最後まで貫かれた『タモリ倶楽部』のユルさと粋。加藤浩次、アルピー、ぺこぱ、それぞれの番組の閉じ方

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『タモリ倶楽部』(3月31日放送)

1939回目、最終回は「タモリ流○○レシピを訂正しよう」という料理企画。ゲストには「超大物」と紹介された爆笑問題・田中が登場。それを素直に受け入れて話し出す田中に劇団ひとり「その前に『超大物』って上げる感じに紹介したのをツッコんでもらっていいですか?(笑)」。

その超大物が「書記」を務め、「生姜焼き」「ピーマンの醤油煮」のレシピを訂正していくのだが、いつもは調味料を熟練者ならではの目分量の感覚でやっていたのを数値化すると意気込んだ結果、いつもと勝手が違うからかグダグダになっていくのが可笑しかった。いちいち正確性を求めるひとりにタモリ「こんなうるさいところで料理したくないよ!(笑)」。

結局、時間がかかり過ぎて本来は3品作る予定が2品で終了。「予定ではここでほろりとくるような挨拶が入るんですが、台なし!」と笑うタモリが「40年間、本当にありがとうございました」と頭を下げる。最後にオフショットが流れるなか、「DEAR SOPHISTICATED PEOPLE,THANK YOU FOR 40 GREAT YEARS.」という、番組のサブタイトル「FOR THE SOPHISTICATED PEOPLE」を踏まえたテロップ。

いつもどおりのユルさの中に洗練された大人の粋がある『タモリ倶楽部』らしい終わり方だった。もちろん、これでスッパリ終わるのがタモリらしいとは思うけど、しれっと半年後とかに何事もなかったかのように1940回目の放送が再開してほしいという思いはどうしても拭えない。「流浪の番組」だけに。

『スッキリ』(3月31日放送)

『スッキリ』最終回。OPでは東京スカパラダイスオーケストラが「紋白蝶」を生演奏。さらに中盤では番組に何度となく出演した宮本浩次が登場し、「悲しみの果て」を弾き語り。最後にはスカパラの「Paradise Has NO BORDER」から宮本浩次×スカパラで「俺たちの明日」と豪華リレー。これに加藤は「最高の締め括りできました」と感激。スタッフ、共演者らに感謝を述べたあと、最後の挨拶。

「僕、考えてみたら19歳のときに15万円だけ握り締めて東京に出てきたんですよ。今、53歳です。東京出てきて34年。『スッキリ』やらせてもらったのが17年。半分!」と振り返り、「僕なんか芸人時代は暴れん坊でアイドルをブン投げたりしているキャラクター。そんな人間をこの場に立たせていただいて、僕自身も1年で終わると思ってました。でも17年つづいたってことはみなさんのおかげ。17年間『スッキリ』やって、俺、むちゃくちゃ更生したなと思っています」と笑う。「最後に、17年間やった自分に言いたいと思います。17年間できるの、当たり前じゃねぇからな!」。


『アルピーテイル』(3月29日放送)

『アルピーテイル』最終回は、『キングオブコント』で披露したアルピーの伝説的コント『受精』をアニメ化。オチの「みなさん、今ご覧いただいたコントは~」と設定から降りて総括するセリフの場面で“実写”になり、そのまま番組終了の挨拶へとつながるシャレた構成。

平子「『クリエイトは死なない。クリエイトとは人間のことだ』これらをテーマにこちらの番組を放送してまいりましたが、そのテーマどおりクリエイトに終わりはありません。あなたが頭の中でクリエイトしつづける限り『アルピーテイル』は終わりません」
酒井「『アルピーテイル』、スクラップ&ビルド。破壊と再生。また帰ってくるよ」
平子「再生の約束の地で」

と、カッコよく決める。途中、カッコつけ過ぎて吹き出してしまうのアルピーらしい。そして最後は初回のOP、「ネオ川崎」の場面に戻るという美しい最終回だった。

『ぺこぱポジティブNEWS』(3月30日放送)

「時を進めよう…2050年のポジティブニュース!」と題して、「シュウペイが女性ロボットと結婚」するなど近未来の未来予想をニュースとして希望を込めて紹介。

最後の「ポジ想論」では、番組最終回にあたって「世の中にはまだまだネガティブなニュースがつづくと思います。でも安心して下さい。みなさんはネガティブをポジティブに変える能力をこの番組を通して身につけていると信じています」と松陰寺。「約束しましょう。2100年代、今日いる演者の血液も臓器も全部入れ替えて、バキバキに若返った姿で今日と同じメンツで、月で収録をやりましょう」。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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