平成の憧れブランド「エンジェルブルー」「デイジーラヴァーズ」服に染み込んだ女子たちの思い出

文=長井 短 編集=高橋千里


演劇モデル・長井 短。平成5年に生まれ、平成を生き抜いてきた彼女が、忘れられない平成カルチャーを語り尽くす連載「来世もウチら平成で」。

今回は、小学生時代に憧れたアパレルブランド「エンジェルブルー」「デイジーラヴァーズ」「メゾピアノ」「ポンポネット」「ブルークロスガールズ」を振り返る。

小学生だった私たちの「忘れられない一張羅」

気づけばすっかり寒い。慌ててクローゼットからコートを取り出すと、今年も冬が来るんだとわくわくした。

去年はコートを買わなかったから、今年は一着買いたいな、ちょっといいセーターも欲しい。なんてったって、私は30歳になったんだから!

※画像はイメージです

20歳のときに着てた服、10歳のときに着てた服、0歳のときに着てた服。節目の服はなんとなくだけど記憶に残っている。さすがに0歳は写真でしか知らないけれど。

子供のころの一張羅といえば、言わなくてもわかりますね? もちろん、ナルミヤ・インターナショナルです!

エンジェルブルー スパンコールTシャツ(※12月3日から一部直営店、12月10日から公式オンラインショップ「NARUMIYA ONLINE」にて販売)

というわけで今回は、平成女児がおそらく最初に抱いたファッションブランドへの憧れ。天下のナルミヤ・インターナショナルについてだゾ☆

圧倒的偏見による、各ブランド女子たちのイメージ

ナルミヤ・インターナショナル。それはアパレル会社の名前である。

この会社が平成に束ねていたスターブランドたちこそが「エンジェルブルー」「デイジーラヴァーズ」「メゾピアノ」「ポンポネット」「ブルークロスガールズ」だ。

まずは、それぞれのブランドを着用していたクラスメイトのイメージを発表しよう。ど偏見です。

エンジェルブルー

リットーミュージック『T-OD』 エンジェルブルー・ナカムラくんビッグシルエットスウェット(※復刻アイテムとして期間限定で販売。現在は売り切れ)

とにかく派手。行事を盛り上げることが得意で、“無”から祭りを立ち上げることができる。

一方、気が強く好戦的で、クラス内カーストのトップに君臨しがち。しかし、半年後には革命が起きがち。最終的にメゾピアノとつるみ始める。

デイジーラヴァーズ

リットーミュージック『T-OD』 デイジーラヴァーズ復刻Tシャツ(※復刻アイテムとして期間限定で販売。現在は売り切れ)

おしゃれ番長。男子にやたら絡むオマセ女子。兄や姉がいることが多い。

自分から仕切るタイプではないが、凄まじい眼力で場を牽制するのがうまい。革命を起こし、エンジェルブルーを倒すのはたいていデイジーラヴァーズ。

ポンポネット ジュニア

ポンポネット ジュニア パーカ(※12月3日から一部直営店、12月10日から公式オンラインショップ「NARUMIYA ONLINE」にて販売)

調整役。クラス内の抗争を止めたり、班になじめない子の受け皿になってくれがち。鍵っ子が多い。

声が大きいタイプではないが、空気を読むのに長けていて、リーダー格からの信頼は厚い。淡い水色がメインカラーなため、最も汚れが目立つ。

メゾ ピアノ ジュニア

メゾ ピアノ ジュニア パーカ(※12月3日から一部直営店、12月10日から公式オンラインショップ「NARUMIYA ONLINE」にて販売)

一見ぶりっ子だが、ふたを開けるとものすごい変わり者だったりする。エンジェルブルーやデイジーラヴァーズにからかわれがちだが、本人はケロッとしていることが多い。

日能研などの選ばれし塾に通っていて、中学からは私立に進む。信じられないくらい丸文字。

ブルークロスガールズ

ブルークロスガールズ 3WAYブルゾン、2WAYパーカーワンピ、ニットキャップ、ボディバッグ、スニーカー(※現在は販売終了)

