っていく)
たとえば、前に自分が出した問題の中に、『忍たま乱太郎』(Eテレ)のちょっとした知識を問うものがあるんです。登場人物の中にナメクジを飼ってるキャラクターがいるんですけど……。
ええと、(山村)喜三太でしたっけ?
そうです、そうです! 一度、「『忍たま乱太郎』のキャラクター・喜三太が飼っているものは何?」って問題を出したらすごく評判がよくて。たしかにクイズで聞かれたことはないけど、よくよく考えてみると思い出せるというか。
(着替えながら)はいはいはい、たしかに。ナメクジから話を広げることもできますしね。
すごいな。もう参加してくれるんや。
大鶴肥満です。本当に申し訳ございませんでした。
(笑)。いえいえ、QuizKnockの山本です。今日はお願いします。
クイズプレーヤーは大喜利に強い?
3人がそろったところで改めてですが、今回は山本さんがママタルトのおふたりに「大喜利のコツ」をお聞きしたいとのことです。
コツかあ……。僕、山本さんが言ってくれたとおり、大喜利ってクイズに近い部分がすごくあると思うんです。だから知識の多い人はそれだけ有利かもしれない。たとえば「忍者のお医者さん」みたいなお題があったとしたら、「忍者といえば」「医者といえば」のあるあるをたくさん出せる人のほうが強いじゃないですか。「白衣」「聴診器」みたいな医者に関する要素を普通の人は20個くらいまで出せるとしたら、それこそ大喜利が強い大久保八億とか、ぺるとも、警備員みたいな人は、たぶん80個とか90個ぐらいまで出せるんですよね。
「紹介状」くらいまで出せるよね。
そうそう。で、その両方の要素を80個ずつ出せるとしたら、6400個の中から答えを選べるわけじゃないですか。
計算早いね。
あるあるって、浅すぎてもおもしろくないし、深すぎても伝わらないって難しさがあるじゃないですか。でも、6400個の組み合わせが出せる人は、そのぶん、ちょうどいいゾーンのあるあるもたくさん出せるってことですかね?
そう思います。忍者のあるあるをたくさん出せたとしても、それが『NARUTO』の知識だけだと『NARUTO』を読んでない人はポカンとなってしまうから、そういうゾーンは避けつつ、いい塩梅のところを見つける、みたいなイメージですかね。
なるほど。クイズプレーヤーの場合、知識は多いけど、そのぶん知ってることをつい全部言いたくなっちゃうんですよね……。
「ムキ超ムキ」「ゴレンジャーカレー」……忘れられない回答
みなさんはこれまでさまざまな場で大喜利をしたり、観たりしてきたと思いますが、特に忘れられない回答ってありますか?
『大喜る人たち』の中にルーレットでお題を決める「クソお題大喜利」っていうのがあるんですけど、そこで「かなり法律はマッチョだ」っていうお題が出たときに、真空ジェシカの川北(茂澄)さんが「ムキ超ムキ」って即答したんです。2点くらいの回答を早く出せる人ってめちゃくちゃいるんですけど、ちゃんと最高得点の大喜利を即出せるのが本当にすごいなって。ぺるともとか冬の鬼さんとかもそういうタイプなんですよね。とにかく早く正解を出せる。
僕は「あの答え、自分も思いついてました」ってあと出しする人を非常に蔑んでるんですけど……でも実は、あのとき僕も「ムキ超ムキ」は思いついて、書いてたんですよ。
えっ⁉ すごいな。
「判決」とか「被告人」みたいな「法律」関連の言葉をワーッと挙げていく中で、「ムキムキ」とか「ダンベル」のようにマッチョっぽい響きの言葉はないかなと考えていったら行き当たったんですよね。でも、それを誰かが言ってしまうと自分があとから言っても意味がなくなるので、ちょっと早押しクイズみたいな要素もあるのかもしれないですね。「法律」と「マッチョ」、ふたつをかけ合わせて答える早押しクイズみたいな。
そうか、ベン図クイズみたいな感じなんですね。ふたつの集合があって、どちらの領域にも重なってる部分をより早く答えるみたいな。
