オレンジスパイニクラブ・スズキユウスケ「完全なるルーツはThe ピーズにある」“私の歴史”に欠かせない曲
2020年リリースの1stミニアルバム『イラつくときはいつだって』に収録された「キンモクセイ」が音楽配信サービスでの総再生回数1.5億回を超えるなど、日常を感じさせる歌詞と哀愁漂うメロディで人気の4人組バンド「オレンジスパイニクラブ」。
そんな彼らが9月20日に、2ndフルアルバム『Crop』をリリースした。ここではボーカル・ギターを担当するスズキユウスケが、“私の歴史”に欠かせない曲を紹介する。
MISS BROADCAST/松任谷由実
当時の僕は4歳。
両親の部屋ではいつも何かしら音楽が流れていて、今でも強烈に覚えているのがユーミンだ。もちろんまだ幼い僕ら兄弟は音楽なんて知らないし、アニメの有名な曲しか聴かないし、歌ってこなかった。しかし、今になっても頭の中にずーっと残りつづける余韻があった。
少し前、あのとき聴いてた曲なんだっけ……でもアーティスト知らないし、もちろん曲のタイトルも知らない。どうしたのかなと思っていたら弟(スズキナオト。Gt/Cho)がこの曲を知っていた。
当時、幼いながらなんとなく部屋で流れるこの曲に恐怖を覚えた。言葉にしがたい音の壮大さが僕らの恐怖を煽っていた。言葉は悪いがトラウマになっていた。しかし、今聴き直せば当たり前だがまったく新しい、まったく違う聴き方に変わる。
この曲を僕に教えてくれた両親には感謝したい。
さよならゲーム/浜田省吾
こちらも幼少期の思い出の曲。今でも僕を奮い立たせてくれる曲だ。
浜田省吾さん、こちらも完全に両親の影響。熱狂的なハマショーファンの両親だが、常に車の中では、特に母親の車の中では浜田省吾が流れていた。ユーミンのときと少し似ているが、こちらの曲も頭の中に余韻があった。
両親ふたりはよく浜田省吾のコンサートに行っていた。と言っていた。
母親は「ハマショーがずっと私と目、合わせてたんだ〜。しかも目を合わせながらずっとニヤニヤ笑ってたの! 絶対私に惚れてたわ、あの感じは」と自慢気に話していたのを覚えている。
いや、サングラスしているしわからなくない?とユウスケ少年は思った。
そして、こちらの曲が収録されている『青空の扉 〜THE DOOR FOR THE BLUE SKY〜』というアルバム。ほかの収録曲がいいのはもちろんのこと、アルバムジャケットのインパクトが個人的にすごい。いつ見ても懐かしい気持ちになる。
バカになったのに/The ピーズ
写真は2015年ごろ。
骨の髄まで俺たちをバカにさせたバンド「The ピーズ」。どうしてくれようか、もともとまじめとは言えない僕らではあったが、さらに僕らをバカにさせた上、バンドに対する思いはまじめにさせてくれた唯一無二のバンド。
完全なるルーツはこのピーズにある。
初めて聴いたのがこの「バカになったのに」だったが、ほかの楽曲にもピーズにしか表現できないやるせない生活の一部や、本当にくだらないバカな男の一面、そして人それぞれの生き方に寄り添って励ましてくれるような楽曲まで存在する。
難しい言葉を使わないその言葉はわかりやすく、脳内に侵入し、僕の背中を押してくれた。
ボーカルのハルさんの弾き語りのライブを、当時お世話になっていた池袋Admというライブハウスに観に行く機会があった際、僕と弟ふたりでそのブッキングの方と話していたらハルさんが歩いて来た。
心臓の鼓動がツービートになるなか、そのブッキングの方が「コイツらドーテーズってバンドやってんですよ」と言ってくれた。そしたら、ハルさんは少し笑ったあと「そうなの〜? バンド名変えたほうがいいよ〜」と言ってくれた。
のちに「キンモクセイ」という曲が生まれ、そのタイミングと同時にハルさんの言葉を借りて改名を決めた。
Wonderful Girl/KiNGONS
2012年、バンドを初めてまだ1年も経たないころだった。本当にまだ青二才で若造の僕らは右も左もわからず自分たちの音楽を信じ、貫いていこうとしていたころ。
今現在も、とてもお世話になっておりよくしてもらっているライブハウス、club SONIC iwakiに『SET YOU FREE』というイベントがやってきた。そのイベントに僕らは呼んでいただいた。
そこで初共演したKiNGONSに僕らは衝撃を受けた。
4人組のパンクロックバンド。前身バンドのThe ドーテーズで目のまわりを黒くしていたのは、完全にこのバンドの影響。RAMONESからの影響を強く受けていると勝手に思っていたが、そのあとのライブの打ち上げでお話しした際そうでもなかったという余談。
話は逸れたが、KiNGONSの魅力はやはりパフォーマンスにある。
今でも僕らがライブで足を広げて飛ぶ動作の影響は彼らにある。そしてボーカルとギターは兄弟であり、僕らと重なったときはすごくうれしかった。
前記のピーズよりも先に知ったKiNGONSだが、完全に今でも憧れのバンドであり、こんなステージをしてみたいといつも思う。
またいつか共演したいと強く願っている。
Crop/オレンジスパイニクラブ
2ndフルアルバム『Crop』収録曲「Crop」について
メジャー2枚目となるフルアルバム『Crop』の表題曲は、そのタイトルをそのまま借りて「Crop」と名づけた。Cropには【収穫、切り取る、摘む、作物】などの意味があるが、中でも一番重要視したいのは【切り取る】にある。
僕らの楽曲の中で大事にしている【生活感】を軸とし、さまざまな生活をするさまざまな人の日常を切り取る意味も込めてアルバムタイトルにし、表題曲として収録されている「Crop」を掲げた。
「Crop」楽曲について
初めての兄弟での共同作曲。
今までとは視点を変えて、温かい気持ちで日常を見たとき、僕の知らないところで苦労している人や、さまざまな人が持つ感性や気持ちの揺らぎ的なものを歌にしたかった。
この曲の登場人物として自分の母親や、家族を持つ中で仕事をする人、そして普段は恥ずかしくて言えない気持ちなどをわかりやすく歌詞に反映させられればなと思い、歌詞を手がけた。
誰でも口ずさめるような楽曲になったと感じている反面、こらから先のオレンジスパイニクラブのバンドとしての活動の中で大切な曲になってくるだろうと実感している。
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