声が大きく、悪ふざけの度が過ぎがち。限度ってものを知らないため、たびたびクラスメイトを泣かせてしまう。

デイジーラヴァーズとの相性が悪く、事あるごとに口論になる。小学校ではおもしろ楽しいキャラだが、中学に入るとクラスになじめず厨二病になることも。

いかがでしょうか? 学年中の女子が、一着はどこかしらの服を持っていたあのころ。不思議なくらい、選ぶブランドによって特性がはっきりしていたように思う。

ちなみに私は、ブルークロスガールズとベティーズブルー(※)のハーフで、エンジェルブルーとデイジーラヴァーズとの抗争経験があります。

※ベティーズブルー:株式会社キャンが当時展開していたファッションブランド

特にデイジーラヴァーズの子との戦いは凄まじく、私が沈黙を貫いてもディズニー・ヴィランズ(ディズニー作品の悪役たち)のメモ帳を使って手紙を書いてくるほどの手の込みっぷり。

なんか、悪いことしてるはずなのにそういうひと工夫もオシャレなんだよな……って、毒リンゴ持った魔女のイラストを遠い目をしながら眺めたことは、きっと生涯忘れない。

もちろん、浮いてしまった私に手を差し伸べてくれたのはポンポネット。マジで頭が上がりませんよ、ポンポネットギャルに。あそこの服を着ている子はなぜあんなに優しかったんだろう。

ナルミヤブランドを着ていたクラスメイトたちへ

ナルミヤの存在を知るまで、私は「ブランド」っていう概念を知らなかった。服はたいてい親が買ってきたものを着ていたし、それがどこで買われたものなのかも知らない。きっとほかの子たちも似たようなもんだっただろう。

そんな、平和でのんきな小学校生活に突如現れた「ナルミヤ・インターナショナル」。私たちは死に物狂いで親にねだった。

お願いですから、一着買ってください! 着てないと、イケてる小学生になれないんです! お願い!

※画像はイメージです

ブランドの選択に迷いはなかった。当然ブルークロスガールズっしょ☆

買ってもらったシャカシャカズボンを履いて、私は来る日も来る日も牛乳をおかわりし、授業中に手紙を回した。それが先生にバレてクラスメイト全員がバチクソ怒られるっていう非常に迷惑なイベントも発生させた。

エンジェルブルーの子と仕切り屋バトルを繰り広げ、デイジーラヴァーズとキーホルダーが被って大揉め。ポンポネットが仲裁してくれて、理科の実験でふざけすぎてメゾピアノを泣かせてしまった。

あぁ、懐かしい小学生時代……旧友の名前は思い出せなくても、どのナルミヤを着ていたかは、はっきり覚えているよ。みんな元気だろうか。大人になった今は、何を着てる?

※画像はイメージです

きっと、大人のブランドにもこういう「これ着てる子はこういうタイプ」みたいな特徴があるんだろう。MIU MIUは〜とか、GUCCIは〜とか。残念ながら、私にはわからないけど。

思い返してみると、ブランド物にハマったのはナルミヤが最初で最後だった。30歳の私はびっくりするくらいブランドに興味がなくて、なんなら小学生のときに買ってもらったベティーズブルーをたまに着る。

いつかまた、ブランドに興味が湧く日が来るかしら。もし来たならあのころみたいに、服に思い出が染み込みすぎて重くなっちゃうような日々になるといいなと思う。

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長井 短

(ながい・みじか)1993年生まれ、東京都出身。「演劇モデル」と称し、舞台、テレビ、映画と幅広く活躍する。読者と同じ目線で感情を丁寧に綴りながらもパンチが効いた文章も人気があり、さまざまな媒体に寄稿するなか、初の著書『内緒にしといて』を晶文社より出版。

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