ケンカする理由は“好きだから”
──おふたりと面識のある芸人さんや関係者から「トム・ブラウンさんはふたりとも本当にいい人」とよく聞きます。みちおさんから見て、布川さんはなぜ“いい人”と言われるんだと思いますか?
みちお 責任感が強いんですよね。一つひとつをちゃんとやろう、って人間なんです。ネタの入りの「こんにちは」ひとつ取っても、「はい、こんにちは」なのか「こんにちは、こんにちは~」って言うか……この話し合いって、2、3分で終わりそうじゃないですか。でも、「まず舞台に上がって、お客さんに会って、“はい”で一回見てもらってからのほうがいいんじゃないか」とか、そういうところを細かくこだわるんですよ。一個ずつ真剣に考えるから時間がかかるんですけど、人間関係でもそういうタイプの人なんです。10年ぐらい前にちょっとお世話になった人のことも覚えてたりします。人付き合いが丁寧なんですよね。
──みちおさんも、最近だと『新冒険ラスベガス』(日本テレビ)や『水曜日のダウンタウン』(TBS)に出演後、「みちおさん、いい人!」と話題になっていましたよね。
みちお いやいや、僕は事なかれ主義なだけなんで。平和が好きなだけなんです。
──ケンカが多いことでも有名ですが、なぜ「優しい、いい人」と言われるおふたりが揉めるのか不思議で。
みちお 好きの反対って嫌いじゃなくて、無関心じゃないですか。無関心じゃないからそうなっちゃうんだと思ってます。本当にムカつくってことは、そこに感情があるってことなんで。同じ高校出身だから偏差値も一緒で、2、3時間、解決策が出なくて平行線なんですよ。どっちも頑固だし。揉め出したら終わらないから、2016年あたりからは、ネタ作りするときは後輩芸人に来てもらってます。揉め始めても、「もうひとりいるからやめておこう」と思えて。
──ケンカは、主にネタのことで?
みちお ネタじゃないことも多いですね。僕が寝坊したのに謝らないとか(笑)。10分くらい遅刻したのに、天才のフリをして謝らずにカッコつけちゃうときがあるんですよ。ネタの話し合いは平行線ですけど、このケンカは僕が100悪いです(笑)。
僕たちは“手は出さない”っていう約束のもとでケンカしてるんですけど、僕がこのカッコつけるくだりを1時間くらい続けちゃったときは、痺れを切らした布川の手が勢い余って僕の頭に「ちょこん」と当たっちゃいました。そのあと僕が、カッコつけてた人間とは思えないほど泣きながら謝って……めちゃくちゃ気持ち悪いと思う、我々のケンカは(笑)。
──なんだか、みちおさんをここまでうまく扱えるのって布川さんしかいないですよね。
みちお かもしれないです。僕が暴れたりしても、布川はパワーで抑えられるタイプですし。
──兄弟のような(笑)。
みちお 時々自分でも思いますね。恥ずかしいですけどね、なんか(笑)。
──ちなみに、高校時代もケンカすることはあったんですか?
みちお 高校のときはないですね。ただただ尊敬する、大好きな先輩だったので。
布川は、マジメを装った変態
──布川さんは、ご結婚後、もしくはお子さんが生まれてからの変化はありましたか?
みちお 「『M-1』がダメだったら辞めよう」っていう話が明確に出始めたのは、布川に子供ができたくらいだったような気がします。僕も、ずっとなんにもなしにお笑いを続けるのは地獄だなって思ってたんで、その意見に賛同でした。
──『M-1』決勝出場後、お仕事的にも、金銭的にも一変されたかと思います。そのあたりの変化はいかがでしょう?
みちお 最近は、家族で動物園とかディズニーに行ったことをうれしそうにしゃべってるときがありますね。『M-1』前は金銭的に一切できなかったと思うんで、そういうのを聞くとよかったなって思います。
(お金を持って)嫌な方向に変化したことはないと思うなぁ。ビール1杯190円以上の居酒屋に行ったりするようにはなったと思うけど、基本的にそんなにお金使う人じゃないし、その感情がわりと残ってるんじゃないかな。今でも、タクシーよりも電車で移動するタイプの人だし。
──布川さんの、芸人としての一番の強みってなんだと思いますか?
みちお 底抜けにバカ。で、バカをおもしろがる才能もあると思うんですよね。あと、意外といい声のトーンでしゃべると思います。ネタ中のセリフでも、「布川の声のトーンじゃないとウケないだろうな」ってことがあるんですよ。大したボケじゃないときも笑いになったりするんで、そこはかなり強みだと思います。
『宝塚男役オーディション』ってコントがありまして。明転したら僕がふんどし一丁で立ってて、布川が「男過ぎだろ~!」って言うんですけど、それもたぶん、布川の声のトーンじゃなかったらウケないだろうなって。トーンもですし、声にすごくパワーがあるんですよね。
──確かに、布川さんの声って聞き取りやすいですよね。
みちお 本当ですか? うれしい。布川もうれしがると思います。
──逆に、直してほしいところはありますか?
みちお もっと自信持ってくれてもいいのになと思ったりします。ウケてたのに、収録後に「どうでした……?」って不安そうにマネージャーさんに聞くこともあって。いいところなんだけど、結果が悪くないときでも必要以上に気にしちゃうんで。今しゃべってて気づきましたけど、意外と完璧主義なのかもしれないですね。番組のアンケートとかも、ひとつずつ丁寧に考えるタイプなんですよね。
──今後、布川さんはどういう芸人になっていくと思いますか?
みちお 場に慣れて遠慮みたいなのがなくなったら、それこそ部活の部長みたいになっていけると思います。上手いか下手かじゃなくて、中心で「ついてこい!」って兄貴みたいになれるタイプの人だと思うんですよね。恥ずかしがって「無理無理」って言うと思いますけど、本当はできる人なんじゃないかなと。お笑い界を一個の柔道部だと思ってやればいいだけだと思ってるんですけどね。難しいかもしれないけど。
──とってもいいたとえですね! では、トム・ブラウンさんの今後はいかがでしょう?
みちお 僕ら、ネタ的に「ピンポイント狙ってるだろ」ってよく言われるんですけど、実は老若男女全員にウケたいと思ってやってるんです。地元の北海道で、番組とかいろんなこともやっていきたいですね。
──布川さんをひと言で表すとしたら?
みちお めちゃくちゃバカでヤバい人間なのに、それを無理やり抑え込んでる変な人。マジメを装った変態です。
──この機会に、布川さんにお聞きしたいことはありますか?
みちお 長髪の人って、髪を耳にかき上げるじゃないですか。最近の布川は、そのかき上げる動作をめんどくさがって、髪が前に行かないように体を傾けてるんですよ。それをうちの姉が「あの傾き、本当にキモいよ」と言ってて。前に本人に直接伝えたら「しょうがねえじゃんか!」って言ってたんですけど……あれ、本当にどうにかならないですか?と。
──(笑)。では最後に、布川さんにメッセージをお願いします。
みちお 小学1年生から3年生まで、娘を預かってもいいですよ。
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