写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJWebカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
変わりゆく街
第69回。
ここは原宿、明治通り沿い交差点。
久しぶりに訪れた若者を中心とする渦の中でやけに見慣れない存在を感じ、右を見上げたら。
新しいビルが建設中だった。
対角線に建っているビルと顔が似ているからおそらく姉妹ビルなのだろう。
近年はやたらビルが建ち並ぶ姿を目撃しては驚き、複雑になりながらも慣れるというプロセスを経て、変わりゆく街に折り合いをつけながら現代を生きている。
というのも私は特段、個人店を愛するタチだからだ。
商売っ気の少ない職人が作るアクセサリー店や好きという気持ちを自己の内に留められず店を構えるようなコレクターやクリエイターたちのカルチャーショップ。
そんな“効率的”という言葉から遥かに乖離した人たちが格好よく存在している。
それが私の過ごした原宿の風景だった。
と、同時にずいぶん憧れていた。
そんなタチの人間から見ると自己の興味を愛し、個性がはっきりと顔に出ていた店からまわりと似たような顔に整えられていく街の変化に少し寂しさを感じているのが正直な気持ちだ。
今の世の中では効率化という文字を至るところで目にする。
電車やタクシーに揺られながら、ぼーっと広告画面から効率化を促すCMの連続は否が応でも頭に刷り込まれ、無知な私の腰を無理やりにでも持ち上げてくるような勢いを感じる。
もちろん人間の進歩であると感じているため日々変わりゆく未来への進化にワクワク感は持ち合わせているが、どこかひと部分が非常に退化している気がしてならない。
それはおそらく私の人生の中で好きだったひと部分だからなのだろう。
自己の興味に没頭し、街を朝から晩まで歩き回っては自分の宝を探し漁り、収穫を得られず帰宅するような非効率な日々。
“無駄足を踏む”という言葉の出来事にこそ笑えるエピソードを作ることができた私にとっては、今後無駄がなくなっていくことが怖いのだ。笑
無駄という言葉の中に興味や好奇心のすべてとそれから成るおもしろエピソードが詰まっていたのだ。
私はそんなちっぽけな非効率人間。
巨大化した効率的ビルよ、こんな私をどうか見下ろさないでくれ。
中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ、東啓介、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。
関連記事
-
-
天才コント師、最強ツッコミ…芸人たちが“究極の問い”に答える「理想の相方とは?」<『最強新コンビ決定戦 THE ゴールデンコンビ』特集>
Amazon Original『最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ』:PR -
「みんなで歌うとは?」大西亜玖璃と林鼓子が考える『ニジガク』のテーマと、『完結編 第1章』を観て感じたこと
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会『どこにいても君は君』:PR -
「まさか自分がその一員になるなんて」鬼頭明里と田中ちえ美が明かす『ラブライブ!シリーズ』への憧れと、ニジガク『完結編』への今の想い
虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会『どこにいても君は君』:PR -
歌い手・吉乃が“否定”したかった言葉、「主導権は私にある」と語る理由
吉乃「ODD NUMBER」「なに笑ろとんねん」:PR