どちらも食べたことない、それが何かもわからないものを分け合って一緒に味わうという場面です。未知のものを一緒に食べるのってエロティックじゃないですか？

秘密を分け合うというのは根本的なエロティックの感覚かなと思って。

せきしろさんと自由律俳句のイベントに出たことはあるんですけど、そのときも私が作ったのは短歌だったので自由律俳句として発表するのはこちらが初めてです。

そうですね……放っておくと575になっちゃうんですよ。

気持ちよく575で作ってしまうので、そうなりそうなところを振り切りながら、体の記憶から韻律を外した状態で詠むことに専念しました。

自由律は自由律で、それはそれでクラゲに生まれ変わる感じといいますか。

次はいきなりダイレクトな感じなんですけど。

ふたりが一体となって浮遊してるような感じというか、体をなくして一緒に空に浮かんでいる感じ。本当に好きなもの同士だとそういう感覚になるんじゃないでしょうか。

私も想像というかフィクションですけどね（笑）。

夜だと時間の観念だけど、夜の空だと空間になるのかもしれません。空間自体に溶けていくようなイメージです。

そういうふうな捉え方もできるんですけど、なんとなく私は星がキラキラしてる夜空をイメージしていました。いろんな星の、その中のひとつ。

与謝野晶子の夫が亡くなって【冬の夜の星君なりき一つをば云ふにはあらずことごとく皆】という歌を詠んでいるのですが、そういう趣です。

シチュエーションわかりますか？

意外と全体重をのせるっていうのは意識しないと起こり得ないことで。

「全体重のせたる」ってふざけて言われたことあって（笑）。

……という話を聞いたことがあって。それをもじりました。

私には実践できないので皆さんでやってみてください（笑）。

どんなに親しくなってもけっこう私は丁寧語で話しちゃうところがあって。

そうですね。年齢差もあるからあんまり距離を詰めるのもどうかと思って、ずっと加賀さんと呼んでしまいます。

均等に、ある程度の距離を取って眺めるのが好きかもしれないです。

ありがとうございます。ずっと“ですます調”でいつづけるカップルって逆にちょっと色っぽいですし。

そうですね。お風呂に一緒に入っていても、なかなか足の指って見ないと思うんですけど。

そうなんです。水の中にある足の指って人間の体とは切り離されたおもしろい生き物みたいに見えて、ずっと飽きずに眺めてしまう。

そうですね。ちょっと照れくささもあってそこだけを見てるっていうのもあるかもしれません。

ふたりの間柄は誰にも知られてない状態。私は窓際にいて、相手の人は遠くでほかの人と話したり動いたりしている。私はその気配だけを感じて、でもほかの人が知らないことを知ってるって真顔で静かに思ってる。

癖だったり体だったりいろんなことを。そんなことを思って、ふと笑みがこぼれてる場面です。

同じ同僚としてシレッとしているけど、この中で私だけ全部知ってるみたいな。

あれ、素敵でしたね。それに似た感じのシチュエーションです。

【鮮やかな】は男の人から女性を見てて、こっちは女性のほうが知ってるけどなって。

窓際は外にもうひとつ世界があって、こっち側は閉ざされてる。ちょうど知ってる知らないの瀬戸際の感じが窓際なのかなと思って。