スタッフの怒号、間違ったテロップ、一瞬映った謎映像…生放送のハプニングを逆手に取る見事な仕掛け(オールスター後夜祭)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『オールスター感謝祭』(4月8日放送)

「赤坂5丁目ミニマラソン」も復活し、リモート席もなくなり、コロナ前の状況に戻りつつある今回は、大泉洋を筆頭に、福山雅治、山田裕貴、賀来賢人などバラエティ対応力の高い俳優陣がそろっていたため、今田耕司もやりやすそう。島崎和歌子に「大泉さん、はしゃいでますけど、あと4時間半もちます?」と注意される大泉はもとより、卓球の水谷隼、福原愛への挑戦を前に「憧れるのをやめましょう」と大谷のセリフのパロディをしたり、被せる流れでは被せ、次のタイミングでは突然、森脇のコメントをコピーしたり、その都度、角度を変えつつ笑わせていた山田裕貴のコメント力が光った。彼らに加えて、今田が「フジモンが来てるかと思った」というえなりかずきの声の通るガヤが飛び交う。

さらにザコシショウが福山雅治の前で「誇張しすぎた福山雅治」を披露。福山の男性限定ライブの告知動画にザコシショウが登場したことはあるが、生で見たのは初めてだという。2ショットでメガネを動かす福山「あれ(ザコシのメガネ)、僕も買ったんですよ」。

そして優勝は麒麟・川島。座り位置が隅だったため番組序盤では卓球企画のための特設セットがじゃまで「何も見えない!」「『ラヴィット!』まだこんな扱いなのか!」と激しくツッコんでいたが、その逆境を跳ね返して優勝。『ラヴィット!』ポーズをしながら川島「はっきり言って私は、TBSに愛されています!」。

『オールスター後夜祭』(4月8日放送)

最初の問題は「次のうち正解はどれ?」と、選択肢すべてが空欄の問題。騒然となる芸人たちに「新聞のラテ欄見てないんですか?」と有吉。実は1問目から3問目の正解がしっかりとラテ欄に書かれていたのだ。このピリオドを制したのは「見てたんで!」という井口。生真面目さが出ていておもしろい。

今回の通し企画は「赤坂5丁目 ワイナイナマラソン」。エリック・ワイナイナひとりで特設コースを何周走ることができるかというもの。スタジオもコースに入っているため、クイズや企画の途中、絶妙なタイミングで入ってきて「エリック通ってまーす」などと場が和むのが意外なほど番組のアクセントとして効果的だった。

もうひとつの通し企画が「ロード64連イントロハーモニカ」。「ロード」のイントロをハーモニカで吹けた人数に応じて賞金が与えられる(最高9垓円!)という企画のため、CM中にハーモニカを練習するのだが、これが曲者。次の企画「赤坂5丁目 逃走中」のスタンバイをしなければならなかったり、CM中も芸人たちは大忙しに。

極めつきは、「今放送されなかったCMは?」などというCMに関するクイズ。当然、芸人たちはハーモニカの練習で観ていない。確かにいつもは「Qカット選手権」からCMに行くのに「まずはこちらをご覧ください」と言ったままクイズに行かずにCMに入ったから、ミスか何かと思っていたら、CM自体も映像クイズ問題の一部になっていたという見事な仕掛け。

さらに、生放送ならではのハプニングを逆手に取った問題が終盤にも。クイズを出題する際、「あ、少々お待ちください」と機材トラブルかと思うと、スタジオの奥から「おい、聞いてんのかよ!」などというスタッフの怒号。フワちゃんはひとり、その不穏な空気をなんとか和らげようとハーモニカを吹き始めるも、直後に出題されたクイズは「なかった怒号は?」というもの。「今時スタジオで怒鳴るようなスタッフいませんからね」と笑う有吉。フワちゃんのハーモニカで聞き取りづらく、彼女の気遣いが裏目に出るかたちに。

その後も、見切れたスタッフ、変なタイミングで鳴ったSE、間違って入ったテロップ、一瞬映った映像など生放送ならあるよねと思えるミスが実は決められていたもので、それがクイズになるという視聴者の意識を逆手に取ったやり口はさすがのひと言。

しかし、トラブルで遊んだ“呪い”か、視聴者の成績を集計するシステムが「完全にシステム破壊」する本当のトラブルが発生してしまうという皮肉な事態に。そんなことはありつつも、今回も良問・難問つづきで、出禁になってしまって存続が危ぶまれたザコシクイズも継続し、恒例のSAKURAIクイズ、旧満州問題も健在、さらに企画も「体重数珠つなぎチャレンジ」では有吉が「賞金はなしですけど、ただやりたいです」と言って、チャレンジ失敗後もつづけるほど大いに盛り上がる。充実の2時間だった。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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