あ、そうそう、そういう感じだと思います。……僕が忘れられない回答は、「嘘をつけない正義のヒーローがやってしまったこととは?」というお題に対してのぺるともの答え。最初のほうはみんな、あくまで戦隊ヒーローもののストーリーの中で大喜利をしてたんですね。でも、5分くらい経ったところでぺるともが急に「ゴレンジャーカレー発売中! もともとあるレトルトカレーのパッケージに俺たちがいるってだけだぜ!」って出したんです。商品のコマーシャルのところから答えてきて。
(笑)。すごいな~。
コラボ商品のコマーシャルって「戦隊ヒーローといえば」の中の、そういえばあったわ~って部分じゃないですか。あれはすごくいいなと思いましたね。
僕が印象に残ってるのは、かなり有名なんですけど、『IPPONグランプリ』(フジテレビ)の「新元号発表の雰囲気で何かを発表してください」というお題でホリケン(堀内健)さんが出した回答。渦巻きを描いて、目の錯覚でぐるぐる回ってるように見えるってやつです。あれはテレビで観た当時、大爆笑しましたね。ちょっとおもしろすぎる。何か言いながらとかじゃなく無言で出すのもすごいし、あとからジワジワ会場がウケていってる感じもよかったですね。
ホリケンさんって、時々自分を子供に戻して答えるときがあるんですよね。あの爆発力は本当にすごい。ロバートの秋山(竜次)さんとかは別の人格に憑依するのがうまいし、それぞれのキャラクターを活かしてる感じはありますよね。
なるほどなあ。やっぱりキャラが乗ってくるとよりおもしろい答えになりますよね。
大喜利では「知りすぎている」が足を引っ張ることも?
そういえばおふたりって、大喜利のために勉強したことってありますか? たとえば特定のマンガとかアニメに関するお題とか、詳しくないと答えられないんじゃないかと感じることもあって。
僕も前に『SPY×FAMILY』に関するお題が出たときに、読んだことがなくて、まったくわからなかったことありますね。でも、そのとき堂々とお題に答えていたぺるともも、『SPY×FAMILY』には全然詳しくなかったらしくて。主題歌とか街に貼られてるポスターみたいな、自分が知ってるちょっとした情報をふくらませて、さも全巻読んでるみたいな顔で答えたって言ってました。だから知らないなら知らないなりに、開き直って答えてしまうのも大事かもしれないですよね。
そうか。ちなみに、お題のものに詳しすぎる場合も「みんなが知ってること」の塩梅がわからなくて困ったりするんですかね?
ああ、それもあるかもしれないですね。僕だったら『ONE PIECE』はすごく好きで詳しいんですけど、あんまりマニアックなシーンを答えても誰もわからなかったりする。意外と、手に×印を描いて掲げてるくらいのシーンがちょうどよかったりするんですよね。かえって知識に足を引っ張られることはあるかもしれない。
じゃあたとえば、「こんな世界遺産は嫌だ」みたいなお題だったら……一番ベタな世界遺産ってなんだろう? 自由の女神とか、姫路城とかですかね。
ですかね。でもたぶん、大喜利プレーヤーの多くは固有名詞から答えないでしょうね。「人がたくさん観光に来る」とか「汚れてる」とか、そういう方向から考えるかもしれない。固有名詞から考えると、「へえ、そうなんだ」って難しがられちゃう可能性もあるから。
たしかに。僕らでいうとちょっとマイナーなところって、アンコールワットとかなんかな? でも山本さんは、そのくらいの感覚で200位くらいのところを普通に出せそうだから(笑)。
「リドー運河が……」みたいなことですよね(笑)。
でも「リドー運河が」って山本さんが言い出したらウケそうですよね。QuizKnockっていうフリがあるから、その上でまったく知られてない世界遺産を言いまくったらおもしろそう。
(笑)。知りすぎてることが伝わっていれば、それもアリってことなんですね。
QuizKnockがフリになる大喜利の必勝法
ちなみに10月26日には、Quick JapanとWLUCKが主催する大喜利イベント『AUN〜コンビ大喜利王決定戦~』の第8回大会も開催されます。ママタルトさんも出場しますが、コンビで行う『AUN』は通常の大喜利と違う難しさはありますか?
