写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJWebカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
ばらのように
第55回。
陽の光をいっぱいに浴びた満開のばら。
遠くまで匂ってきた幸福感あふれる光景を間近でぱしゃり。
けっして長くはつづかない時間。
儚くきれいな姿はこれからの記憶に残る美しさだった。
微笑むような黄桃色。
祝うように華やかな香り。
みずみずしく、生き生きと。
立派に、とても立派に咲いていた。
持って帰りたい気持ちにもなったが、この瞬間の記憶が変わってしまうのは残念な気がした。
この先、新しく咲かせる姿に出会いたいから。
諸行は無常のように。
人生をこのばらのように。
土を被って芽を出して水を被って陽を浴びて。
そうやって伸ばした先に、記憶に残る美しい瞬間を咲かせられるように。
中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ(BiSH)、長野凌大(原因は自分にある。)、東啓介、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。