『AUN』はひとりで考えられるお題と、ふたりで答えを合わせてひとつの回答を出すお題とどっちもあると思うんですけど、やっぱりコンビで息を合わせなきゃいけないお題は難しいですよね。僕らは基本的にはフリを思いついたほうが先に答えを書いて、もうひとりがそれに合わせていくみたいなやり方をするんですけど。『AUN』はけっこう、ほかの大喜利大会に比べてもやることが多くて難しいよな。
俺はもう……何も思い出せない。前の大会で『浦島太郎』に関するお題が出たことがあるんですけど、自分がまったく浦島太郎を知らなくて一答もできなかったことしか覚えてないですね。
あったな。『SLAM DUNK』とかなら読んだことないのもわかるけど、大鶴肥満、まさかの浦島太郎をまったく通ってなかったっていう(笑)。
浦島太郎を通ってないっておもしろいな(笑)。
山本さんは、もしQuizKnockのメンバーとコンビ大喜利に挑戦するとしたら、誰とがいいですか?
難しいけど、うーん……鶴崎(修功)さんかな。ふくら(ふくらP)さんとかはたぶんお笑い好きなんですよ。でもちょっとタイプが自分と似ているかもしれないとも思うので、まったく違うタイプの鶴崎さんとだったらいろんな答えが出せそうかも。鶴崎さん、何言ってもちょっとおもしろくなりそうだし。
たしかに鶴崎さんとやるのはおもしろそう。あとは、そうだな……大喜利の時間ってひとつのお題につき10分くらいあるじゃないですか。その時間を活かすのもありかもしれないですね。たとえば山本さんだったら、最初のうちにトンチンカンな答えを一度出してしまって、しばらく回答せずにまわりをじっくり観察するんですよ。で、5分とか経ったあたりで「そういうことか、すべて理解した……!」みたいな空気を放ちつつ、じっくり考えた答えを出す。これ、めちゃくちゃウケる可能性あると思います。
あらかじめストーリーを作って、その上で答えるんですね。
QuizKnockのメンバーっていうのはもちろんみんな知ってるじゃないですか。でも自分は大喜利のことは全然わからないんです、みたいな空気で入っていって、そこから……。
待ってください、これやっぱり公開しないでもらっていいですか。僕がどこかでこのやり方をマネしようと思ったら、全部バレちゃうんで(笑)。
大喜利のハードルをかえって上げてしまったかもしれないな。
(笑)。でも、今はまだ、知識で圧倒してくるタイプの「知りすぎている」大喜利プレーヤーっていないと思うので、そういう人たちがもっと大喜利に出てくれたらどんどん強くなると思いますよ。
なんでそんなものの名前まで知ってるんだよ、みたいなことですよね。
そうそう! それは見てみたいですね。めちゃくちゃおもしろそうだなと思います。
山本もコンビ大喜利に挑戦
対談で聞いた“大喜利のコツ”を参考に、”山本×大鶴肥満でコンビ大喜利に挑戦。その答えを檜原が総評した。
本選 第8回『AUN~コンビ大喜利王決定戦~』開催概要
■概要:予選から勝ち上がった2組(各予選の優勝者)を含む16組の芸人が、トーナメント方式で「日本イチ大喜利が強いコンビ」の座をかけてコンビ大喜利に挑戦します
■日時:2024年10月26日(土)15:00開演
■会場:一ツ橋ホール(東京都千代田区一ツ橋2-6-2 日本教育会館3階)
■MC:バイク川崎バイク、奥森皐月
■出場者:Yes!アキト&サツマカワRPG、エバース、オダウエダ、警備員&ぺるとも(こんにちパンクール)、ケビンス、十九人、寺田寛明&お抹茶(トンツカタン)、ナイチンゲールダンス、永田敬介&鈴木ジェロニモ、春とヒコーキ、パンプキンポテトフライ、ひつじねいり、フランツ、ママタルト、マユリカ、ヨネダ2000 ※五十音順
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